
気体の実験的製法
気体 製法 反応原理
H₂
亜鉛に希硫酸など
金属単体+酸
Zn + H₂SO₄ → ZnSO₄ + H₂ ↑
O₂
過酸化水素に酸化マンガン(IV)(触媒)
分解反応
2H₂O₂ →[MnO₂] 2H₂O + O₂ ↑
塩素酸カリウムに酸化マンガン(IV)(触媒)
分解反応
2KClO₃ →[MnO₂][加熱] 2KCl + 3O₂ ↑
O₃
酸素中で無声放電 or 空気に紫外線
3O₂ → 2O₃
N₂
亜硝酸アンモニウムを加熱
分解反応
NH₄NO₂ →[加熱] 2H₂O + N₂ ↑
Cl₂
酸化マンガン(IV)(酸化剤)に濃塩酸
酸化還元
MnO₂ + 4HCl →[加熱] MnCl₂ + 2H₂O + Cl₂ ↑
さらし粉に希塩酸
CaCl(ClO)·H₂O + 2HCl → CaCl₂ + 2H₂O + Cl₂ ↑
HF
フッ化カルシウム(蛍石)に濃硫酸
揮発性酸の遊離
CaF₂ + H₂SO₄ →[加熱] CaSO₄ + 2HF ↑
HCl
塩化ナトリウムに濃硫酸
揮発性酸の遊離
NaCl + H₂SO₄ →[加熱] NaHSO₄ + HCl ↑
CO
ギ酸に濃硫酸(触媒)
脱水作用
HCOOH →[H₂SO₄][加熱] H₂O + CO ↑
シュウ酸に濃硫酸(触媒)
脱水作用
(COOH)₂ →[H₂SO₄][加熱] H₂O + CO₂ ↑ + CO ↑
CO₂
炭酸カルシウム(石灰石)に希塩酸
弱酸の遊離
CaCO₃ + 2HCl → CaCl₂ + H₂O + CO₂ ↑
炭酸カルシウム(石灰石)を加熱
分解反応
CaCO₃ →[加熱] CaO + CO₂ ↑
NH₃
塩化アンモニウムに水酸化カルシウム
弱塩基の遊離
2NH₄Cl + Ca(OH)₂ →[加熱] CaCl₂ + 2H₂O + 2NH₃ ↑
NO
銅に希硝酸(酸化剤)
酸化還元
3Cu + 8HNO₃ → 3Cu(NO₃)₂ + 4H₂O + 2NO ↑
NO₂
銅に濃硝酸(酸化剤)
酸化還元
Cu + 4HNO₃ → Cu(NO₃)₂ + 2H₂O + 2NO₂ ↑
H₂S
硫化鉄(Ⅱ)に希硫酸
弱酸の遊離
FeS + H₂SO₄ → FeSO₄ + H₂S ↑
SO₂
銅に濃硫酸(酸化剤)
酸化作用
Cu + 2H₂SO₄ →[加熱] CuSO₄ + 2H₂O + SO₂ ↑
亜硫酸水素ナトリウムに希硫酸
弱酸の遊離
2NaHSO₃ + H₂SO₄ → Na₂SO₄ + 2H₂O + 2SO₂ ↑
加熱が必要な反応
① 濃硫酸を用いる反応. 加熱が必要な多くの反応がこれに当たる.
② 固体を融解させて反応しやすくする. 例 KClO₃, CaCO₃ など
③ Cl₂の発生.
[気体の製法は, 無機化学(非金属元素)の最重要・最頻出事項である.
最低でも, 何と何からどんな気体が発生するかを覚えておく. このとき, 反応原理の理解が役立つ.
次の弱酸・弱塩基は, 不安定なので直ちに分解する.
炭酸 H₂CO₃ →[直ちに] CO₂ + H₂O, 亜硫酸 H₂SO₃ →[直ちに] SO₂ + H₂O, NH₄OH →[直ちに] NH₃ + H₂O
「亜」は標準よりもOが1個少ないことを意味する. 例 H₂SO₃(亜硫酸), HNO₂(亜硝酸)
加熱を要する反応は3パターンに分類される.
不揮発性や酸化作用は熱濃硫酸になって初めて示すから, 加熱が必要である.
また, 有機物を脱水する場合も, 高温のほうがより効果的であるから, 結局加熱する.
Cl₂は, MnO₂にHClを加えただけでは反応が進まない.
加熱してCl₂を反応系から追い出すことで, 平衡を右に移動させる(ルシャトリエの原理).
HFの反応ではCaSO₄まで進行するが, HClの反応ではNaHSO₄までしか進行しない.
これは, 酸の強さ(陽イオンと陰イオンの電離度の大きさ)が次であることに起因する.
H₂SO₄(第1電離) > HCl > HSO₄⁻(第2電離) > HF
より電離しやすいHClが存在している(電離していない)段階では, HSO₄⁻は電離しない.]
