
0.20 mol/L の硫酸鉄(II)水溶液15 mL と過不足なく反応する0.10 mol/L の硫酸酸性の二クロム酸カリウム水溶液は何 mL か.
酸化還元反応の量的関係
酸化剤が受け取る e⁻ の物質量 [mol] = 還元剤が放出する e⁻ の物質量 [mol]
特に, c [mol/L] の a 価の酸化剤 V (L) と c’ [mol/L] の b 価の還元剤 V’ (L) が反応したとき
a × c × V = b × c’ × V’
[ 解法1 ] 酸化剤と還元剤の価数を利用
二クロム酸カリウム水溶液の体積を V [mL] とする.
二クロム酸カリウムは 6 価の酸化剤, 硫酸鉄(II) は 1 価の還元剤である.
∴ 6 価 × 0.10 mol/L × V/1000 = 1 価 × 0.20 mol/L × 15/1000 より V = 5.0 mL
[ 解法2 ] 酸化還元反応式の係数を利用
1 K₂Cr₂O₇ + 6 FeSO₄ + 7 H₂SO₄ → Cr₂(SO₄)₃ + 3 Fe₂(SO₄)₃ + 7 H₂O + K₂SO₄
K₂Cr₂O₇ : FeSO₄ = 1 : 6 = 0.10 mol/L × V/1000 : 0.20 mol/L × 15/1000
∴ V = 5.0 mL
還元剤が放出した電子 e⁻ を酸化剤が受け取る反応が酸化還元反応である.
過不足なく反応するとき, 還元剤が放出した e⁻ の物質量と酸化剤が受け取る e⁻ の物質量が一致する.
この関係は酸化剤と還元剤の価数 a, b を用いて a c V = b c’ V’ と表せる(中和反応の量的関係と同じ式).
酸化剤の価数とは, 1 mol の酸化剤が何 mol の e⁻ を受け取るかを示すものである.
還元剤の価数とは, 1 mol の還元剤が何 mol の e⁻ を放出するかを示すものである.
二クロム酸カリウム K₂Cr₂O₇ (酸化剤) と 硫酸鉄(II) FeSO₄ (還元剤) の半反応式は
酸化剤 Cr₂O₇²⁻ (橙赤色) + 14 H⁺ + 6 e⁻ → 2 Cr³⁺ (緑色)
還元剤 Fe²⁺ → Fe³⁺ + e⁻
1 mol の Cr₂O₇²⁻ が 6 mol の e⁻ を受け取るから, K₂Cr₂O₇ は 6 価の酸化剤である.
1 mol の Fe²⁺ が 1 mol の e⁻ を放出するから, FeSO₄ (II) は 1 価の還元剤である.
実際には, 酸化剤・還元剤の価数を知りたいとき, いちいち半反応式を作る必要はない.
もともと, 半反応式における e⁻ の係数は, 反応前後の物質の酸化数の変化に等しい.
Cr⁺⁶₂O₇²⁻ → 2 Cr⁺³ より, Cr₂O₇²⁻ は 6 個の e⁻ を受け取るから 6 価の酸化剤とわかる.
Fe⁺² → Fe⁺³ より, Fe²⁺ は 1 個の e⁻ を放出するから 1 価の還元剤とわかる.
酸化還元反応の量的関係を考える場合, 大きく 2 通りの方法がある.
1 つは, 酸化剤・還元剤の価数を考慮し a c V = b c’ V’ を立式する方法である(解法1).
酸化還元反応式が問題で与えられていない場合は, 解法1 が手っ取り早く簡潔である.
問題によっては, 酸化還元反応式が与えられている場合がある.
この場合, 単純に (反応式の係数の比) = (酸化剤と還元剤の物質量の比) を立式すれば済む(解法2).
酸化還元反応式は, 以下のようにして作成できる.
① + ② × 6 より
Cr₂O₇²⁻ + 6 Fe²⁺ + 14 H⁺ → 2 Cr³⁺ + 6 Fe³⁺ + 7 H₂O
両辺に 2 個の K⁺ と 13 個の SO₄²⁻ を加えると酸化還元反応式が得られる.
