溶融塩電解(ナトリウムNa、アルミニウムAlの精錬)

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fused-salt-electrolysis
イオン化傾向の大きさが\ce{Al}以上の金属の単体}}は,\ 水溶液を電解分解しても得られない. \\[.2zh]  \textbf{\textcolor{Purple}{金属よりも先に水溶液中の\ce{H2O}が還元されて水素\ce{H2}\,が発生するだけになる}}からである. \\[.2zh]  \textbf{\textcolor{red}{結晶そのものを直接加熱融解した水がない状態で電気分解}(\textcolor{blue}{溶融塩電解})}して単体を得る. \\\\\\  \textbf{\textcolor{blue}{ナトリウムの精錬}(\textcolor{red}{塩化ナトリウム\ce{NaCl}}の溶融塩電解)} \\陽極}(炭素電極) \ce{2Cl-}\,\ce{->[\textcolor{forestgreen}{酸化}]}\,\ce{Cl2 ^}\,+\,\ce{2e-} \\[.5zh] \textcolor{magenta}{陰極}(鉄電極)  \ce{Na+}\,+\,\ce{e-}\,\ce{->[\textcolor{Purple}{還元}]}\,\ce{Na} & (\textcolor{red}{\ce{Na}の単体が析出}) アルミニウムの精錬}(\textcolor{red}{\ce{Al2O3}\,(アルミナ)}の溶融塩電解)}(ホール・エルー法) \\[1zh] 陽極}(炭素電極) \begin{cases} \ce{C}\,+\,\ce{O^2-}\,\ce{->[\textcolor{forestgreen}{酸化}]}\,\ce{CO}\,+\,\ce{2e-}\\[.2zh] \ce{C}\,+\,\ce{2O^2-}\,\ce{->[\textcolor{forestgreen}{酸化}]}\,\ce{CO2}\,+\,\ce{4e-} 炭素電極が消費される陰極}(炭素電極) \ \ \ce{Al^3+}\,+\,\ce{3e-}\,\ce{->[\textcolor{Purple}{還元}]}\,\ce{Al} & (\textcolor{red}{\ce{Al}の単体が析出}) Al2O3}\,(アルミナ)の融点を下げるため,\ \textbf{\textcolor{blue}{氷晶石}}(\ce{Na3AlF6})を加える必要がある. 溶融塩電解は融解塩電解と呼ばれることもある. \\[1zh] %通常\ce{NaCl},\ \ce{MgCl2},\ \ce{CaCl2}\,等の塩化物が用いられるが,\ \ce{Al}は酸化物\ce{Al2O3}\,を用いる. \\[.2zh] %いずれにしても適切な融点降下剤を加えて融点を下げる必要がある. \\[.2zh] %\ce{Al}以外は,\ 生じた単体が酸化されないように空気(酸素)がない状態で行う. \\[1zh] \bm{原料はボーキサイト(主成分\ce{Al2O3}\cdot n\ce{H2O})}で,\ 精製すると酸化物\ce{Al2O3}\,(アルミナ)が得られる. \\[.4zh] ボーキサイトからアルミナを得るまでの過程は,\ 無機化学で学習する. \\[1zh] 理論化学では,\ アルミナの溶融塩電解により\ce{Al}単体を得る方法(ホール・エルー法)を学習する. \\[.2zh] アルミナは融点が非常に高い(2054℃)ので,\ 融点降下剤の氷晶石を加えて950℃で溶融塩電解する. \\[.2zh] \bm{凝固点降下}(純物質よりも融点の低い物質を含んだ混合物の方が融点が低くなる)を利用している. \\[1zh] \bm{陽極では,\ 高温のために電極の炭素\ce{C}が酸化されて\ce{CO}や\ce{CO2}\,が生成する.} \\[.4zh] つまり,\ \bm{陽極の炭素\ce{C}は消費されていくため,\ 絶えず補給する必要がある.} \\[1zh] %\ce{Na+},\ \ce{[AlF6]^3-}からなる液体に\ce{Al2O3}を溶解して\ce{Al^3+}と\ce{O^2-}に分解し,\ この溶融液を電気分解する. \\[.4zh] \ce{Al}の製造には莫大な電気エネルギーを要するため,\ 電気代が高い日本ではほとんど製造されない. \\[.2zh] 実際,\ \ce{Al}の精錬(溶融塩電解)に必要な電気エネルギーは,\ 銅\ce{Cu}の電解精錬よりもはるかに大きい. \\[.2zh] まず,\ 必要な電圧は,\ \ce{Al}の精錬では約4.0\,\text V,\ \ce{Cu}の電解精錬では約0.3\,\text Vである. \\[.2zh] また,\ 単体1\,\text gを得るのに必要な電気量[\text C]を求めると以下となる. 1\,F=9.65\times10^4\,\text{C/mol} \\[.5zh]  \ce{Al^3+}\,+\,\ce{3e-}\,\ce{->}\,\ce{Al},\ \ \ce{Cu^2+}\,+\,\ce{2e-}\,\ce{->}\,\ce{Cu}\ より \\[.2zh]  1\,\text{mol}の\ce{Al}を得るには3\,\text{mol}の\ce{e-},\ 1\,\text{mol}の\ce{Cu}を得るには2\,\text{mol}の\ce{e-}が流れる必要がある. \\[.2zh]  \ce{Al}=27,\ \ce{Cu}=64とすると,\ 単体1\,\text gを得るのに必要な電気量は \ce{Al}:\bunsuu{3F}{27}\,[\text C] \ce{Cu}:\bunsuu{2F}{64}\,[\text C] \\[1.5zh] 一方で,\ 軽金属であるアルミニウム\ce{Al}は,\ 鉄\ce{Fe}等の重金属に比べて融点が低く加工しやすい. \\[.2zh] それゆえ,\ 溶融塩電解のわずか3\,\%のエネルギーでリサイクルできる利点がある. Al}の単体は,\ 工業的にはボーキサイトから得られる\ce{Al2O3}\,の溶融塩電解で製造される. \\[.2zh] \hspace{.5zw}まず,\ \ce{Al2O3}\,に氷晶石\ce{Na3AlF6}\,を加え,\ これを約950℃に加熱して融解させる.\ 溶融塩 \\[.2zh] \hspace{.5zw}中に設置した2つの炭素電極間に電流を流すと,\ 陰極で\ce{Al}が得られ,\ 陽極では一酸化 \\[.2zh] \hspace{.5zw}炭素と二酸化炭素が発生する. \\[.2zh] \hspace{.5zw}ファラデー定数$F=9.65\times10^4\,\text{C/mol},\ \ \ce{C}=12,\ \ \ce{O}=16,\ \ \ce{Al}=27$ \\[1zh] \hspace{.5zw}(1)\ \ \ce{Al}の単体が\ce{Al^3+}を含む水溶液の電気分解で得られないのは何故か. \\[1zh] \hspace{.5zw}(2)\ \ 陽極および陰極で起こる反応をイオン反応式で示せ. \\[1zh] \hspace{.5zw}(3)\ \ 1.93\,kAの電流を10時間流して電解したとき,\ 陰極で得られる\ce{Al}は何kgか. \\[1zh] \hspace{.5zw}(4)\ \ (3)のとき,\ 陽極で発生した一酸化炭素と二酸化炭素の比が$1:2$であったとすると, \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ 減少した炭素電極の質量は何kgか. \\[1zh] \hspace{.5zw}(5)\ \ 4.5\,Vの電圧で電解するとき,\ \ce{Al}の単体\,1.0\,kgの製造に必要な電気エネルギーは \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ 何kJか. $1\,\text J=1\,\text C\cdot1\,\text V$ \\[1zh] \hspace{.5zw}(6)\ \ ボーキサイト10\,kgからアルミニウム2.7\,kgが得られるとき,\ このボーキサイト中 \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ の\ce{Al2O3}\,の含有率を求めよ. \\ Al}はイオン化傾向が大きく,\ \ce{Al^3+}が還元される前に溶媒の水が還元されてしまうから.} \\\\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ \textcolor{red}{3\,molの電子\ce{e-}が流れると,\ 陰極で1\,molの\ce{Al}が析出する.} \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ \textbf{得られる\ce{Al}}は 減少した炭素の物質量は  \phantom{ (1)}\ \ \textbf{減少した炭素の質量}は 3\,molの電子\ce{e-}が流れると1\,molの\ce{Al}が析出する.} \\[.5zh] \phantom{ (1)}\ \ 1.0\,kgの\ce{Al}の製造に必要な電子\ce{e-}の物質量は  \phantom{ (1)}\ \ \textbf{1.0\,kgの\ce{Al}の製造に必要な電気エネルギー}は \得られる\ce{Al}の物質量は $\bunsuu{2.7\times10^3\,\text g}{27\,\text{g/mol}}=1.0\times10^2$\,mol \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ \textcolor{red}{1\,molの\ce{Al2O3}\,(式量102)から2\,molの\ce{Al}が得られる.} \\[.2zh] \phantom{ (1)}\ \ ボーキサイト中の\ce{Al2O3}\,の物質量は $1.0\times10^2\,\text{mol}\times\textcolor{red}{\bunsuu12}=50$\,mol \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ ボーキサイト中の\ce{Al2O3}\,の質量は  $102\,\text{g/mol}\times50\,\text{mol}=5100\,\text g=5.1$\,kg \\[1zh] \phantom{ (1)}\ \ \textbf{ボーキサイト中の\ce{Al2O3}\,の含有率}は $\bunsuu{5.1\,\text{kg}}{10\,\text{kg}}=0.51=\bm{51\,\% (3)\ \ \bm{(電気量Q\,[\textbf C])=(電流I\,[\textbf A])\times(時間t\,[\textbf s])}\ を用いて流れた電子\ce{e-}の物質量が求められる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 陰極で得られる\ce{Al}の物質量は,\ 流れた電子\ce{e-}の物質量の\,\bunsuu13\,である. \phantom{(1)}\ \ \maru1より,\ \bm{x\,\textbf{mol}の\ce{CO}が発生するとき,\ 2x\,\textbf{mol}の\ce{e-}が流れ,\ x\,\textbf{mol}の炭素\ce{C}が消費される.} \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \maru2より,\ \bm{y\,\textbf{mol}の\ce{CO2}\,が発生するとき,\ 4y\,\textbf{mol}の\ce{e-}が流れ,\ y\,\textbf{mol}の炭素\ce{C}が消費される.} \\[.4zh] \phantom{(1)}\ \ よって,\ 流れた\ce{e-}の物質量は(2x+4y)\,\text{mol},\ 消費された炭素\ce{C}の物質量は(x+y)\,\text{mol}である.