
半減期 t₁/₂ :反応物の濃度が初期濃度の半分に減少するまでの時間.
一次反応:反応速度が v = k[A] のように表せる反応.
半減期 t₁/₂ は初期濃度に無関係で, 反応速度定数 k だけで決まる.
二次反応:反応速度が v = k[A]² や v = k[A][B] のように表せる反応.
半減期 t₁/₂ は初期濃度や反応速度定数 k によって変化する.
時刻 t における濃度 [A] の式は, 定数分離型の微分方程式を解いて得られる(数III).
普通は問題で与えられるが, 上級者は数III学習後に導けるようにしておくことが望ましい.
e ≒ 2.71 は自然対数の底である(数III). A の初期濃度を [A]₀ とする.
一次反応
v = −d[A]/dt = k[A] において
∫₍[A]₀₎⁽[A]⁾ (1/[A]) d[A] = ∫₀ᵗ (−k) dt
logₑ[A] − logₑ[A]₀ = −kt
logₑ([A]/[A]₀) = −kt
[A]/[A]₀ = e^(−kt)
[A] = [A]₀·e^(−kt) …①
二次反応
v = −d[A]/dt = k[A]² において
∫₍[A]₀₎⁽[A]⁾ (1/[A]²) d[A] = ∫₀ᵗ (−k) dt
−1/[A] + 1/[A]₀ = −kt
1/[A] − 1/[A]₀ = kt …②
①は指数関数, ②は [A] = (1/k)/(t + 1/(k[A]₀)) より,
正体は分数関数 y = (定数)/(x + 定数) (数III) である.
一次反応 v = k[A] において半減期が初期濃度によらないということは,
[A]₀ → ½[A]₀, ½[A]₀ → ¼[A]₀, ¼[A]₀ → ⅛[A]₀ にかかる時間がすべて等しいということである.
反応速度が v = k[A] (k:反応速度定数) と表せる反応において,
反応開始時の初期濃度を [A]₀ とすると, 時刻 t の濃度は [A] = [A]₀·e^(−kt) と表される.
logₑ2 = 0.69 とする.
(1) k = 1.0×10⁻² [/分] の反応の半減期 t₁/₂ (分) を求めよ.
また, この反応に特有の性質として何が言えるか.
(2) [A] が [A]₀ の 1/8 になるまでの時間 (分) を求めよ.
(1) [A] = ½[A]₀ を代入すると ½[A]₀ = [A]₀·e^(−kt₁/₂)
よって e^(−kt₁/₂) = ½
両辺の自然対数をとると logₑ(e^(−kt₁/₂)) = logₑ(½)
よって −kt₁/₂ = −logₑ2
t₁/₂ = (logₑ2)/k = 0.69/(1.0×10⁻² /分) = 69 分
半減期は反応物の初期濃度 [A]₀ に無関係で, 反応速度定数 k だけで決まる.
(2) (½)³ = 1/8 より, 69 分 × 3 = 207 分
別解:
[A] = 1/8[A]₀ を代入すると 1/8[A]₀ = [A]₀·e^(−kt₁/₂)
よって e^(−kt₁/₂) = 1/8
両辺の自然対数をとると logₑ(e^(−kt₁/₂)) = logₑ(1/8)
よって −kt₁/₂ = −logₑ8
t₁/₂ = (logₑ8)/k = (3logₑ2)/k = (3×0.69)/(1.0×10⁻² /分) = 207 分
半減期を3回繰り返すと, [A] が [A]₀ の 1/8 となる.
濃度によらず, ½ になるまでの時間が一定であるため, 3回半減すれば 1/8 となる (t₁/₈ = 3t₁/₂).
濃度の減少が指数関数的に進むため, 一次反応の半減期は濃度に依存しない.
反応速度が v = k[A]² (k:反応速度定数) と表せる反応において,
反応開始時の初期濃度を [A]₀ とすると, 時刻 t と [A] の関係は
1/[A] − 1/[A]₀ = kt と表される.
この反応において初期濃度 [A]₀ = 0.20 mol/L のとき, 50分で20%が分解した.
(1) k の値を求めよ.
(2) [A] が [A]₀ の ½ になるまでの時間 t₁/₂ (分) を求めよ.
(3) [A] が [A]₀ の 1/8 になるまでの時間 t₁/₈ を t₁/₂ で表せ.
(1) 1/(0.20×80/100 mol/L) − 1/(0.20 mol/L) = k×50 分
より k = 0.025 L/(mol·分)
(2) [A] = ½[A]₀ を代入すると 2/[A]₀ − 1/[A]₀ = k·t₁/₂
t₁/₂ = 1/(k[A]₀) = 1/(0.025 L/(mol·分) × 0.20 mol/L) = 200 分
(3) [A] = 1/8[A]₀ を代入すると 8/[A]₀ − 1/[A]₀ = k·t₁/₈
t₁/₈ = 7×(1/(k[A]₀)) = 7t₁/₂
(1) 20%が分解したから, 50分後の濃度 [A] は初期濃度 [A]₀ の 80% となっている.
一次反応の場合とは反応速度定数の単位が違うことに注意する.
