逆滴定(アンモニアNH₃の定量、空気中の二酸化炭素CO₂の定量)

スポンサーリンク
back-titration
ある量のアンモニアを0.50mol/Lの硫酸100mLに完全に吸収させた後, 指示薬Aを用いて0.40mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ, 滴定量は200mLであった. (1) アンモニアを硫酸に吸収させたときの化学反応式を示せ. (2) 硫酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和の化学反応式を示せ. (3) 指示薬Aとして適切なのはメチルオレンジとフェノールフタレインのどちらか. 理由も示せ. (4) 吸収させたアンモニアの体積は標準状態で何Lか. 逆滴定(アンモニア NH₃ の定量) (1) 2NH₃ + H₂SO₄ → (NH₄)₂SO₄ (2) H₂SO₄ + 2NaOH → Na₂SO₄ + 2H₂O (3) メチルオレンジ 理由:強酸と弱塩基由来の正塩 (NH₄)₂SO₄ は加水分解して弱酸性を示すため, 中和点が酸性側に偏る. よって, 酸性側に変色域をもつ指示薬を用いる. (4) アンモニアの物質量をx[mol]とする. 2×0.50mol/L×100/1000L = x[mol] + 1×0.40mol/L×200/1000L より x=0.020mol ∴ アンモニアの体積は 22.4L/mol×0.020mol=0.448≒0.45L 通常, 中和滴定は反応しやすい液体同士で行われる. 気体や固体を滴定するときは, 逆滴定という方法が用いられる. (1) 物質量不明の塩基性気体 NH₃(①)を過剰の硫酸に完全に吸収(中和)させる(②). (2) NH₃ と中和せずに余った硫酸を NaOH 水溶液で滴定する(③). (3) 中和点では, (NH₄)₂SO₄ と Na₂SO₄ の混合溶液になっている. Na₂SO₄ は強酸と強塩基由来の正塩であるから加水分解はせず, その水溶液は中性である. メチルオレンジのpH変色域3.1~4.4 フェノールフタレインのpH変色域8.0~9.8 (4) 結局は中和なので, (酸のH⁺のmol) = (塩基のOH⁻のmol) という根幹に変わりはない. したがって, 余った硫酸の物質量(mol)から最初のNH₃の物質量を逆算できるわけである. 通常塩基は酸で滴定するが, 最終的に塩基で滴定することになるため逆滴定という. 実際の計算も (酸のH⁺のmol) = (塩基のOH⁻のmol) を立式するにすぎない. つまり, (H₂SO₄のH⁺のmol) = (NH₃のOH⁻のmol) + (NaOHのOH⁻のmol) である. H₂SO₄ と NaOH が出す H⁺ と OH⁻ の物質量は, 単純に (価数)×(モル濃度 mol/L)×(体積 L) で求まる. 硫酸が2価の酸であることに注意して NH₃ の物質量を求め, 体積に換算すればよい. 標準状態で10Lの空気を採取し, 0.050mol/Lの水酸化バリウム水溶液200mLに通じて, 採取した空気中の二酸化炭素を完全に吸収させた. 十分時間が経過した後, 上澄み液20mLをとり, 0.10mol/Lの塩酸で滴定したところ, 滴定量は19.6mLであった. (1) 二酸化炭素を水酸化バリウム水溶液に吸収させたときの化学反応式を示せ. (2) 塩酸と水酸化バリウム水溶液の中和の化学反応式を示せ. (3) 最初の空気中の二酸化炭素の体積パーセントを求めよ. 逆滴定(空気中の二酸化炭素 CO₂ の定量) (1) CO₂ + Ba(OH)₂ → BaCO₃ + H₂O (2) 2HCl + Ba(OH)₂ → BaCl₂ + 2H₂O (3) 上澄み液20mL中の二酸化炭素の物質量をx[mol]とする. 2×x + 1×0.10×19.6/1000 = 2×0.050×20/1000 より x=0.000020mol 溶液200mL中に含まれている二酸化炭素の標準状態における体積は 22.4L/mol×0.000020mol×10=0.00448L ∴ 0.00448L/10L×100=0.0448≒0.045% (1) 物質量不明の酸性気体 CO₂(①)を過剰のBa(OH)₂水に完全に吸収させる(②). 二酸化炭素は水と反応して炭酸になる. CO₂ + H₂O → H₂CO₃ その後, H₂CO₃ + Ba(OH)₂ → BaCO₃ + 2H₂O と中和すると考え, 両辺から H₂O を除く. (2) CO₂ と中和せずに余った水酸化バリウム水溶液を塩酸で滴定する(③). (3) 炭酸バリウム BaCO₃ は白色沈殿となるから, 上澄み液を取り出して滴定するのが普通である. (CO₂ の H⁺ のmol) + (HCl の H⁺ のmol) = (Ba(OH)₂ の OH⁻ のmol) CO₂(炭酸H₂CO₃)は2価の酸なので, CO₂ 1mol はH⁺を2mol放出することに注意する. 200mL中のCO₂の体積を求めるから, 上澄み液20mL中のCO₂の物質量を10倍する.

タイトルとURLをコピーしました