市販のオキシドール中の過酸化水素の濃度を求めるため,\ 次の実験を行った. 0.50mol/Lのシュウ酸水溶液10mLに希硫酸を加えて酸性にした.\ この溶液を 60~70℃に温めた後,\ 濃度不明の過マンガン酸カリウム水溶液を滴下したとこ ろ,\ 10mLで赤紫色が消えなくなった. オキシドール10mLに希硫酸を加えて酸性にした後,\ の過マンガン酸カリウム水溶液を滴下したところ,\ 20mLで赤紫色が消えなくなった. オキシドールの密度を1.01g/cm$³$とするとき,\ オキシドール中の過酸化水素の質量 [0zh] パーセント濃度を求めよ. $H₂O₂=34$ 過マンガン酸カリウム水溶液のモル濃度 オキシドール中の過酸化水素のモル濃度 過酸化水素H₂O₂の水溶液(過酸化水素水)がオキシドールである. 中和滴定と同様の方法で滴定して{酸化剤や還元剤の濃度を決定}するのが酸化還元滴定である. 代表的な酸化剤である{KMnO₄}を用いる酸化還元滴定が{過マンガン酸塩滴定}である. 過マンガン酸塩滴定では{指示薬を加える必要がない.} MnO4-}(赤紫色)\ →\ {Mn²+}(無色)}\ という酸化剤自体の色の変化で終点がわかるからである. ここで,\ 赤紫色から無色になったときが終点であると{誤解}してはいけない. 還元剤が存在している間は{MnO4-}が{Mn²+}に還元されるから常に色の変化が生じて無色になる. 酸化還元反応が終了して還元剤がなくなると,\ 当然{MnO4-}が{Mn²+}に還元されることはなくなる. つまり,\ MnO4-}を加えて赤紫色が消えなくなるところが終点}である. {KMnO₄}は空気中の物質と反応しやすく,\ 正確な測定をすることが難しい. よって,\ 中和滴定の場合と同様,\ まず{シュウ酸の一次標準溶液}を作成する. シュウ酸二水和物は純度が高く空気中で安定なので,\ 容易に標準溶液が作成できるのであった. このシュウ酸の一次標準溶液で滴定してKMnO₄}の二次標準溶液}を作成する. さらに,\ {この二次標準溶液で滴定してH₂O₂の濃度を決定する}のが本実験の全体の流れである. で溶液を温めているのは,\ {常温ではシュウ酸の反応速度が遅い}からである. ただし,\ 80℃を超えてしまうと{KMnO₄}が分解してしまうため,\ 60~70℃に温める. 溶液を酸性にするのは,\ {KMnO₄}が{酸性下で強力な酸化剤}となるからである. 実際,\ 次のように酸性下では5価の酸化剤,\ 中性・塩基性下では3価の酸化剤として働く. 酸性 {MnO4- + 8H+ + 5e- Mn²+ + 4H₂O} 中性・塩基性 {MnO4- + 2H₂O + 3e- MnO₂ + 4OH-} 酸性にするとき,\ 希硫酸を用いることになる.\ 硝酸や塩酸は使えない. {硝酸{HNO₃}は酸化剤}なのでシュウ酸を酸化してしまう. %,測定値が実際の値よりも低くなる. また,\ {塩酸{HCl}は還元剤}\ ({Cl-}が酸化されて{Cl₂}になる)なので{KMnO₄}を還元してしまう. %であると測定値が実際の値よりも高くなる. %{KMnO₄}の水溶液は光に対して不安定で分解しやすいので褐色びんに保存し,\ 褐色ビュレットを用いる. 計算は,\ まず2回の酸化還元滴定における量的関係をそれぞれ立式する. 過マンガン酸カリウムは5価の酸化剤,\ シュウ酸と過酸化水素は2価の還元剤である. {H₂C2O4 2CO₂ + 2H+ + 2e-} H₂O₂ O₂ + 2H+ + 2e-} 過酸化水素は基本酸化剤であるが,\ KMnO₄}や{K2Cr2O7}に対しては還元剤}として働く. 単純にacV=b’c’Vを立式するとH₂O₂のモル濃度が求まる.\ これを質量パーセント濃度に換算する. {溶液1Lを基準}にして考える.\ モル濃度は,\ 溶液1L}あたりの溶質の物質量mol}である. よって,\ オキシドール1L}には1.0mol}のH₂O₂が含まれていることがわかる. 1cm³あたり1.01g}なので,\ オキシドール1L}の質量は1.01g/cm³1000cm³=1010g}\ である. また,\ 溶質H₂O₂は1.0mol}含まれているから,\ 質量は34g/mol}1.0mol}\ である.