ある工場で作られた100万個の製品の強度を知りたいとしよう. \\[.2zh] このとき,\ 100万個の製品すべての破壊実験を行うわけにはいかない. \\[.2zh] そこで,\ 一部(例えば100個)の破壊実験を行い,\ その製品の強度を推測することを目指す. \\[.2zh] \textbf{一部から全体を推測することこそが「確率分布と統計的な推測」分野の最終目標}である. \\[.2zh] しばらくの間,\ 後に一部から全体を推測するための最終準備を行う. \\[.2zh] 紛らわしい用語が多いので,\ 具体的な問題で十分に確認・理解してほしい. \\\\\\ \textbf{\textcolor{blue}{全数調査と標本調査}} \\[1zh] \textbf{\textcolor{blue}{全数調査}} 対象全体を\textbf{もれなく}調べる. \\[.2zh] \textbf{\textcolor{blue}{標本調査}} 対象全体から\textbf{一部を抜き出して}調べる. \\\\\\ \textbf{\textcolor{blue}{母集団と標本}} \\[1zh] 標本調査で,\ \textbf{調査の対象全体}を\textbf{\textcolor{blue}{母集団}},\ \textbf{母集団から抜き出された要素の全体}を\textbf{\textcolor{blue}{標本}}という. \\[.2zh] 母集団,\ 標本に含まれる\textbf{要素の個数}をそれぞれ\textbf{\textcolor{blue}{母集団の大きさ}},\ \textbf{\textcolor{blue}{標本の大きさ}}という. \\\\\\ \textbf{標本を抜き出すこと}を\textbf{\textcolor{blue}{抽出}}という. \\[.2zh] 標本調査では,\ \textbf{確率的な偏りがないように抽出}しなければならない. \\[.2zh] そのためには,\ 乱数表やコンピュータで生成した乱数を利用する. \\[.2zh] このような抽出法を\textbf{\textcolor{blue}{無作為抽出}}といい,\ 無作為抽出で抽出された標本を\textbf{\textcolor{blue}{無作為標本}}という. \\\\\\ \textbf{\textcolor{blue}{復元抽出}} 一度抽出したものを\textbf{元に戻してから}次のものを抽出する方法 \\[.2zh] \textbf{\textcolor{blue}{非復元抽出}} 一度抽出したものは\textbf{元に戻さずに}続けて抽出する方法 \\[1zh] \textbf{母集団から抽出された大きさ$\bm{n}$の標本の各回の要素を\.{順}\.{に}$\bm{X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n}$で表す.} \\[.2zh] ここで,\ $\bm{X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n}$は\textbf{確率変数}(試行の結果で値が定まる変数)である. \\[.2zh] \textbf{\textcolor{purple}{復元抽出の場合,\ $\bm{X_1,\ X_2,\ \cdots,\ X_n}$は独立}}である.\ 非復元抽出の場合,\ 独立ではない. \\[.2zh] ただし,\ \textbf{\textcolor{magenta}{母集団が十分大きいとき,\ 非復元抽出でも独立とみなせる}}ことが知られている. \\\\\\ \textbf{\textcolor{blue}{母集団分布}} \\[1zh] \textbf{母集団における変量の相対度数分布}を\textbf{\textcolor{blue}{母集団分布}}という. \\[.2zh] \textbf{母集団の平均値,\ 分散,\ 標準偏差}をそれぞれ\textbf{\textcolor{blue}{母平均}},\ \textbf{\textcolor{blue}{母分散}},\ \textbf{\textcolor{blue}{母標準偏差}}という. \\[.2zh] これらは,\ \textbf{\textcolor{red}{大きさ1の標本の確率変数$\bm{X_1}$の確率分布,\ 期待値,\ 分散,\ 標準偏差と一致する.}} 10,\ 20,\ 30の数字が書かれた玉がそれぞれ1,\ 2,\ 3個ずつある.\ これを母集団とするとき, \\[.2zh] \hspace{.5zw}母集団分布を示し,\ 母平均$m$,\ 母標準偏差$\sigma$を求めよ.\\ 母集団から1個の玉を無作為抽出するとき,\ \\[.2zh] 玉に書かれた数字$X_1$の確率分布,\ つまり母集団分布は \\[-3zh] 母集団分布,\ 母平均,\ 母標準偏差は,\ 大きさ1の標本の確率分布,\ 期待値,\ 標準偏差と一致するから, \\[.2zh] 1個の玉を無作為抽出するときの玉の数字X_1\,の確率分布,\ 期待値E(X_1),\ 標準偏差\,\sigma(X_1)を求めた. \\[1zh] 右表(母集団の相対度数分布)は,\ X_1\,の確率分布と一致する. \\[.2zh] また,\ 母平均mを右の度数分布を元に求めると以下となる. \\[.2zh] m=\bunsuu{10\cdot1+20\cdot2+30\cdot3}{6}=\bunsuu{70}{3} \\[.8zh] このmとE(X_1)が一致することを数式的に確認してほしい. \\[.2zh] 同様に,\ 2乗平均\,\bunsuu{10^2\cdot1+20^2\cdot2+30^2\cdot3}{6}=600もE({X_1}^2)と一致. \\[.8zh] それゆえ,\ 母標準偏差\,\sigma\,とX_1\,の標準偏差も一致する. \\[1zh] 本問はどちらでも求まるが,\ 今後は解答の考え方が重要になる.
母集団と標本の抽出
