電気分解の原理、電極で起こる反応の優先順位

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electrolysis
外部電源から電流を流して自然には起こらない方向に強制的に酸化還元反応}を起こす.}   電池とは逆に,\ 電気エネルギーが化学エネルギーに変換される. 電池の正極と接続した電極を陽極,\ 電池の負極と接続した電極を陰極}という. 電子が奪われる{陽極では酸化反応},\ 電子が流れ込む{陰極では還元反応}が起こることになる. 毎回各極が酸化か還元かをその場で判断するのは面倒で危険なので,\ 暗記が推奨される. 例えば,\ 「{正極は還元で他は全て逆}」とだけ覚えておけば済む. 電極で起こる反応の優先順位   電気分解に苦手意識をもつ学生が多いが,\ {優先順位を覚えるだけ}である. 覚えた優先順位を実際の問題でどのように使うかは下の問題で確認する. {酸素O₂,\ 水素H₂が発生する場合,\ 液性によって反応式が変わる}ことに注意する. 陽極・陰極共に酸性条件の反応式さえ覚えておけば塩基性条件の反応式は作成できる. 陽極 塩基性条件では発生した{H+}が{OH-}と中和してH₂Oになる.    よって,\ {2H₂O O₂ + 4H+ + 4e-}の両辺に{4OH-}を加えて{H+}を消去する.    ゆえに,\ {2H₂O + 4OH- O₂ + 4H₂O + 4e-} より {4OH- O₂ + 2H₂O + 4e-} 陰極 中性・塩基性条件では{H+}がほとんど存在しないのでH₂Oが還元される.    よって,\ {2H+ + 2e- H₂}の両辺に{2OH-}を加えて{H+}を消去する.    ゆえに,\ {2H₂O + 2e- H₂ + 2OH-} O₂やH₂が発生するということは,\ 結局は{水が電気分解されている}ことになる. このとき,\ {水溶液のpHが変動}する. 陽極で{H+}の増加や{OH-}の減少が起こるとpH}は下がる. 陰極で{H+}の減少や{OH-}の増加が起こるとpH}は上がる. また,\ e-}4molでO₂1molが発生(陽極),\ {e-}2molでH₂1molが発生(陰極)}する点は重要. 陽極でI}_2が発生すると,\ I}_2+I}^-{<=>}{I}_3}^-\ によって褐色の三ヨウ化物イオンとなる. 陰極では,\ {イオン化傾向が{Al}以上の金属が還元されて単体になることはない.} 水溶液中にイオン化傾向が中程度の{Zn²+}\ {Fe²+},\ {Ni²+}が含まれている場合はやや複雑である. 金属単体の析出と水素の発生が同時に起こり,\ どちらが優勢かは濃度や電圧の条件による. {Au},\ {Pt},\ {C}(黒鉛)は化学的に安定しているので電極に用いられる. ただし,\ {Cl₂}が発生する場合,\ {Pt}とは反応して電極が侵されるので,\ {C}電極を用いるほうがよい. また,\ O₂が発生する場合,\ {C}電極はCO₂に変化して侵されるので,\ {Pt}電極を用いるほうがよい. 次の水溶液を電気分解したときの陽極と陰極の反応式を書け.  {H₂SO₄}水溶液(陽極{Pt},\ 陰極{Pt}) \ {NaOH}水溶液(陽極{Pt},\ 陰極{Pt})  {NaCl}水溶液(陽極{C},\ 陰極{C})   {Na2SO₄}水溶液(陽極{Pt},\ 陰極{Pt})  CuSO₄水溶液(陽極{Cu},\ 陰極{Cu}) {AgNO₃}水溶液(陽極{Pt},\ 陰極{Pt})  {CuCl₂}水溶液(陽極{C},\ 陰極{C})  {K}I水溶液(陽極{Pt},\ 陰極{Pt}) 優先順位を暗記しておき,\ 陽極と陰極それぞれ{優先順位に従って順に判断していく.} {O₂やH₂が発生する場合は水溶液の液性も考慮する.} 正塩の水溶液の液性の判断が必要になるので,\ その方法をあらかじめ再確認しておいてほしい. 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中に{Cl-},\ {Br-},\ I}^-なし\ →\ {酸素O₂発生} 陰極 水溶液中に{Ag+}や{Cu²+}はない\ →\ {水素H₂発生} 硫酸水溶液は当然酸性なので,\ 陽極・陰極ともに{酸性条件}下の反応式を書く. 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中に{Cl-},\ {Br-},\ I}^-なし\ →\ {酸素O₂発生} 陰極 水溶液中に{Ag+}や{Cu²+}はない\ →\ {水素H₂発生} 水酸化ナトリウム水溶液は当然塩基性なので,\ 陽極・陰極ともに{塩基性条件}下の反応式を書く. 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中に{Cl-}があるのでCl₂}が発生} 陰極 水溶液中に{Ag+}や{Cu²+}はない\ →\ {水素H₂発生} NaCl}は強酸{HCl}と強塩基{NaOH}由来の正塩}なので水溶液は中性.\ {中性条件}下の反応式を書く. 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中に{Cl-},\ {Br-},\ I}^-なし\ →\ {酸素O₂発生} 陰極 水溶液中に{Ag+}や{Cu²+}はない\ →\ {水素H₂発生} Na2SO₄}は強酸{H₂SO₄}と強塩基{NaOH}由来の正塩}なので水溶液は中性.\ {中性条件}の式を書く. 陽極 電極は{Cu}なのでCu²+}となり電極が溶ける.} 陰極 水溶液中に{Cu²+}があるのでCu}の単体が析出する.} 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中に{Cl-},\ {Br-},\ I}^-なし\ →\ {酸素O₂発生} 陰極 水溶液中に{Ag+}があるのでAg}の単体が析出する.} AgNO₃}は強酸{HNO₃}と弱塩基{AgOH}由来の正塩}なので水溶液は酸性.\ {酸性条件}の式を書く. 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中に{Cl-}があるのでCl₂}が発生} 陰極 水溶液中に{Cu²+}があるのでCu}の単体が析出する.} CuCl₂}は強酸{HCl}と弱塩基Cu(OH)₂由来の正塩}なので水溶液は酸性.\ {酸性条件}の式を書く. 陽極 電極は{Ag}でも{Cu}でもない\ →\ 水溶液中にI}^-があるので{I_2発生} 陰極 水溶液中に{Ag+}や{Cu²+}はない\ →\ {水素H₂発生} K}Iは強酸{H}Iと強塩基{KOH}由来の正塩}なので水溶液は中性.\ {中性条件}の式を書く. 3大強酸(塩酸・硫酸・硝酸)に加え,\ {HCl}と同じハロゲン化水素のHBr}と{H}Iも強酸}である.