(2)は通称「閻魔の唇問題」と呼ばれており、1950年代に東大が出題してから有名になったとか。
実数x,\ yが-1≦ x≦1,\ -\,1≦ y≦1\ を満たしながら動くとする.$
$\ \ このとき,\ 点(x+y,\ x-y)\ の動く領域を図示せよ.$
$(2)\ \ 実数x,\ yが\ x^2+y^2≦1\ を満たしながら動くとする.$
$\ \ このとき,\ 点(x+y,\ xy)\ の動く領域を図示せよ.$ \\
{変換ある集合からその集合自身への写像を変換という.
本問は,\ 座標平面から座標平面への写像であるから,\ 変換の問題である. \\
逆像法による考え方と解答を示す.
変換前と変換後を同一の平面上で考えようとすると混乱する.
$(x+y,\ x-y)=(X,\ Y)}$とし, $xy$平面上の点から$XY$平面上の点への変換と考える.
$-\,1≦ x≦1,\ -\,1≦ y≦1を満たす点(x,\ y)}$に対応して,\ $点(X,\ Y)}が1つ定まる.$
逆に,\ 求める領域内の点$(X,\ Y)}には,\ 対応する逆像(x,\ y)}が存在するはず}である.$
ここでの逆像$(x,\ y)$とは,\ $-\,1≦ x≦1,\ -\,1≦ y≦1$を満たす実数$(x,\ y)$のことである.
この逆像$(x,\ y)$が存在するか否かで$XY$座標平面上の点$(X,\ Y)$を分類していく.
すると,\ 条件を満たす点$(X,\ Y)$の集合,\ つまり点$(x+y,\ xy)$の動く領域が浮かび上がる.
例えば,\ $XY$座標平面上の$点(0,\ 2)}は,\ 求める領域内にあるだろうか.$
$X=x+y=0,\ Y=x-y=2を解くと,\ (x,\ y)=(1,\ -\,1)}である.$
これは,\ $-\,1≦ x≦1,\ -\,1≦ y≦1を満たす.}$
逆像}$(1,\ -\,1)が存在するから,\ 点(0,\ 2)は点(x+y,\ x-y)の動く領域内にある.}$ \\
では,\ $XY$座標平面上の$点(4,\ 0)}は,\ 求める領域内にあるだろうか.$
$X=x+y=4,\ Y=x-y=0を解くと,\ (x,\ y)=(2,\ 2)}である.$
これは,\ $-\,1≦ x≦1,\ -\,1≦ y≦1を満たさない.}$
逆像}$が存在しないから,\ 点(4,\ 0)は点(x+y,\ x-y)の動く領域にはない.}$を満たす実数$(x,\ y)$が存在するような$(X,\ Y)$の集合}を求めればよい.
$(X,\ Y)}$の集合が,\ 他の文字$(x,\ y)}$の実数存在性を追求して求まるという構造が重要である.}
を満たす実数$(x,\ y)$が存在する点$(X,\ Y)$の集合}である.
まず,\ x,\ yをX,\ Yで表す.}\ \ X,\ Yを定数とみてx,\ yの連立方程式を解けばよい.
それを(x,\ y)の条件に代入すると,\ (X,\ Y)が満たすべき条件がわかる.}
結局,\ 変換(x+y,\ x-y)により,\ 左図の領域内の点が,\ 右図の領域内の点に移る}ことがわかる.
変換前後の対応が視覚的にわかるように点をうっておいた.
を満たす実数$(x,\ y)$が存在する点$(X,\ Y)$の集合}である.
求める領域は,\ 右下図の斜線部分.\ 境界線を含む.}
基本対称式の変換(x+y,\ xy)はパターン認識を要する.}
最も注意すべきは,\ x^2+y^2≦1をY≧12X^2-12としただけで終えてはならないことである.
(1)の変換は,\ (X,\ Y)に対応する実数(x,\ y)が常に存在していた.
実際,\ x=X+Y}{2},\ \ y=X-Y}{2}\,より,\ どんなX,\ Yに対しても必ず実数(x,\ y)が求まる.
一方,\ (2)の変換ではX=x+y,\ Y=xyに対応する実数(x,\ y)が常に存在するとは限らない.}
よって,\ 対応する実数(x,\ y)が存在するような(X,\ Y)の条件を求める必要が生じる.
基本対称式をなす2数の実数存在条件は,\ 2次方程式を作成して判別式で求める}のであった.
x,\ yを解にもつ2次方程式の1つは(t-x)(t-y)=0,\ つまりt^2-(x+y)t+xy=0}である.
例えば,\ (x+y,\ xy)=(2,\ -\,3)とすると,\ x,\ yはt^2-2t-3=0の2解である.
t=-\,1,\ 3より,\ (x,\ y)=(-\,1,\ 3),\ (3,\ -\,1)が存在する.
次に,\ (x+y,\ xy)=(1,\ 1)とすると,\ x,\ yはt^2-t+1=0の2解である.
D=(-\,1)^2-4・1・1=-\,3<0より,\ この方程式には実数解が存在しない.
つまり,\ (x+y,\ xy)=(1,\ 1)となるような実数x,\ yは存在しない.
実数x,\ yが存在するための条件として,\ t^2-Xt+Y=0のD≧0が必要になる}わけである.
本問に限らず,\ 実数x,\ yに対してx+y=s,\ xy=tと置換する際には常に条件s^2-4t≧0がつく.
基本対称式の変換(置換)をパターン認識しておかなければ,\ この隠れた条件を見落としてしまう.
結局,\ 変換(x+y,\ xy)により,\ 左図の領域内の点が,\ 右図の領域内の点に移る}ことがわかる.
変換前後の点の対応を線で示したが,\ (1)とは異なり単純ではない.
また,\ すべての点が1対1で対応するわけではないことにも注意が必要である.
例えば,\ 点(x,\ y)=(1,\ 0),\ (0,\ 1)は,\ いずれも点(x+y,\ xy)=(1,\ 0)に移る.
(1)では最悪点をとりまくれば答えだけは予想できたが,\ (2)では無理だろう.