センター数学 1993年 vs 2012年 驚愕の難易度差
2000年代に巨大掲示板2ちゃんねるでよく見かけた伝説のコピペがある。
オッサン・ババァの馬鹿さは異常
日本を底辺に貶めてるのはこの世代のオッサン・ババァども↓1993年 数学II(現在の数学IIBに相当)
[過去問の画像ファイルのリンク]
(↑大問1)
[過去問の画像ファイルのリンク]
(↑大問2)たったこれだけで60分w
これだけ易しくて平均点が65点w
しかも1994年はさらに易しいw
ゆとりどころの騒ぎじゃねーぞwww
こんなのすらまともに解けなかったカスが「ゆとりwww」とか言ってんだぜ
1990年から2020年まで続いたセンター試験だが、1990年代初期に比べて2000年代の数学の難易度は別次元に高くなっており、もはや別の試験と言っても過言ではない。
しかし、過去の栄光にしがみつき、「センター数学なんて9割余裕」などとイキり散らかして2000年代ゆとり教育全盛期の世代を煽る老害が多いため、それを逆に煽り返すためのコピペである。
どれだけの差があるのかを誰の目にも明らかな形で示すため、1993年の数学Ⅱと2012年の数学ⅡBを横に並べてみた。いずれも60分100点満点、括弧内は平均点である。
画像ファイルなのでクリックで拡大可能。それでも見づらい場合は一旦画像をダウンロードしてから閲覧するとよい。
恐ろしいほどの差であることが一目瞭然である。
問題量の凄まじい差にはもう笑うしかなく、上のようなコピペができるのも当然だ。
2012年の東大受験生ならば、1993年の試験は10分で100点満点が可能だろう。単純な問題量だけでなく難易度も大幅に上がっており、計算量や思考量を考慮すると、1993年と2012年の差は体感的には5倍以上の分量に感じられる。
2012年と比較したのは、この年のⅡBは極めて高得点が難しい厄介な年だからである(ただし平均点は例年並)。分量が尋常ではない上にセンター数学史上No.1とも評される超難問が紛れ込んでいるという鬼畜さである。
2012年ⅡBは東大合格者の平均が91(理一)、87(理二)、97(理三)であり(河合塾調べ)、このレベルの受験生が60分フルに使っても9割とることが容易ではなかったことがわかる。
これだけ分量が多いと丁寧にマークするという作業自体だけで約5分かかるため、計算や思考にかけられる時間は実質55分ほどしかない。点数配分を考慮すると、単純計算では大問1と大問2をそれぞれ18分、大問3と大問4をそれぞれ12分で解かなければならない。あまりに短い時間であり、完答するにはとてつもないスピードが要求される。
センター数学は、ⅠA・ⅡB形式になった1997年から難化し出し、ゆとり教育が問題になり出した2003年くらいからはさらにもう一段階難化し、例年平均がⅠA60点、ⅡB50点という非常に厳しい試験となったのである。
1993年当時はそれが普通だったのかもしれない。しかし、時間が経ってから見直してみると、同じ景色であっても当時とは全く違って見える、伝説とはそうして生まれるものだろう。
以上、2014年更新。
以下、2022年追記。
2022年、2014年に作成した当記事に大幅に追記することにした。
上の話が完全に過去のものになってしまったからである。
「時間制限的に2012年のくらいが限界かな」
そう思っていた時期が自分にもありました。
しかし、それから10年後。
「バ、バカな・・・あ、あっさりと超えやがった・・・最後の一線を・・・」
大学入学共通テスト数学の分量は、2012年のセンター数学の分量が可愛らしく思えるほどにまで増加していたのだ。
お楽しみの比較は一番最後にとっておくことにして、その前に簡単に日本の大学受験制度における共通試験の歴史を振り返る。
共通試験の40年間の変遷
大学入試の公平性を高めるための共通試験の構想は1960年代から既にあった。
長い議論や試行テストの末、1979年(昭和54年)ついに「大学共通第1次学力試験」が実現した。いわゆる「共通1次」である。
1979年の数学は現在のように2つに分かれておらず、「数学Ⅰ」の1つだけで200点満点(100分)であった。
共通1次は奇問・難問をなくして一定の学力基準を測ることを目的としていたにもかかわらず、そのような設問を完全に排除できず、さらには受験産業による大学の序列化を招いた。毎年のように制度が変わるなど大学受験制度は混乱し、私立大学が参加できないという問題点もあった。
1990年(平成2年)からは正式名称「大学入学者選抜大学入試センター試験」に変わって、センター試験の自己採点を元に国公立大に出願するという現在の大学受験制度がほぼ確立された。
センター数学は数学Ⅰと数学Ⅱの2つに分かれ、共通1次数学に比べて大幅に分量が増加した。そう、2012年と比較して少ないと思えた1993年のセンター数学は、これでも共通1次数学と比較すると大幅に増加していたのである。
書店にはセンター対策本がずらっと並び、学校や塾では徹底したセンター対策が行われるようになった。それに呼応するかのようにセンター数学は難化していく。
まず、1997年にⅠA・ⅡB形式となって一気に分量が増加する。その後分量自体はあまり増えなかったものの、問題パターンが尽きていくにつれて問題がどんどん高度で複雑になり、国立2次記述試験レベルの問題も散見されるようになる。マーク形式を逆手にとった裏技を紹介する書籍も登場し、逆にその裏技を封じる問題も登場する。
2010年代に入って、インターネット技術の発展とスマートフォンの普及により、センター数学対策がさらに進化した。
個人でも簡単に動的サイトが構築できるようになり、大容量の通信が可能になって閲覧もパソコンと同じような感覚で出来るようになった。2013年には、『受験の月』なるサイトも誕生してごく一部の受験生しか知ることができなかったであろうセンター数学の裏技を大々的に紹介し始めた。現在では多くのサイトやYoutubeでも紹介されており、裏技は知っていて当たり前である。裏技に限らず、高校数学の学習内容の大半は検索すると容易に詳しい解説にありつけるようになったし、それでもわからなければSNSで質問することも可能である。
一方で、「パターン暗記、テクニック、裏技といった対策が可能な試験はこれからのAI化時代の到来にふさわしいのか」とする論調が多くなる。
長らく安定政権を築いていたセンター試験であったが、2013年から慶應義塾大学がセンター利用入試を廃止するなど、時代の流れには逆らえずその存在意義が希薄になりつつあった。
当初は大学入学に値する最低限の学力の保有を確認するために導入されたはずの共通試験だが、いつしか制度設計者達の中ではそれだけですべてをまかなうことが目標になっていったようにも思われる。
お偉いさん達のおぞましいまでの改革意識はとどまるところを知らない。
「これからの時代は思考力が必要なのではないか」
「いや、思考にはそもそも読解力が必要だ」
「表やグラフの読み取り能力も必要だ」
「表現力もあった方がいい」
「ええ~い、どうせなら全部入れてしまえ!」
その切り札として編み出されたのが「記述式の導入」である。
結局、公平性の担保が難しいなどの理由から記述式の導入は見送られたものの、2020年に30年間続いたセンター試験の歴史はついに終焉し、2021年(令和3年)から「大学入学共通テスト」が実施されるようになった。
試験制度の大きな変更はすべて見送られたが、その試験内容はお偉いさん達の意向を汲むような形で大きく変貌していた。
それでも、2021年の第1回共通テストは初回の様子見のためか簡単で大きな話題にはならなかったが、翌年の2022年の第2回は数学を中心として大幅に難化し、伝説を残すことになった。
4世代の数学難易度比較
それでは最後に、2022年の共通テスト数学も含めて比較するとしよう。
上では数学ⅡB(数学Ⅱ)だけの比較だったが、今度はⅠAも含めた数学200点満点で以下の4世代の共通試験を横に並べた。
- 1979年 第1回共通1次試験 数学Ⅰ(100分/200点)
- 1993年 第4回センター試験 数学Ⅰ(60分/100点) 数学Ⅱ(60分/100点)
- 2012年 第23回センター試験 数学ⅠA(60分/100点) 数学ⅡB(60分/100点)
- 2022年 第2回共通テスト 数学ⅠA(70分/100点) 数学ⅡB(60分/100点)
これが40年間にわたる終わりなき難化の果てに完成した戦慄の集大成である。
絶望を味わうがよい。
あ、単に分量が増えただけではなく、問題自体の難易度も大幅に上がっているのであしからず。
2022年数学ⅠAの詳細については以下の記事へ。