ある河川で採取した有機物のみを含む試料水の化学的酸素要求量(COD)を次の手順で測定した. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} [1]\ \ 0.10\,L\,の試料水を量り取り,\ 硫酸で酸性にした後,\ $4.0\times10^{-3}$\,mol/L\,の過マン \\
\hspace{.5zw}\phantom{ [1]}\ \ ガン酸カリウム水溶液を10\,mL\,加え,\ 沸騰水浴中で30分間加熱した. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} [2]\ \ 十分量のシュウ酸を混合し,\ 未反応の過マンガン酸イオンの色を完全に消した. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} [3]\ \ 残存しているシュウ酸を,\ [1]と同じ過マンガン酸カリウム水溶液を用いて \\
\hspace{.5zw}\phantom{ [1]}\ \ 滴定したところ,\ 終点までに4.52\,mL\,を要した. \\[.8zh]
\hspace{.5zw} [4]\ \ 続いて,\ 試料水の代わりに0.10\,L\,の純水を用いて[1]\,～\,[3]を同じ条件(シュウ酸 \\
\hspace{.5zw}\phantom{ [1]}\ \ の添加量も同じ)で繰り返したところ,\ 残存シュウ酸の滴定において0.52\,mL\, \\
\hspace{.5zw}\phantom{ [1]}\ \ の過マンガン酸カリウム水溶液を要した. \\[1zh]
\hspace{.5zw}(1)\ \ 試料水を海に近い河川から採取した場合,\ 最初に\ce{Ag2SO4}\,の粉末または\ce{AgNO3}\, \\[.2zh]
\hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ 水溶液を加えて十分に攪拌する必要があるのはなぜか. \\[.8zh]
\hspace{.5zw}(2)\ \ [2]で過マンガン酸カリウム水溶液を直接シュウ酸水溶液で滴定せず,\ [3]で余剰 \\[.2zh]
\hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ 分のシュウ酸水溶液を過マンガン酸カリウム水溶液で滴定しているのはなぜか. \\[.8zh]
\hspace{.5zw}(3)\ \ 試料水の化学的酸素要求量(COD)\,[mg/L]を求めよ. $\ce{O2}=32$ \\
化学的酸素要求量(COD)\ [mg/L]}} {\small (Chemical Oxygen Demand)試料水1\,L\,中に存在する有機物を酸化剤(通常は\ce{KMnO4}\ or\ \ce{K2Cr2O7})で酸化分解した \\[.2zh]
ときの酸化剤の消費量を,\ 酸素\ce{O2}\,を酸化剤として用いた場合に消費される酸素\ce{O2}\,の \\[.2zh]
質量[mg]に換算したもの.}}\ 水の汚染度の指標の1つ. \textbf{CODが大きいほど汚染度が高い.} \\\\\\
(1)\ \ \textbf{試料水中に多くの\ce{Cl-}が含まれており,\ これが還元剤として酸化剤と反応して} \\[.2zh]
\phantom{ (1)}\ \ \textbf{測定に誤差を与えないように\ce{AgCl}の沈殿にして除去する必要があるから.} \\\\
(2)\ \ \textbf{\ce{KMnO4}\,を\ce{H2C2O4}\,で滴定するときの色の変化(赤紫色\,→\,無色)に比べて,} \\[.4zh]
\phantom{ (1)}\ \ \textbf{\ce{H2C2O4}\,を\ce{KMnO4}\,で滴定するときの色の変化(無色\,→\,赤紫色)のほうが} \\[.4zh]
\phantom{ (1)}\ \ \textbf{終点を判別しやすいから.} \\\\\\
試料水中の有機物の酸化に要した\ce{KMnO4}\,水溶液の体積は
\phantom{ (1)}\ \ 試料水中の有機物の酸化に要した\ce{KMnO4}\,の物質量は
\phantom{ (1)}\ \ 試料水中の有機物の酸化に要する酸素\ce{O2}\,の物質量は
水中の汚染物質(有機物,\ \ce{NO2^-},\ \ce{S^2-},\ \ce{Fe^2+}\,など)は,\ 強力な酸化剤で酸化することができる. \\[.2zh]
よって,\ これらを酸化したときの酸化剤の消費量は水の汚染度の指標となる. \\[1zh]
%\text{COD}\,[\,\text{mg/L}\,]が大きいほど汚染度が大きい. \rei\ \ 綺麗な水(1未満),\ 雨水(1\,～\,2),\ 下水(10以上) \\[1zh]
(1)\ \ \ce{AgNO3}\,水溶液を加えた場合,\ \ce{NO3^-}は酸性条件で酸化剤\ce{HNO3}\,として働いてしまう可能性がある. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ よって,\ \ce{AgNO3}\,水溶液よりも\ce{Ag2SO4}\,の粉末を加えるほうが好ましい. \\[1zh]
(3)\ \ 実験の流れを確認する.\ まず,\ \bm{試料水に過剰の\ce{KMnO4}\,\text{\textbf{aq}}}\,を加える(\maru1,\ \maru2). \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ 汚染物質の酸化反応は鈍いため,\ これを\ce{KMnO4}\,\text{aq}\,で直接滴定するのは難しい. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ そこで,\ 過剰の\ce{KMnO4}\,を加えて時間をかけて加熱し,\ 完全に酸化させることになる. \\[1zh]
\phantom{(1)}\ \ 次に,\ \bm{残った\ce{KMnO4}\,に過剰の\ce{H2C2O4}\,を加えて還元して完全に脱色}する(\maru3). \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ さらに,\ \bm{残った\ce{H2C2O4}\,を\ce{KMnO4}\,で逆滴定}する(\maru4). \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ ここで,\ 汚染物質(本問では有機物)の酸化以外の原因で\ce{KMnO4}\,が消費される可能性がある. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ 仮に他の理由で消費されたなら,\ 汚染物質の酸化で消費された\ce{KMnO4}\,を正確に定量できない. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ そこで,\ \bm{全く同じ条件で行われた純水に対しての実験結果と比較}する. \\[.2zh]
\phantom{(1)}\ \ \bm{汚染物質のみの影響を調べるため,\ 汚染物質の有無のみが異なる2つの実験を行う}わけである. \\[.2zh]
\phantom{(1)}\ \ このような実験を\bm{ブランクテスト,\ 対照実験,\ 空(くう)試験}などという. \\[1zh]
\phantom{(1)}\ \ \bm{\underline{試料水中の有機物の酸化}で消費された\ce{KMnO4}\,の物質量を求める}のが第1段階である. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ \ce{KMnO4}\,は,\ 試料水の実験で合計14.52\,\text{mL},\ 対照実験で合計10.52\,\text{mL}\,消費された. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ \maru3=\maru3’\,なので,\ 差4.0\,\text{mL}\,が試料水中の有機物の酸化に使われた\ce{KMnO4}\,の体積である. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ \ce{H2C2O4}\,の物質量は不明でも,\,対照実験との比較により酸化に使われた\ce{KMnO4}\,の体積がわかる. \\[1zh]
\phantom{(1)}\ \ なお,\ 問題設定は複数あり,\ 対照実験を行わない設定の場合もある. \\[.2zh]
\phantom{(1)}\ \ この場合,\ 単に\maru1=\maru2+\maru4-\maru3により,\ 試料水の酸化に要した\ce{KMnO4}\,の物質量を求める. \\[.4zh]
\phantom{(1)}\ \ さらに,\ \bm{\maru2と\maru3の物質量が等しくなるようにあらかじめ準備}しておくと効率がよい. \\[.2zh]
\phantom{(1)}\ \ \maru1=\maru4が成り立ち,\ 直ちに試料水の酸化に要した\ce{KMnO4}\,の物質量がわかるからである. \\[1zh]
\phantom{(1)}\ \ \ce{KMnO4}\,の物質量を\ce{O2}\,の質量に換算する.\ \ まず,\ \ce{KMnO4}\,と\ce{O2}\,の半反応式が次である. \\[.5zh]
\phantom{(1)}\ \ \ce{KMnO4} \ce{MnO4^- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}\ (酸性条件) (\bm{5価}の酸化剤) \\[.5zh]
\phantom{(1)}\ \ \ce{O2} \ \,\ce{O2 + 4H+ + 4e- -> 2H2O} \ \phantom{( )} \hspace{1.2zw}(\bm{4価}の酸化剤) \\[.5zh]
\phantom{(1)}\ \ よって,\ \bm{\ce{O2}\,を使うとき,\ \ce{KMnO4}\,の\,\bunsuu54\,倍の物質量を要する.} \bunsuu{\ce{5}}{\ce{4}}\ce{O2 + 5H+ + 5e- ->}\bunsuu{\ce{5}}{\ce{2}}\ce{H2O} \\[.8zh]
\phantom{(1)}\ \ 後は質量\text{[mg]}に換算し,\ さらに1\,\text{L}\,あたりに換算する(実験は0.10\,\text{L}の試料水)
