「不等式\ f(x) g(x)\ の証明は{F(x)=f(x)-g(x)0\ を示す}」は数II}で学習済みである. つまり,\ {y=F(x)のグラフがy=0(x軸)よりも上側にある}ことを示せばよいわけである. ただし,\ グラフを描く必要はなく,\ 増減表を作成しておけば十分である. 数III}では単純に(差)0だけでは済まない問題が出る.\ 本問はその中で最も基本的なものである. f'(x)を計算してみるが,\ f'(x)=0を求めることができないために増減表を作成できない. f'(0)=0に気付く人もいるだろうが,\ x=0以外の解についても考慮しないと意味がない. このように{f'(x)だけで増減表を作成できない場合,\ f”(x)を求める}ことになる. f”(x)からf'(x)を考察し,\ さらにf'(x)からf(x)を考察するという二段構えである. まず,\ 常にf”(x)0であることがわかる.\ これは,\ f'(x)が単調増加関数であることを意味する. ここで注意すべきは,\ {f'(x)の増減ではなく,\ 正負の考慮が必要}であることである. {f”(x)の正負からわかるのはf'(x)の増減だけ}である. 逆に,\ {f(x)の増減を知るにはf'(x)の正負が必要}であり,\ f'(x)の増減だけでは不十分である. f'(x)が単調増加することは既知なので,\ さらに区間の端における値f'(0)を確認する. {f'(0)=0と単調増加を両方考慮することで,\ x0で常にf'(x)0(常に正)がわかる}. すなわち,\ f(x)は単調増加する.\ ここで,\ 示すのはf(x)0である. つまり,\ {f(x)の正負が必要}であり,\ f(x)の増減だけでは不十分である. 区間の端における値f(0)=0も考慮してx0で常にf(x)0が示されるわけである. 本問では単調増加とf'(0)=0,\ f(0)=0が記述してあれば増減表を必ずしも書く必要はない. 左側の不等式は1階微分,\ 右側の不等式は2階微分するとすでに証明済みの不等式に帰着する. h'(x)0は\ cos x1-{\ x²}{2}+{\ x⁴}{24}\ なので,\ より {1-{\ x²}{2}cos x1-{\ x²}{2}+{\ x⁴}{24 これらはマクローリン展開式を背景としており,\ 同様にしてより高次の不等式も作成できる. また,\ (sin x)’=cos x,\ (cos x)’=-sin x\ である. それゆえ,\ 微分するたびにsin xの不等式とcos xの不等式が交互に現れるわけである. この他,\ 証明問題でよく見かける以下の不等式もマクローリン展開式を背景としている. $x>0\ のとき,\ e^x-1>xe^{ x2}\ が成り立つことを示せ.$ $ゆえに,\ f(x)はx>0で単調に増加}する.$ f'(x)は因数分解できるが,\ f'(x)=0を解くことができないのでもう1度微分する必要がある. しかし,\ 微分するたびに関数がどんどん複雑化してしまうことが少なくない. 試しにf'(x)を普通に微分してみる. 計算が大変なだけならまだしも,\ 式がほとんど変化しておらずこれでは微分する意味がない. さて,\ 目標はf'(x)の正負からf(x)の増減を知ることである. つまり,\ f'(x)の値自体に興味はなく,\ {f'(x)の正負さえわかればよい}のである. そこで,\ {正負が不明な部分だけを取り出して微分}する. f'(x)において常にe^{ x2}>0であるから,\ この部分はf'(x)の正負の変化に影響しない. 正負の変化が不明な\ e^{ x2}-1-12x\ を新たにg(x)とおいて微分する. x>0でe^{ x2}>1より,\ 常にg'(x)>0である.\ g(0)=0と合わせてx>0で常にg(x)>0がいえる. よって,\ x>0で常にf'(x)>0となり,\ f(0)=0と合わせてx>0で常にf(x)>0がいえる.