標準電極電位と電池の起電力, ネルンストの式と濃淡電池

スポンサーリンク
fuel-cell
標準水素電極}} 1\,mol/Lの\ce{H+}の水溶液に白金電極を入れ,\ 25℃,\ $1.013\times10^5$\,Paの\ce{H2}\,を \\[.2zh]         吹きかけた電極.\ \textbf{標準水素電極の電位を基準の0\,V}と定める. 標準電極電位$\bm{E^0}$}} \\[.5zh]   \textbf{金属\ce{M}を電極としてその陽イオン$\bm{\ce{M^n+}}$の水溶液(1\,mol/L)に入れ, \\[.2zh]   標準水素電極と塩橋で接続したときに生じる電位差(起電力).} \\[1zh]   \textbf{\textcolor{red}{酸化剤の酸化力の指標.}}\ \ \textbf{\textcolor{red}{$\bm{E^0}$が高い金属ほど酸化力が強い.}} \\[.2zh]   逆に,\ \textbf{\textcolor{forestgreen}{$\bm{E^0}$が低い金属ほど酸化されやすい(イオン化傾向が大きい).}} \\[.2zh]   \textbf{金属を$\bm{E^0}$の低い順に並べたもの}が\textbf{\textcolor{blue}{金属のイオン化列}}である. \\電池の標準起電力$\bm{E^0}$}} 両極の電解液の濃度が1\,mol/Lのときの起電力. \\[.5zh] (電池の標準起電力)=(正極の標準電極電位)-(負極の標準電極電位)}}$} \\\\    \ \ 標準起電力$E^0$は 金属\ce{M}をその陽イオン\ce{M^n+}の水溶液に入れたものを\bm{半電池}という. \\[.2zh] 異なる半電池を2つ組み合わせると電池ができる(ダニエル型電池). \\[.2zh] 一方を標準水素電極にしたダニエル型電池の起電力が標準電極電位である. \\[1zh] \bm{塩橋} \ce{KCl}などの\dot{塩}の水溶液を寒天で固めて入れた管で,\ 両側の電解液を電気的に接続する. \\[.2zh]    両液に\dot{橋}を架けるように差し込むと,\ 負極側に\ce{Cl-},\ 正極側に\ce{K+}が移動し,\ 電気的中性を保つ. \\[1zh] \bm{(電位E^0\,が高い)=(\ce{e-}を引き寄せて電極が還元される)=(電極の酸化力\maru{大})=(イオン化傾向\maru{小})} \\[.2zh] \bm{(電位E^0\,が低い)=(\ce{e-}が奪われて電極が酸化される)=(電極の酸化力\maru{小})=(イオン化傾向\maru{大})} \\[1zh] 標準電極電位E^0\,の測定対象となる電極の反応は還元反応として表現する.   \ \ 単にE^0=-\,3.05\,\text Vと表すことも多い.\ 電池の標準起電力もE^0\,と表すため,\ 混同に注意する. \\[.2zh]  \ \ \text{\scalebox{.96}[1]{$\bm{E^0<0のとき,\ 逆反応(酸化反応)が自発的に進む.} \ce{Li}\,\ce{->[酸化]}\,\ce{Li+}\,+\,\ce{e-}\ \ (\ce{Li}はイオン化傾向最大)$}} \\[1zh] \bm{電池は,\ 標準電極電位E^0\,が高い金属側が正極になる(還元される).} \\[.2zh] \bm{電池の起電力は,\ 高電位の正極から低電位の負極の電極電位を引く決まりなので,\ 必ず正になる.} 自発的に進む酸化還元反応を選び,\ それを利用した電池の標準起電力$E^0$を求めよ. \\[.8zh] 標準電極電位より,\ イオン化傾向\ce{Zn}>\ce{Cd}>\ce{H2}>\ce{Ag}である. \\[.4zh] よって,\ \ce{Ag}よりイオン化傾向が大きい\ce{Cd}が陽イオンになる(\text b)の反応が自発的に進む. \\[1zh] \bm{標準電極電位の値は物質量によらず一定である.} \\[.2zh] よって,\ \ce{2Ag+}\,+\,\ce{2e-}\,\ce{->}\,\ce{2Ag}\,などと考えて+0.80\,\text Vを2倍したりする必要はない. 実際には,\ 電池の起電力は電解質の水溶液の濃度やpHによって変化する. \\[.2zh] \hspace{.5zw}各濃度における電池の起電力$E$の求め方として,\ 次のネルンストの式が知られている. \\[.5zh] \hspace{.5zw}$E=E^0-\bunsuu{0.059}{n}\log_{10}Q$\ \ $(E^0:標準起電力,\ \ n:反応した\ce{e-}の物質量,\ \ Q:反応商)$ \\[.8zh] \hspace{.5zw}反応商$Q$は平衡定数の式と同じ形式であり,\ 固体のモル濃度は1とする. \\\\ %\hspace{.5zw}異なる金属\ce{M1}\,(2価),\ \ce{M2}\,(1価)で構成される電池において,\ イオン反応式が$\ce{M1}\,+\ce{2M2^+}\,\ce{->[\ce{2e-}]}\,\ce{M1^2+}\,+\,\ce{2M2}$のとき \\ %\hspace{.5zw}$E=E^0-\bunsuu{0.059}{n}\log_{10}\bunsuu{[\ce{M1^2+}]}{[\ce{M2^+}]^2}$ $(n:反応した\ce{e-}の物質量,\ E^0:標準起電力)$ \\\\ 1)の(b)の電池の両極の電解液がともに0.50\,Lずつであるとする. \\[.2zh] \hspace{.5zw}\phantom{(1)}\ \ 放電が完了したときの電解液の濃度とそれまでに流れた電子の物質量を求めよ. 両極の電解液の濃度が等しくなったときの濃度 \phantom{ (1)}\ \ \textcolor{red}{1\,molの電子が流れたとき負極で1\,molの\ce{Ag+}が生じる}から,\ 流れた電子の物質量は 元々のネルンストの式は E=E^0-\bunsuu{RT}{nF}\log_e Q \\[.8zh] 問題で与えられている式は,\ 気体定数R=8.31\,\text{J/(mol・K)},\ 絶対温度T=298\,\text K\,(25℃), \\[.2zh] ファラデー定数F=9.65\times10^4\,\text{C/mol}を代入し,\,自然対数の底eを常用対数の底10に変換したもの. が平衡状態にあるときの平衡定数は 反応商Qは平衡定数Kと考えてよい.\ \ \ce{Cu}や\ce{Ag}は固体なので[\ce{Cu}]=[\ce{Ag}]=1で,\ 実質無視できる. \\\\ (1)\ \ (\text b)\ \ \bm{同じ物質であっても,\ 濃度が異なると電池になる}(\textcolor{blue}{\textbf{濃淡電池}}). \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \phantom{(\text b)}\ \ \bm{濃度が均等になる(エントロピーが大きくなる)方向に反応が自発的に進む}からである. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \phantom{(\text b)}\ \ \bm{濃度が小さい方が負極,\ 濃度が大きい方が正極になる.} \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \ \phantom{(\text b)}\ \  \begin{cases} 負極 \ce{Ag}_{負}\,\ce{->[酸化]}\,\ce{Ag+}_{\hspace{-.5zw}負}\,+\,\ce{e-} & (電極が溶解,\ 電解液の濃度増加) \\[.5zh] 正極 \ce{Ag+}_{\hspace{-.5zw}正}\,+\,\ce{e-}\,\ce{->[還元]}\,\ce{Ag}_{正} & (金属が析出,\ 電解液の濃度減少) \end{cases} \\\\ \phantom{(1)}\ \ \phantom{(\text b)}\ \ 濃淡電池は,\ 1\,\text V以上の起電力が要求される実用電池にはならない. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ \phantom{(\text b)}\ \ 細胞内外の濃度の違いによる電位差を利用して神経伝達を行うなど,\ 生命活動で利用される. \\[1zh] (2)\ \ \bm{濃淡電池は,\ 両極の電解液の濃度が等しくなると,\ それ以上電流が流れなくなる.} \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ このときの濃度は,\ 両極の合計物質量を両極の合計体積で割って求められる. \\[.2zh] \phantom{(1)}\ \ 本問の場合は両極の電解液の体積が等しいので,\ 結局正極の濃度と負極の濃度の平均値になる. \\[1zh] \phantom{(1)}\ \ \bm{流れた電子の物質量は,\ 放電前後の\ce{Ag+}の物質量の変化量に等しい.} \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \ 負極で考えると\ \ (流れた電子の物質量)=(放電\dot{後}の\ce{Ag+}_{\hspace{-.5zw}負}の物質量)-(放電\dot{前}の\ce{Ag+}_{\hspace{-.5zw}負}の物質量) \\[.5zh] \phantom{(1)}\ \ 正極で考えると\ \ (流れた電子の物質量)=(放電\dot{前}の\ce{Ag+}_{\hspace{-.5zw}正}の物質量)-(放電\dot{後}の\ce{Ag+}_{\hspace{-.5zw}正}の物質量)