
ヘスの法則(総熱量保存の法則)}}
反応エンタルピーの総和は反応前後の物質の種類と状態のみで決まり, \\[.2zh]
変化の経路にはよらない
下エネルギー図の熱量のうち,\ $x$\,(\ce{CO}の生成エンタルピー)は実験での測定が難しい. \\[.2zh]
\ce{C}\,(黒鉛)を燃焼させると,\ \ce{CO}と同時に\ce{CO2}\,も生じてしまうからである. \\[.2zh]
\scalebox{.97}[1]{一方,\ \ce{C}や\ce{CO}の燃焼エンタルピーは実験で測定でき, それぞれ$-\,394$\,kJ,\ $-\,283$\,kJ\ である.} \\[.2zh]
エネルギー図を書くと視覚的にわかりやすくなるが,\ そもそも書くのが面倒なことが多い. \\[.2zh]
普通,\ \textbf{\textcolor{red}{未知の反応エンタルピーは$\bm{\Delta H}$を付した化学反応式を数学のように連立して求める.}} \\\\
ヘスの法則は要は\bm{エネルギー保存則}だが,\ その確立よりも前に発見されたためにヘスの名を残す. \\[.2zh]
各物質のHは状態に応じて決まっており,\ 化学反応ではその差が\,\Delta Hとなるために成り立つ. \\[1zh]
\bm{既知の\,\Delta Hと未知の\,\Delta Hを付した化学反応式の双方を作成し,\ どのように連立すべきかを考える.} \\[.2zh]
既知の\,\Delta Hを付した化学反応式が上の\maru1,\ \maru2,\ 未知の\,\Delta Hを付した化学反応式が次の\maru3である. \\[.2zh]
\ce{C}\,(黒鉛)
さて,\ \maru1と\maru2から\maru3を導くことを考える. \\[.2zh]
まず\ce{CO2}\,を消去するとよさそうなので,\ とりあえず\maru1-\maru2を計算してみる(\Delta Hも\maru1-\maru2を計算). \\[.2zh]
反応エンタルピーと生成エンタルピーの関係(全物質の生成エンタルピー判明時に適用可)}} \\[1zh]
生成物の生成エンタルピーの総和
反応物の生成エンタルピーの総和
※ \textbf{単体の生成エンタルピーは0}とする. \\\\[1zh]
生成エンタルピーは,\ 常に単体の0が基準になる. \\[.2zh]
よって,\ 生成物と反応物の生成エンタルピーの差が反応エンタルピーとなる. \\[1zh]
次の化学反応式からエチレン\ce{C2H4}\,の燃焼エンタルピーを求め,\ 整数値で答えよ. \\[.8zh]
エチレン\ce{C2H4}\,の燃焼エンタルピーを$x$\,[kJ/mol]\,とする. \\[1zh]
まず,\ 求める燃焼エンタルピーをxとおき,\ 化学反応式を作成する. \\[.2zh]
\bm{\maru1\,~\,\maru3が生成エンタルピーであることを見抜ければ,\ 生成エンタルピーの公式を適用できる}(本解). \\[.2zh]
\bm{(反応エンタルピー)=(生成物の生成エンタルピーの総和)-(反応物の生成エンタルピーの総和)} \\[1zh]
公式を使える問題ばかりではないので,\ 普遍的な解法も示しておく(別解1). \\[.2zh]
\bm{\maru1\,~\,\maru3の中で1つの式にしかない物質に着目}し,\ \maru1\,~\,\maru3から\maru4を作ることを考える. \\[.5zh]
複数の式にまたがる物質\ce{C}\,(黒鉛),\,\ce{H2}\,(気),\,\ce{O2}\,(気)は自動的に調整・消去される}から無視してよい. \\[1zh]
別解2はエネルギー図を作って求めるものである.\ 本問では本解や別解1が簡潔なので推奨されない. \\[.2zh]
しかし,\ エネルギー図は視覚的にわかりやすく,\ 何よりもその作成自体が問われることも多い. \\[.2zh]
エネルギー図を書くのは結構難しいので,\ 本問のような簡単な問題で練習しておくべきである. \\[.2zh]
xを求めるとき,\ \bm{矢印の向きと正負に注意する}必要がある. \\[.2zh]
\bm{求めるxの矢印の向きと逆向きのエンタルピー変化は正負を逆にして計算}すればよい. \\[.5zh]
この他,\ \bm{一旦すべて正の値(絶対値)で計算した後,\ \Delta Hが正か負かを考えて答える}方法もある. \\[.2zh]
\bm{矢印が逆向きにならないように起点と終点をうまく選び,\ 時計回りと反時計回りで辿る}方法もある. \\[.2zh]
本問の場合,\ 上から2段目を起点,\ 最下段を終点と考えて反時計回りと時計回りで辿ればよい. \\[.2zh]
(反時計回り)=(時計回り)より
(2)\ \ メタン\ce{CH4}\,の生成エンタルピーを$x$\,[kJ/mol]\,とする. \\[1zh]
本解は,\ \bm{1つの式にしかない物質に着目}し,\ \maru1\,~\,\maru3から\maru4を作るものである. \\[1zh]
本問では燃焼エンタルピーが与えられているが,\ 実は生成エンタルピーの公式を利用できる(別解1). \\[.2zh]
まず,\ \bm{\maru2と\maru3は見方を変えると\ce{CO2}\,(気)と\ce{H2O}\,(液)の生成エンタルピー}である. \\[.4zh]
\bm{\ce{CH4}\,の完全燃焼\maru1に着目すると,\ 燃焼エンタルピーから\ce{CH4}\,の生成エンタルピーxが逆算できる.} \\[1zh]
エネルギー図を利用するとき,\ それを書く段階で1つ問題が生じる(別解2と別解3). \\[.2zh]
燃焼エンタルピーは常に負(\Delta H<0)であったが,\ 生成エンタルピーは正の場合も負の場合もある. \\[.2zh]
図から生成エンタルピーを求めたいのに,\ それが求まっていないと正確な図が書けないのである. \\[.2zh]
この場合,\ \bm{\Delta H=x<0\,(別解2)または\,\Delta H=x>0\,(別解3)と仮定してエネルギー図を書く.} \\[.2zh]
別解3では仮定\,\Delta H=x>0に対しx<0となったので,\ 結果的に正しい図は別解2の方である. \\[.2zh]
\bm{矢印の向きと正負にさえ注意すれば,\ 計算上は答えが一致する}ので,\ どう仮定しても問題は解ける. \\[.2zh]
ただし,\ \bm{物質がもつエンタルピーの大きさは,\ (単体)>(化合物)>(完全燃焼物)の場合が多い.} \\[.2zh]
よって,\ \bm{生成エンタルピーならば\,\Delta H<0と仮定する}のが普通である.
黒鉛\ce{C},\ 水素\ce{H2},\ アセチレン\ce{C2H2}\,(気)の燃焼エンタルピーは$-\,394$\,kJ,\ $-\,286$\,kJ, \\[.2zh]
\hspace{.5zw}$-\,1297$\,kJ,\ ベンゼン\ce{C6H6}\,(液)の生成エンタルピーは$50$\,kJである. \\[.2zh]
\hspace{.5zw}アセチレン\ce{C2H2}\,(気)\,3\,molからベンゼン\ce{C6H6}\,(液)\,1\,molが生成するときの反応エンタ \\[.2zh]
\hspace{.5zw}ルピーを整数値で答えよ. \\
\bm{1つの式にしかない物質に着目}し,\ \maru1\,~\,\maru4から\maru5を作ることを考える. \\[.2zh]
\ce{C2H2}\,は\maru3,\ \ce{C6H6}\,は\maru4にしかないので,\ \maru3\times3+\maru4を計算することになる. \\[.4zh]
すでに取り上げたような基本的な問題では,\ ここまでで目的の化学反応式が作成できる. \\[.2zh]
しかし,\ \bm{複雑な問題では,\ 単に組み合わせるだけでは目的の化学反応式が得られない}ことがある. \\[.2zh]
本問の場合も,\ 単に\maru3\times3+\maru4をしただけでは余計な物質が残ってしまう. \\[.2zh]
\maru3,\ \maru4のみで考えると,\ \ce{C2H2}\,と\ce{C6H6}\,以外の物質も1つの式にしかないからである. \\[.4zh]
\bm{残りの\maru1と\maru2を用いて余計な物質を消去しなければならない}ので,\ 一旦\maru3\times3+\maru4を計算してみる. \\[.2zh]
メタンハイドレート\ce{(CH4)4.(H2O)_{23}}\,は,\ 水分子とメタン分子からなる氷状の固体結晶 \\[.2zh]
\hspace{.5zw}であり,\ 将来のエネルギー資源として期待されている.\ メタン,\ 二酸化炭素(気),\ 水(液) \\[.2zh]
\hspace{.5zw}の生成エンタルピーをそれぞれ$-\,75$\,kJ/mol,\ $-\,394$\,kJ/mol,\ $-\,286$\,kJ/mol, メタンが \\[.2zh]
\hspace{.5zw}水に取り込まれてメタンハイドレート(固)が生成するときに発生する熱を$Q_0$\,[kJ]と \\[.2zh]
\hspace{.5zw}するとき,\ メタンハイドレート(固)の燃焼エンタルピーを$Q_0$を用いて表せ.