
酸化還元反応} \textcolor{red}{電子\ce{e-}\hspace{-.02zw}の授受}}が起こる反応.\ \textbf{酸化と還元は必ず同時に起こる.{酸化剤と還元剤}} \\[1zh]
酸化剤}} & \textbf{\textcolor{red}{電子を奪って相手を酸化}}し,\ \textbf{自身は還元される} & \textbf{\textcolor{cyan}{酸化数が減少}}する原子を含む 還元剤}} & \textbf{\textcolor{red}{電子を与えて相手を還元}}し,\ \textbf{自身は酸化される} & \textbf{\textcolor{magenta}{酸化数が増加}}する原子を含む (酸化数減少)}}}=\bm{相手を酸化した(\textcolor{cyan}{\ce{CuO}は酸化剤})}$}
代表的な酸化剤と還元剤}}\ {\small (赤字の物質を暗記, 物質の色も暗記)} \textcolor{red}{*酸化剤にも還元剤にもなる}酸化剤(自身は還元)} & \multicolumn{3}{c|}{反応前後の物質(酸化数)} \\ \hline
&&& \\[-1.8zh]\hline
過マンガン酸カリウム\ \ \ce{KMnO4}\ \ (酸性) & 赤紫色 }}淡桃色中性・塩基性) & \underset{\textcolor{purple}{赤紫色黒褐色(沈殿)}
酸化マンガン(\textbf{I\hspace{-.1em}V})\ \ \ce{MnO2} \ \ \ (酸性) & \underset{黒褐色} 淡桃色二クロム酸カリウム\ \ \ce{K2Cr2O7} (酸性) & \ \underset{\textcolor{orange}{橙赤色緑色
濃硝酸\ \ \ce{HNO3} 赤褐色(気体)
希硝酸\ \ \ce{HNO3}
熱濃硫酸\ \ \ce{H2SO4
過酸化水素\ \ \ce{H2O2二酸化硫黄\ \ \ce{SO2酸素オゾンハロゲン(酸化力\ \ce{F2}>\ce{Cl2}>\ce{Br2}>\mathRM{I}\ce{_2}
ヨウ素ヨウ化カリウム溶液(ヨウ素溶液) &褐色次亜塩素酸ナトリウム\ \ \ce{NaClO}還元剤(自身は酸化)} & \multicolumn{3}{c|}{反応前後の物質(酸化数)}
陽性の大きな金属(\ce{Na}など)
水素\ \ \ce{H2
過酸化水素\ \ \ce{H2O二酸化硫黄\ \ \ce{SO2
硫化水素\ \ \ce{H2S 淡黄色(沈殿)
塩酸\ \ \ce{HCl}
シュウ酸\ \ \ce{(COOH)2}\ \text{or}\ \ce{H2C2O4}
ヨウ化カリウム
硫酸鉄(\mathRM{I\hspace{-.1em}I})\ \ \ce{FeSO4 黄褐色
塩化スズ(\mathRM{I\hspace{-.1em}I})\ \ \ce{SnCl2
チオ硫酸ナトリウム\ \ \ce{Na2S2O3
\ce{Mn}は,\ \bm{酸性では\ce{Mn^2+}が安定,\ 中性・塩基性では\ce{MnO2}\,が安定}である. \\[.4zh]
\ce{MnO4^-}は中性・塩基性条件では\ce{MnO2}\,までしか変化しないが,\ 酸性にすると\ce{Mn^2+}にまで変化する. \\[1zh]
希硫酸と熱濃硫酸は別物と考える.\ \bm{希硫酸は酸化力をもたないが,\ 熱濃硫酸は強い酸化力をもつ.} \\[.2zh]
酸性条件を要する酸化剤を使うとき,\ 目的以外の酸化還元反応が起こらないよう希硫酸で酸性にする. \\[.2zh]
塩酸と硝酸も不可. \bm{塩酸\ce{HCl}を用いると,\ 塩化物イオン\ce{Cl-}が還元剤として働いてしまう.} \\[.2zh]
\bm{硝酸\ce{HNO3}\,を用いると,\ \ce{HNO3}\,自身が酸化剤として働いてしまう.} \\[1zh]
\bm{\ce{H2O2}\,は原則酸化剤}だが,\ 最高酸化数の\bm{\ce{KMnO4}\,や\ce{K2Cr2O7}\,が相手の場合は還元剤}となる. \\[.4zh]
\bm{\ce{SO2}\,は原則還元剤}だが,\ 最低酸化数の\bm{\ce{H2S}が相手の場合は酸化剤}となる. \\[1zh]
\bm{ヨウ素溶液}とは,\ \bm{ヨウ化カリウム\ce{K}\textbf{I}水溶液にヨウ素\textbf{I}\ce{_2}\,を溶かし込んだ褐色の溶液}である. \\[.4zh]
\mathRM{I}\ce{_2}\,は無極性分子で極性溶媒の水には溶けにくいが,\ \ce{K}\text{I}\,水溶液には溶けて反応させられるようになる. \\[.4zh]
ヨウ素溶液に含まれる\ce{K}\mathRM{I}は単なる溶質として存在するだけで,\ 酸化還元反応には関与しない. \\[.2zh]
\bm{デンプン水溶液を加えるとヨウ素デンプン反応によって青紫色に変化する}(中学理科). \\[1zh]
「チオ」は「\,\ce{O}を\ce{S}で置換」を意味する. 硫酸イオン\ \ce{SO4^2-} チオ硫酸イオン\ \ce{S2O3^2-} \\[.2zh]
上級者は,\ チオ硫酸イオン\ce{S2O3^2-}と\hspace{-.2zw}\rubytiny{四}{テトラ}\hspace{-.2zw}チオン酸イオン\ce{S4O6^2-}の構造と\ce{S}の酸化数も理解しておく. \\[1zh]
酸化数は,\ \bm{共有電子対が電気陰性度の大きい原子に所属するとみなしたときの各原子の電荷}であった. \\[.2zh]
5個の価電子が3個の\ce{O}に奪われる中央の\ce{S}の酸化数は+5となる(16族の\ce{S}の価電子は元々6個). \\[.2zh]
一方,\ 外部から1個の電子を受け取る中央でない方の\ce{S}の酸化数は-1となる. \\[.2zh]
結局,\ \ce{S}の酸化数は以下となり,\ 平均酸化数は\ce{S2O3^2-}\,の\ce{S}が+2,\ \ce{S4O6^2-}\,の\ce{S}が+2.5である. 各元素のとりうる酸化数の範囲と代表的な化合物}} \\[1zh]
普通,\ 原子は\textbf{\textcolor{red}{$\bm{「(価電子数)-8」~「価電子数」}$}}の範囲の値をとる(8段階). \\\\
示したのは高校化学に登場する化合物であり,\ 表にない酸化数の化合物が存在しないわけではない. \\[.2zh]
学習を進めるにつれて自然と身につくので,\ この表を無理に覚える必要はない. \\[1zh]
酸化数の本質は,\ \bm{電気陰性度の大きい(陰性が強い)原子側への価電子の移動}であった. \\[.2zh]
全ての価電子が奪われると最高酸化数になるから,\ \bm{最高酸化数は価電子数(族番号下1桁)}に等しい. \\[.2zh]
一方,\ 最外殻が8個(オクテット)になるまで電子を奪うと最低酸化数になる. \\[.2zh]
よって,\ \bm{最低酸化数は(価電子数)-8}である. \\[1zh]
例えば,\ 16族の\ce{S}は元々6個の価電子をもつため,\ 酸化数は-2\ ~\,+6の範囲の値をとる. \\[.2zh]
\ce{O}も16族だが,\ 電気陰性度が大きく電子を奪われにくいので,\ 例外的に最高酸化数は+2となる. \\[.2zh]
また,\ 電気陰性度の小さい金属元素が電子を奪うことはないので,\ \bm{金属元素の最低酸化数は0}である. \\[1zh]
\bm{最高酸化数の物質は酸化剤にしかなりえず,\ 最低酸化数の物質は還元剤にしかなりえない.} \\[.2zh]
中間の酸化数の物質は,\ 相手によって酸化剤にも還元剤にもなりうる. \\[.2zh]
酸化・還元されたときにどの物質に変わるかは,\ 実際には単純ではなく, \\[.2zh]
どの酸化数が安定か,\ 相手の酸化力・還元力,\ \ce{H+}の濃度などによって変化する. \\[.2zh]
高校化学で登場するのは特定の変化のみなので,\ 反応後の物質を暗記しておくことになる. \\[.2zh]
また,\ 酸化数の大きさと酸化力の強さは必ずしも一致しない.\ 実際,\ 酸化力\ce{H2}\酸化還元反応式の作成手順}} \rei\ \ $\bm{\underset{\ce{KMnO4}}{過マンガン酸カリウム}の\underset{\ce{H2SO4}}{硫酸酸性}溶液と\underset{\ce{H2O2}}{過酸化水素}水}$ \\\\
$[1]$\ \ \textbf{\textcolor{blue}{半反応式(電子\ce{e-}を含む反応式)の作成手順}}{\small (酸化還元反応に直接関係しないイオンは無視)} 反応前後の物質}を書く\textbf{(\textcolor{Purple}{要暗記}).} & \ce{MnO4^- -> Mn^2+}\ (酸性) (\bm{\textcolor{cyan}{酸化剤}}) \\ \hline
2.\ \textbf{\textcolor{red}{\ce{H2O}}}で\textbf{\textcolor{red}{両辺の\ce{O}の数}}を合わせる. & \ce{MnO4^- -> Mn^2+} + \textcolor{red}{\ce{4H2O}} \\ \hline
3.\ \textbf{\textcolor{red}{\ce{H+}}}で\textbf{\textcolor{red}{両辺の\ce{H}の数}}を合わせる. & \ce{MnO4^-} + \textcolor{red}{\ce{8H+}} \ce{-> Mn^2+ + 4H2O} \\ \hline
4.\ \textbf{\textcolor{red}{\ce{e-}}}で\textbf{\textcolor{red}{両辺の総電荷}}を合わせる. & \ce{MnO4^- + 8H+} + \textcolor{red}{\ce{5e-}} \ce{-> Mn^2+ + 4H2O} \\ \hline
酸化数の変化に着目した半反応式の作成手順}} \\[1zh]
反応前後の物質}を書くイオン反応式の作成}} 酸化剤の半反応式と還元剤の半反応式から\textbf{\textcolor{red}{電子\ce{e-}を消去}}する.酸化還元反応式(化学反応式)の作成} \\[1zh]
イオンが余らないように, \textcolor{red}{反応に直接関与しないイオンを両辺に加える.}} \\[1zh]
\phantom{ [1]}\ \ \textcolor{red}{両辺に2個の\ce{K+}と3個の\ce{SO4^2-}を加える}と \\[.5zh]
\bm{最高酸化数の\ce{KMnO4}\,は酸化剤にしかなりえないので,\ \ce{H2O2}\,が還元剤となる.} \\[.4zh]
酸化還元反応に直接関与しない\ce{K+}と\ce{SO4^2-}\,は一旦無視する. \\[1zh]
酸化剤と還元剤の反応前後の物質さえ覚えておけば,\ 4段階の手順で機械的に半反応式を作成できる. \\[.2zh]
結局,\ \bm{電子を奪う側の酸化剤では左辺に,\ 電子を与える側の還元剤では右辺に\ce{e-}\,がくる.} \\[.2zh]
また,\ \bm{半反応式の電子\ce{e^-}\,の数は,\ 反応前後の物質の酸化数の差に等しくなる(重要).} \\[.2zh]
電子\ce{e^-}の授受分だけ酸化数が変化することを優先的に考慮したのが2つ目の作成手順である. \\[1zh]
\bm{反応に直接関与しないイオン\ce{K+},\ \ce{SO4^2-}\,を両辺に加えてイオンをなくせば,\ 酸化還元反応式}となる. \\[.4zh]
まず,\ 左辺の\ce{MnO4^-}と\ce{H+}\,に対してそれぞれ\ce{K+}\,と\ce{SO4^2-}\,を組み合わせ,\ \bm{左辺からイオンをなくす.} \\[.4zh]
2個の\ce{MnO4^-}には2個の\ce{K+},\ 6個の\ce{H+}には3個の\ce{SO4^2-}\,を組み合わせることになる. \\[.4zh]
硫酸酸性条件がない反応式を作る場合は,\ \ce{H+}は水に由来すると考え,\ \ce{OH-}\,を組み合わせる. \\[.2zh]
\bm{左辺に2個の\ce{K+}と3個の\ce{SO4^2-}を加えたので,\ これを右辺にも加える}必要がある. \\[.4zh]
まず,\ \ce{2Mn^2+}\,には2個の\ce{SO4^2-}\,を組み合わせればよい. \\[.4zh]
後は残った2個の\ce{K+}\,と1個の\ce{SO4^2-}\,を組み合わせて\ce{K2SO4}\,にすると,\ 酸化還元反応式が完成する.
とにかく,\ 反応前後で酸化数の変化がある反応はすべて酸化還元反応である. \\[.2zh]
酸化還元反応の中でも以下のような特殊なものは,\ 半反応式を考えずとも作成できる. \\\\
(有機化学){還元}}金属単体の反応(イオン化傾向)ハロゲン単体の反応自己酸化還元反応触媒\ce{MnO2
酸化物ができるいわゆる酸化や,\ いわゆる還元(酸化物\,→\,単体)も当然酸化還元反応である. \\[.2zh]
\ce{C},\ \ce{H},\ \ce{O}からなる化合物が十分な\ce{O2}\,の元で完全燃焼すると\ce{CO2}\,と\ce{H2O}が生成する(有機化学). \\[.4zh]
\ce{C}は\ce{O}と結びついて\ce{CO}や\ce{CO2}\,になりやすい性質をもつので,\ 酸化物を還元して単体にできる. \\[1zh]
イオン化傾向\,\ce{Zn}>\ce{Cu}に起因する も酸化還元反応である. \\[1.5zh]
ハロゲン単体の酸化力\ \ce{F2}>\ce{Cl2}>\ce{Br2}>\mathRM{I}\ce{_2}\ に起因する反応も酸化還元反応である. \\[.4zh]
\bm{(酸化力が強い)=(自身は還元されやすい)}より,\
\bm{同一物質が酸化剤にも還元剤にもなる反応}を\bm{自己酸化還元反応}という. \\[.2zh]
一応半反応式を示しておくが,\ 種類が少ないので出てくるたびに暗記したほうが早い. \\[1zh]
亜硝酸アンモニウム\ce{NH4NO2}\,の分解 \begin{cases}
(酸化剤) \ce{2NO2^-}\,+\,\ce{8H+}\,+\,\ce{6e-}\,\ce{->}\,\ce{N2}\,+\,\ce{4H2O} \\[.4zh]
(還元剤) \ce{2NH4^+}\,\ce{->}\,\ce{N2}\,+\,\ce{8H+}\,+\,\ce{6e-}
過酸化水素\ce{H2O2}\,の分解 \begin{cases}
(酸化剤) \ce{H2O2}\,+\,\ce{2H+}\,+\,\ce{2e-}\,\ce{->}\,\ce{2H2O} \\[.4zh]
(還元剤) \ce{H2O2}\,\ce{->}\,\ce{O2}\,+\,\ce{2H+}\,+\,\ce{2e-}
\ce{KMnO4}\,とは異なり,\ \ce{MnO2}\,は\ce{H2O2}\,を酸化できるほどの酸化力をもたないので反応せず,\ 触媒となる. \\[.4zh]
\ce{H2O2}\,自身が酸化剤にも還元剤にもなり,\ より安定な\ce{H2O}と\ce{O2}\,に分解する.
身の回りの酸化剤と還元剤{ヨウ素 \mathRM{I}\ce{_2}} & \textbf{\textcolor{cyan}{穏やかな酸化作用}}による\textbf{\textcolor{red}{殺菌}}. \textbf{用途} うがい薬,\ 外科手術用消毒薬 \\
オゾン \ce{O3}} & \textbf{\textcolor{cyan}{酸化作用}}による\textbf{\textcolor{red}{殺菌・漂白}}. \textbf{用途} 水道水の殺菌消毒,\ \ 酸化型漂白剤 \\
次亜塩素酸} & \textbf{\textcolor{cyan}{酸化作用}}による\textbf{\textcolor{red}{殺菌・漂白}}. \textbf{用途} 水道水の殺菌消毒,\ \ 塩素系漂白剤 \\
NaClO}} & 酸性洗浄剤(主成分\ce{HCl})と混ぜると有毒な塩素が発生する.}}\ まぜるな危険! \\
二酸化硫黄} & \textbf{\textcolor{magenta}{還元作用}}による\textbf{\textcolor{red}{殺菌・漂白}}. \textbf{用途} 還元型漂白剤,\ \ 酸化防止剤 \\
\textbf{\ce{SO2}} & $\ce{SO2}\,+\,\ce{2H2O}\,\ce{->}\,\ce{SO4^2-}\,+\,\ce{4H+}\,+\,\ce{2e-}$ \\\hline
\textbf{ビタミンC} & \textbf{\textcolor{magenta}{還元作用}}による\textbf{\textcolor{red}{食品の酸化防止}}. \textbf{用途} 酸化防止剤(食品添加物) \\
\textbf{\ce{C6H8O6}} & $\underset{別名:アスコルビン酸}{\ce{C6H8O6}}\hspace{-1zw}\,\ce{->}\,\ce{C6H6O6}\,+\,\ce{2H+}\,+\,\ce{2e-}$ \\
次の反応において,\ 酸化剤と還元剤を化学式で示せ.\ 酸化還元反応でないなら×を示せ. \\[1zh]
\hspace{.5zw} (1)\ \ $\ce{2HCl}\,+\,\ce{Ba(OH)2}\,\ce{->}\,\ce{BaCl2}\,+\,\ce{2H2O}$ \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (2)\ \ $\ce{Cu}\,+\,\ce{2H2SO4}\,\ce{->}\,\ce{CuSO4}\,+\,\ce{2H2O}\,+\,\ce{SO2}$ \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (3)\ \ $\ce{CaCO3}\,+\,\ce{2HCl}\,\ce{->}\,\ce{CaCl2}\,+\,\ce{H2O}\,+\,\ce{CO2}$ \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (4)\ \ $\ce{SO2}\,+\,\ce{Cl2}\,+\,\ce{2H2O}\,\ce{->}\,\ce{H2SO4}\,+\,\ce{2HCl}$ \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (5)\ \ $\ce{Zn(OH)2}\,+\,\ce{2NaOH}\,\ce{->}\,\ce{Na2[Zn(OH)4]}$ \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (6)\ \ $\ce{2KMnO4}\,+\,\ce{5H2C2O4}\,+\,\ce{3H2SO4}\,\ce{->}\,\ce{2MnSO4}\,+\,\ce{10CO2}\,+\,\ce{8H2O}\,+\,\ce{K2SO4}$ \\
すべての原子の酸化数を確認すると確実にわかるが,\ 本質的ではなく,\ 非効率である. \\[.2zh]
まずは\bm{単体に着目}する.\ \bm{単体から化合物ができる(またはその逆の)とき,\ 必ず酸化数が変化する.} \\[.2zh]
一瞬で単体\ce{Cu}と\ce{Cl2}\,がある(2)と(4)は酸化還元反応であるとわかる. \\[.2zh]
代表的な酸化剤と還元剤を覚えておくことも重要である. \\[.2zh]
(6)も含めて瞬時に酸化剤と還元剤が何かまで予想でき,\ 念のために酸化数を確認する程度で済む. \\[1zh]
(1),\ (3),\ (5)は,\ 反応原理の理解があれば瞬時に酸化還元反応ではないと判断できる. \\[.2zh]
反応原理を見抜けない場合,\ すべての原子の酸化数を確認することになる. \\[1zh]
(1)\ \ 中和反応「酸\,+\,塩基\,\ce{->}\,塩\,+\,水」 \\[.4zh]
(3)\ \ 弱酸の遊離反応「弱酸の塩\,+\,強酸\,\ce{->}\,強酸の塩\,+\,弱酸」 \\[.4zh]
(5)\ \ 錯イオン形成反応「水酸化物\,+\,塩基\,\ce{->}\,錯イオン」\ \ (後に学習)
酸化還元反応式を示せ. \\[1zh]
\hspace{.5zw} (1)\ \ 銅を濃硝酸に溶かす. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (2)\ \ 硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液に硫酸鉄(I\hspace{-.1em}I)水溶液を加える. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (3)\ \ 二酸化硫黄の水溶液に硫化水素を通す. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (4)\ \ 臭素の水溶液に二酸化硫黄を通じる. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (5)\ \ ヨウ化カリウム水溶液にオゾンを通じる. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} (6)\ \ ヨウ素溶液にチオ硫酸ナトリウムを加える. \\
両辺に2個の\ce{K+}と13個の\ce{SO4^2-}を加えて \\[.2zh]
\phantom{ (1)}\ \ $\bm{\ce{K2Cr2O7 + 6FeSO4 + 7H2SO4 -> Cr2(SO4)3 + 3Fe2(SO4)3 + 7H2O + K2SO4}}$ \\\\ 特に次の化学反応式について,\ 長年にわたって\bm{大きな誤解}が蔓延している. \\[.5zh]
誤解}}\ \ \ce{MnO4^-}\,が酸化剤,\ \ce{H2O2}\,が還元剤として働くから,\ 酸化力の強さは\ \ce{MnO4^-}>\ce{H2O2}\ である. \\[1zh]
本来の酸化力の強さの指標となる標準電極電位[単位\text{V}]は\ \ce{H2O2}>\ce{MnO4^-}\ である. \\[.4zh]
ある反応でどの物質が酸化剤・還元剤として働くかは,\ 酸化力の強さだけで決まるわけではない. \\[.2zh]
\ce{MnO4^-}\,は最高酸化数の物質なので,\ これ以上酸化される(還元剤として働く)ことはない. \\[.2zh]
よって\maru1では,\ 酸化剤にも還元剤にもなりえる\ce{H2O2}\,が還元剤として働いた. \\[1zh]
結局,\ 酸化還元反応式からでは,\ 左辺にある2つの物質のどちらの酸化力が強いかはわからない. \\[.2zh]
\bm{酸化還元反応式からわかるのは,\ 左辺の物質と右辺の物質の酸化力の強さの比較}である. \\[.2zh]
\maru1において,\ 仮に右辺から左辺に反応が進むとすると,\ 酸化剤として働くのは\ce{O2}\,である. \\[.4zh]
実際には左辺から右辺に反応が進むことから,\ 酸化力の強さが\ \bm{\ce{MnO4^-}>\ce{O2}}\ であるといえる. \\[1zh]
\text{(a)}の反応式からわかるのは,\ 酸化力の強さ\ \ce{Cl2}>\ce{Br2}\ であって,\ \ce{Cl2}>\ce{Br-}ではない. \\[.4zh]
\text{(b)}の反応式からわかるのは,\ 酸化力の強さ\ \ce{H2O2}>\ce{Cl2}\ であって,\ \ce{H2O2}>\ce{Cl-}ではない.