酸化・還元の定義と酸化数

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redox-titration
酸素\ce{O}の授受による酸化・還元の定義}} \\[1zh]   物質が\textbf{\textcolor{magenta}{酸素\ce{O}を受け取った}}とき\textbf{\textcolor{magenta}{酸化された}},\ \textbf{\textcolor{cyan}{酸素\ce{O}を失った}}とき\textbf{\textcolor{cyan}{還元された}}という. 水素\ce{H}の授受による酸化・還元の定義}} \\[1zh]   物質が\textbf{\textcolor{magenta}{水素\ce{H}を失った}}とき\textbf{\textcolor{magenta}{酸化された}},\ \textbf{\textcolor{cyan}{水素\ce{H}を受け取った}}とき\textbf{\textcolor{cyan}{還元された}}という. \\\\ 電子\ce{e-}の授受による酸化・還元の定義}}{\small (今後はこの定義で考える)} \\[1zh]   酸素や水素の授受による定義では,\ 酸素や水素が関与しない反応を説明できない. \\[.2zh]   電子\ce{e-}の授受による定義が本質的で,\ あらゆる酸化・還元を統一的に説明できる. \\[1zh]   物質が\textbf{\textcolor{magenta}{電子\ce{e-}を失った}}とき\textbf{\textcolor{magenta}{酸化された}},\ \textbf{\textcolor{cyan}{電子\ce{e-}を受け取った}}とき\textbf{\textcolor{cyan}{還元された}}という. \\\\\\\\ 「酸化」「還元」は,\ 目的語がなくとも文意が通じるよう受動態で定義されている. \\[.2zh]  受動態「\,\ce{CuO}は(\ce{H2}\,によって)還元された」  能動態「\,\ce{CuO}は\ce{H2}\,を酸化した」 \\[1zh] 「酸化された」「還元された」という場合,\ その原子を含む物質全体を指すことが多い. \\[.2zh] \ce{CuO -> Cu}のとき,\ 還元された原子は\ce{Cu}だが,\ 「\,\ce{CuO}が還元された」ともいう. 酸化数}} \textbf{\textcolor{red}{単体中の原子を基準の0とした,\ 原子1個あたりの酸化の程度を表す指標(整数).}} \\[.2zh]      電子\ce{e-}\hspace{-.05zw}を1個,\ 2個,\ $\cdots$失う(酸化される)と$+\,1,\ +\,2,\ \cdots$となり, \\[.2zh]      電子\ce{e-}\hspace{-.05zw}を1個,\ 2個,\ $\cdots$受け取る(還元される)と$-\,1,\ -\,2,\ \cdots$となる. \\\\  化合物名で酸化数を示すとき,\ 直後にローマ数字(I,\ I\hspace{-.1em}I,\ I\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I,\ I\hspace{-.1em}V,\ V,\ V\hspace{-.1em}I,\ V\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I,\ $\cdots$)を用いて表す. \\[.2zh]   \rei \ce{Cu2O}:酸化銅(\,I\,), \ce{CuO}:酸化銅(\,I\hspace{-.1em}I\,) \\\\\\  \textbf{\textcolor{blue}{酸化数の簡便的な求め方}}が以下であり,\ 多くの場合これで求められる. \\[1zh] 金属の水素化合物の\ce{H}}の酸化数は\textcolor{cyan}{$-\,1$} 水素化リチウム過酸化物の\ce{O}}の酸化数は二フッ化酸素の\ce{O}}の酸化数は多原子イオ総和がイオンの電荷}}となるよう定めるアルカリ金属}}の酸化数はアルカリ土類金属}}の酸化数は  中級者以上は\textbf{\textcolor{blue}{酸化数の本質的な求め方}}も把握しておく必要がある.\ 例外の理由もわかる. イオン結合の化合物}}  \textbf{\textcolor{red}{各イオンの正負の符号をつけた電荷}}を酸化数とする. \\[.5zh]    \ \ \rei\ \ 金属元素と非金属元素からなる\ce{Li+H-}はイオン結合なので,\ \ce{H}の酸化数は$-\,1$ \\\\  \maru2\ \ \textbf{\textcolor{forestgreen}{共有結合の化合物}}  \textbf{\textcolor{red}{共有電子対が電気陰性度(電子を引きつける強さ)の大きい}} \\[.2zh]   \ \           \textbf{\textcolor{red}{原子に所属するとみなしたときの各原子の電荷}}を酸化数とする. 電気陰性度}} $\bm{\overset{4.0}{\ce{F}}>\overset{3.4}{\ce{O}}>\overset{3.2}{\ce{Cl}}>\overset{3.0}{\ce{N},\ce{Br}}>\overset{2.6}{\ce{C},\ce{S}}>\overset{2.2}{\ce{H}}>\overset{2\,~\,1.3}{(多くの金属)}>\overset{1.3\,~\,0.7}{(1族,2族の金属)}}$}} \\\\    \ \ \rei\ \ \ce{H2O2}\,では,\ 電気陰性度$\ce{O}>\ce{H}$より,\ \textbf{\textcolor{Purple}{\ce{H}と\ce{O}の共有電子対は\ce{O}の所属}}とみなす. \\[.2zh]    \ \  \ \ 同種の原子同士の共有電子対は,\ 均等に割り当てる. \\[.2zh]    \ \  \ \ 元々1個の価電子をもっていた\textcolor{cyan}{\ce{H}所属の電子は0個(\ce{H}の酸化数$+\,1$)}となる. \\[.2zh]    \ \  \ \ 元々6個の価電子をもっていた\textcolor{magenta}{\ce{O}所属の電子は7個(\ce{O}の酸化数$-\,1$)}となる. \\[1zh]    \ \ \rei\ \ \ce{OF2}\,では,\ 電気陰性度$\ce{F}>\ce{O}$より,\ \textbf{\textcolor{Purple}{\ce{F}と\ce{O}の共有電子対は\ce{F}の所属}}とみなす. \\[.2zh]    \ \  \ \ 元々7個の価電子をもっていた\textcolor{magenta}{\ce{F}\,所属の電子は8個(\ce{F}\,の酸化数$-\,1$)}となる. \\[.2zh]    \ \  \ \ 元々6個の価電子をもっていた\textcolor{cyan}{\ce{O}所属の電子は4個(\ce{O}の酸化数$+\,2$)}となる. 酸化数は原子1個ずつで考える. 酸化数の本質は,\ \bm{電気陰性度の大きい(陰性が強い)原子側への価電子の移動}である. \\[.2zh] この観点に立てば,\ イオン結合の化合物と共有結合の化合物の酸化数を統一的に理解できる. \\[1zh] 多くの化合物は,\ 電気陰性度の大きさが\ce{O}から\ce{H}までの範囲にある元素で構成されている. \\[.2zh] よって,\ 多くの化合物中では,\ \ce{O}は電子を奪う側,\ \ce{H}は電子を奪われる側になる. \\[.2zh] つまり,\ 多くの場合,\ \ce{O}は酸化数-2,\ \ce{H}は酸化数+1をとると決めうちできる(簡便法). \\[.2zh] しかし,\ \ce{H}はより電気陰性度が小さい金属相手には電子を奪う側になり,\ 例外的に酸化数-1となる. \\[.2zh] また,\ \ce{O}は同じ\ce{O}相手には電子を奪えず,\ より電気陰性度の大きい\ce{F}相手には逆に電子を奪われる. \\[.2zh] よって,\ 過酸化物(ペルオキシド構造\ \ce{- O-O -}\ をもつ)の\ce{O}の酸化数は例外的に-1, \\[.2zh] 二フッ化酸素\ce{OF2}\,の\ce{O}の酸化数は例外的に+2となる. 酸化還元反応}}  \textbf{\textcolor{magenta}{電子\ce{e-}\hspace{-.02zw}の授受}}が起こる反応.\ \textbf{酸化と還元は必ず同時に起こる.} \\\\[1zh] &  \ \ 酸素\ce{O}\   &  \ \ 水素\ce{H} \ &  \ 電子\ce{e-} &  酸化数 \\\hline \textcolor{magenta}{酸化される} & \ce{O}を受け取る & \ce{H}を失う & \textcolor{magenta}{\ce{e-}\hspace{-.05zw}を失う} & \textcolor{magenta}{酸化数増加} \\\hline \textcolor{cyan}{還元される} & \ce{O}を失う & \ce{H}を受け取る & \textcolor{cyan}{\ce{e-}\hspace{-.05zw}を受け取る} & \textcolor{cyan}{酸化数減少} \\\hline (5)\ \ 1個の\ce{Ca^2+}と2個の\ce{H-}からなるイオン結合の化合物(金属の水素化合物)である. \\[1zh] (6)\ \ \ce{K}はアルカリ金属(1族)であるから  (7)\ \ 1個の\ce{Sn^4+}と4個の\ce{Cl-}からなるイオン結合の化合物である. \\[1zh] (8)\ \ 普通\bm{\ce{NH4^+}は金属扱い}するのでイオン結合の化合物であり,\ \ce{NH4^+}と\ce{NO3^-}に分けて求める. \\[.4zh] このように,\ 1つの化合物中の同種の原子でも,\ 結合状態によって酸化数が異なることがある. \\[1zh] (9)\ \ 4個の\ce{K+}と1個の錯イオン\ce{[Fe(CN)6]^4-}からなるイオン結合の化合物である. \\[.4zh] \phantom{(1)}\ \ さらに,\ この錯イオンは1個の鉄イオンに6個のシアン化物イオン\ce{CN-}が配位したものである. \phantom{(10)}\ \ 試験で問われた場合は+\bunsuu83\,と答えればよいが,\ 実際の酸化数は整数のはずである. \\[.8zh] \phantom{(10)}\ \ 四酸化三鉄\ce{Fe3O4}\,は,\ 実際には複酸化物の酸化二鉄(\text{I\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I})鉄(\text{I\hspace{-.1em}I})1個の\ce{Fe^2+}と2個の\ce{Fe^3+}の平均酸化数が+\bunsuu83\,というわけである.