ニッケル・カドミウム電池とニッケル・水素電池

スポンサーリンク
fuel-cell
ニッケル・カドミウム電池(起電力 1.3V) (略称:ニッカド電池, ニカド電池) (−) Cd | KOH aq | NiO(OH) (+) 負極 Cd + 2OH⁻ ⇄[放電][充電] Cd(OH)₂ + 2e⁻ 正極 NiO(OH) + H₂O + e⁻ ⇄[放電][充電] Ni(OH)₂ + OH⁻ 全体反応式 Cd + 2NiO(OH) + 2H₂O ⇄[放電(2e⁻)][充電(2e⁻)] Cd(OH)₂ + 2Ni(OH)₂ 特徴 二次電池. 低価格, 長寿命. Cdは毒性が高い(イタイイタイ病の原因). 用途 電動工具. [ Cd(OH)₂ も Ni(OH)₂ も不溶性の塩で電極に付着するため, 充電が可能になる. 全体反応式に OH⁻ はないが 2H₂O があるため, 放充電によって KOH 水溶液の濃度が変化する. 全ての Ni(OH)₂ が NiO(OH) に戻った後も充電し続けると, 正極で O₂ が発生する(過充電). 4OH⁻ →[酸化] O₂ + 2H₂O + 4e⁻ …① 過充電により正極で O₂ が発生すると, 電池内部の圧力が上がり, 破裂する危険がある. Cd を多めに充填しておくことで, 過充電によって発生した O₂ を吸収する工夫が為されている. Cd →[酸化] Cd²⁺ + 2e⁻ …② O₂ + 2H₂O + 4e⁻ →[還元] 4OH⁻ …③ (①の逆) ②×2 + ③ より 2Cd + O₂ + 2H₂O → 2Cd(OH)₂ Cd 電極が Cd(OH)₂ に酸化されるため, 過充電してしまうと放電容量が減少する. ] ニッケル・水素電池(起電力 1.35V) (−) MH | KOH aq | NiO(OH) (+) 負極 MH + OH⁻ ⇄[放電][充電] M + H₂O + e⁻ 正極 NiO(OH) + H₂O + e⁻ ⇄[放電][充電] Ni(OH)₂ + OH⁻ 全体反応式 MH + NiO(OH) ⇄[放電(e⁻)][充電(e⁻)] M + Ni(OH)₂ 特徴 二次電池. 長寿命, 鉛蓄電池よりも軽量, ニッカド電池の2倍以上の電池容量. 毒性の高い Cd を使わないため, 1990年以降ニッカド電池からの移行が進んでいる. 用途 デジタルカメラ, ハイブリッド自動車, 電気自動車 [ 負極は水素吸蔵合金(条件次第で水素を吸着・放出できる合金)である(metal の M で表す). 放電前の水素原子 H を吸蔵した状態を MH と表す. 負極で生じる H₂O は正極で消費され, 正極で生じる OH⁻ は負極で消費される. よって, 放充電において KOH 水溶液の濃度は変化せず, 起電力は長く一定に保たれる. 全ての M と Ni(OH)₂ が MH と NiO(OH) に戻った後も充電し続けると水が電気分解する(過充電). 2H₂O → 2H₂ + O₂ NiO(OH) よりも多くの物質量の MH を充填しておくと, 次の理由で破裂する危険が減少する. 過充電で発生した H₂ は, 水素吸蔵合金 M に吸蔵される. 過充電で発生した O₂ は, MH と反応して H₂O になる. 4MH + O₂ → 4M + 2H₂O ] 電極に11.2 g の Cd と 18.4 g の NiO(OH) を用い, 5.00 mol/L (密度 1.21 g/mL) の KOH 水溶液 80.0 mL を電解液として用いた二次電池を作成した. H = 1.00, O = 16.0, Ni = 59.0, Cd = 112, ファラデー定数 F = 9.65×10⁴ C/mol (1) Cd を 11.2 g 充填するとき, 理論上何 g の NiO(OH) を充填できるか. (2) 0.600 A の電流を 8時間2分30秒 放電したとき, 負極, 正極, 電解液の質量をそれぞれ求めよ. 全体反応式 Cd + 2NiO(OH) + 2H₂O →[放電(2e⁻)] Cd(OH)₂ + 2Ni(OH)₂ (1) Cd(原子量112)の物質量は 11.2 g / 112 g/mol = 0.100 mol 充填できる NiO(OH)(式量92.0)の質量は 92.0 g/mol × (0.100 × 2) mol = 18.4 g (2) 電子 e⁻ が 2 mol 流れると, 負極は 34.0 g 増加, 正極は 2.00 g 増加, 電解液は 36.0 g 減少. 流れた電子 e⁻ の物質量は 0.600 A × (8×60² + 2×60 + 30) s / (9.65×10⁴ C/mol) = 0.180 mol 負極の質量 11.2 g + (34.0 g / 2 mol) × 0.18 mol ≈ 14.3 g 正極の質量 18.4 g + (2.00 g / 2 mol) × 0.18 mol ≈ 18.6 g 電解液の質量 1.21 g/mL × 80.0 mL − (36.0 g / 2 mol) × 0.18 mol ≈ 93.6 g [ Cd と Ni が共に安定酸化数 +2 に自発的に変化するのが根幹で, 全体反応式の作成が問われる. 「負極 Cd → Cd(OH)₂」「正極 NiO(OH) → Ni(OH)₂」を元に半反応式の作成手順に従う. 負極 H₂O で両辺の O を合わせる. Cd + 2H₂O → Cd(OH)₂ H⁺ で両辺の H の数を合わせる. Cd + 2H₂O → Cd(OH)₂ + 2H⁺ e⁻ で両辺の総電荷を合わせる. Cd + 2H₂O → Cd(OH)₂ + 2H⁺ + 2e⁻ 両辺に 2OH⁻ を加えると(H⁺ を中和) Cd + 2H₂O + 2OH⁻ → Cd(OH)₂ + 2H₂O + 2e⁻ 正極 H₂O で両辺の O を合わせる. 必要なし H⁺ で両辺の H の数を合わせる. NiO(OH) + H⁺ → Ni(OH)₂ e⁻ で両辺の総電荷を合わせる. NiO(OH) + H⁺ + e⁻ → Ni(OH)₂ 両辺に OH⁻ を加えると(H⁺ を中和) NiO(OH) + H₂O + e⁻ → Ni(OH)₂ + OH⁻ (1) 全体反応式より, Cd : NiO(OH) = 1 mol : 2 mol の比で反応する. 本問の場合は, 理論上限界量の NiO(OH) を充填したことになる. 実際には過充電時の破裂を防ぐため, 理論上限界量よりもかなり少ない NiO(OH) を充填する. (2) 全体反応式は, 半反応式から 2e⁻ を消去して導かれることに注意する. (電気量 C) = (電流 A) ×(秒 s) で電気量を求め, ファラデー定数で物質量に換算する. Cd → Cd(OH)₂ より, 負極では e⁻ 2 mol が流れると (OH)₂ の分の質量が増加する. 2NiO(OH) → 2Ni(OH)₂ より, 正極では e⁻ 2 mol が流れると 2H の分の質量が増加する. 電解液は, e⁻ 2 mol が流れると 2H₂O の分の質量が減少する. ]
タイトルとURLをコピーしました