酸素(16族)とその化合物(オゾン、酸化物、オキソ酸)

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酸化物と水の反応、酸化物の中和反応の詳細については以下ページへ。

oxygen
酸素(16族)とその化合物 酸素 O₂ 実験的製法 ① 過酸化水素に酸化マンガン(IV)(触媒)を加える.  2H₂O₂ →[MnO₂] 2H₂O + O₂↑ (自己酸化還元反応) ② 塩素酸カリウムに酸化マンガン(IV)(触媒)を加えて加熱する.  2KClO₃ →[MnO₂][加熱] 2KCl + 3O₂↑ (自己酸化還元反応) ③ 水を電気分解する. 2H₂O → 2H₂ + O₂ 工業的製法 ① 液体空気を分留する. ② 水を電気分解する. 性質 ① 空気中に体積で約21%含まれる. ② 助燃性(燃焼を促進する性質)あり. ③ 地殻中の元素の存在比(質量%)が大きい順:  O > Si > Al > Fe > Ca > Na [補足] 製法①:H₂O₂の2個のO(酸化数-1)のうち, 一方から他方へ電子が1個移動することで, O(酸化数-2)のH₂OとO(酸化数0)のO₂が生じる. 製法②:KClO₃の3個のO(酸化数-2)からCl(酸化数+5)へ電子が6個移動することで, Cl(酸化数-1)のKClとO(酸化数0)の3O₂が生じる. 過酸化水素H₂O₂の構造式はH–O–O–Hであり, 分子中に -O–O- 結合をもつ過酸化物は不安定なので, 分解して酸素を出しやすい. 約3%の過酸化水素水(オキシドール)は酸化作用をもち, 家庭用の漂白剤や殺菌剤に用いられる. オゾン O₃ 製法 酸素に紫外線を照射するか, 空気や酸素中で無声放電を行うことで得られる.  3O₂ ⇄ 2O₃ 性質 ① 淡青色, 特異臭, 折れ線型の分子. ② 強い酸化作用(フッ素に次ぐ強さ)があり, 漂白・殺菌に利用される.  O₃ + 2H⁺ + 2e⁻ → O₂ + H₂O ③ 湿ったヨウ化カリウムデンプン紙を青色にする.  2KI + O₃ + H₂O → O₂ + I₂ + 2KOH 補足 オゾンは不安定で, O₃(0) → O₂(0) + O²⁻(-2)に分解しやすい. このとき他から電子を奪うため, 強い酸化作用を示す. O₃ → O₂ + O²⁻ の両辺に2H⁺を加えると半反応式 O₃ + 2H⁺ + 2e⁻ → O₂ + H₂O となる. この酸化力によってI⁻ → I₂ + 2e⁻が起こり, 生じたI₂がヨウ素デンプン反応して青色になる. (酸化剤) O₃ + 2H⁺ + 2e⁻ → O₂ + H₂O (還元剤) 2I⁻ → I₂ + 2e⁻ 2式を足すと, O₃ + 2H⁺ + 2I⁻ → O₂ + H₂O + I₂ 両辺に2K⁺と2OH⁻を加えると, O₃ + 2H₂O + 2KI → O₂ + H₂O + I₂ + 2KOH 1980~2010年頃までは, オゾン層の減少が深刻な環境問題の1つであったが, 近年の対策で回復傾向にある. 成層圏のオゾン層は, 太陽からの紫外線を吸収して地球上の生物を守っている. O₃ →[紫外線] O₂ + O 生成したOは周囲のO₂と反応してO₃を再生する. O + O₂ → O₃ この分解と再生サイクルによりオゾン濃度は一定に保たれている. しかし, 1980年代に北極・南極上空でオゾンホールが発見され, 冷媒などに使われたフロン(CCl₂F₂など)がオゾンを破壊することが判明した. CCl₂F₂ →[紫外線] CClF₂ + Cl Cl + O₃ → ClO + O₂ ClO + O → Cl + O₂ この連鎖により1個のCl原子が数万個のO₃を破壊する. 以後フロンは段階的に禁止された. 地表付近では, NOxや炭化水素の光化学反応によりO₃が生成し, 光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントの主成分となる. 酸化物の分類 非金属の酸化物 → 酸性酸化物(水に溶けて酸性)例:NO₂, CO₂, SO₃ 金属の酸化物 → 塩基性酸化物(水に溶けて塩基性)例:Na₂O, CaO, BaO 両性金属の酸化物 → 両性酸化物 例:Al₂O₃, ZnO, SnO, PbO ※ 非金属の酸化物でもCO, NOは中性で水に不溶。 酸化物と水の反応 塩基性酸化物 + H₂O → 水酸化物 例:CaO + H₂O → Ca(OH)₂ 酸性酸化物 + H₂O → オキソ酸 例:SO₃ + H₂O → H₂SO₄ 酸化物の中和反応 塩基性酸化物 + 酸 → 塩 + 水 例:ZnO + 2HCl → ZnCl₂ + H₂O 酸性酸化物 + 塩基 → 塩 + 水 例:CO₂ + 2NaOH → Na₂CO₃ + H₂O 酸性酸化物 + 塩基性酸化物 → 塩 例:CO₂ + CaO → CaCO₃(水は生じない) 両性酸化物 + 酸 → 塩 + 水 例:Al₂O₃ + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂O 両性酸化物 + 塩基 + 水 → 塩 例:Al₂O₃ + 2NaOH + 3H₂O → 2Na[Al(OH)₄] 第3周期の最高酸化数をとる酸化物の性質 族 元素 酸化物 性質 1 Na Na₂O 塩基性酸化物(強塩基性) 2 Mg MgO 塩基性酸化物(弱塩基性) 13 Al Al₂O₃ 両性酸化物 14 Si SiO₂ 酸性酸化物 15 P P₄O₁₀ 酸性酸化物 16 S SO₃ 酸性酸化物 17 Cl Cl₂O₇ 酸性酸化物 左に行くほど塩基性が強く, 右に行くほど酸性が強くなる. これは中心元素の電気陰性度の増加に起因する. オキソ酸(酸素を含む酸) 同一周期では右側の元素ほど強酸性. H₂SiO₃ < H₃PO₄ < H₂SO₄ < HClO₄ 同一元素では酸素原子が多いほど強酸性. HClO < HClO₂ < HClO₃ < HClO₄ 酸化数と酸性・酸化力の関係(Clの場合) 名称 化学式 Cl酸化数 酸化力 酸性 過塩素酸 HClO₄ +7 強 強 塩素酸 HClO₃ +5 中 中 亜塩素酸 HClO₂ +3 弱 弱 次亜塩素酸 HClO +1 弱 弱 代表的なオキソ酸の構造(矢印は配位結合) 炭酸 H₂CO₃:O=C(OH)₂ 硝酸 HNO₃:O=N(→O)(OH) 亜硫酸 H₂SO₃:O=S(→O)(OH)₂ 硫酸 H₂SO₄:O=S(→O)₂(OH)₂ リン酸 H₃PO₄:O=P(→O)(OH)₃ 亜塩素酸 HClO₂:HO–Cl(→O) 塩素酸 HClO₃:HO–Cl(→O)₂ 過塩素酸 HClO₄:HO–Cl(→O)₃ 補足: 中心元素の不対電子はOH基と共有され, 非共有電子対にはO原子が配位結合できる. Sの場合, 2組の非共有電子対が2個のO原子と共有され, H₂SO₄が生成する. Nの場合, H₃NO₄が想定されるがOH基が近すぎて不安定でH₂Oが脱離しHNO₃となる. Pは原子半径が大きく, OH基が離れているためH₃PO₄からH₂Oは脱離しない. H₂CO₃やH₂SO₃も不安定で, すぐに分解してCO₂ + H₂O, SO₂ + H₂Oとなる. 次亜塩素酸HClOの構造はCl–OHである.
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