硫黄の同素体}}斜方硫黄} 黄色}}塊状結晶) & \textcolor{cyan}{単斜硫黄} 黄色}}針状結晶) & \textcolor{cyan}{ゴム状硫黄} (輪ゴム)S8}},\ 環状分子} & \ce{S}_x,\ 鎖状分子 \\ \hline
CS2
空気中で硫黄に点火すると,\ \bm{青い炎}を出して燃焼し,\ 二酸化硫黄が発生する. \ce{S + O2 -> SO2}
硫化水素\ \ \ce{H2S}}} (\ce{S}の酸化数 $-\,2$) \\[1zh]
\textbf{実験的製法} \textbf{\textcolor{cyan}{硫化鉄(I\hspace{-.1em}I)}}に\textbf{\textcolor{magenta}{希硫酸}}を加える. eS + H2SO4 -> FeSO4}+\textcolor{red}{\ce{H2S ^弱酸の遊離}) \\\\
\textbf{\textcolor{blue}{二酸化硫黄\ \ \ce{SO2}}} (\ce{S}の酸化数 $+\,4$) \\[1zh]
\textbf{実験室製法} \maru1\ \ $\bm{\textcolor{cyan}{\dot{亜}硫酸水素ナトリウム}}に\bm{\textcolor{magenta}{希硫酸}}を加える.$ \\[.2zh]
\ \ $\bm{\ce{NaHSO3 + H2SO4 -> NaHSO4 + H2O}+\textcolor{red}{\ce{SO2 ^}}}\ \ \text{(\textcolor[named]{ForestGreen}{弱酸の遊離})}$ \\[1zh]
\maru2\ \ $\bm{\textcolor{cyan}{銅}}に\bm{\textcolor{magenta}{濃硫酸}}を加えて\bm{\textcolor{orange}{加熱}}する.$ \\[.2zh]
\ \ $\bm{\ce{Cu + 2H2SO4 ->[][\textcolor{orange}{加熱}] CuSO4 + 2H2O}+\textcolor{red}{\ce{SO2 ^}}}\ \ \text{(\textcolor[named]{ForestGreen}{酸化還元反応})}$ \\[1zh]
\textbf{工業的製法} \textbf{\textcolor{cyan}{硫黄}}や\textbf{\textcolor{cyan}{黄鉄鉱}(主成分\ce{FeS2})}を\textbf{\textcolor{orange}{燃焼}}させる. \\[.2zh]
$\bm{\ce{S + O2 ->} \textcolor{red}{\ce{SO2}} \ce{4FeS2 + 11O2 -> 2Fe2O3 + 8}\textcolor{red}{\ce{SO2}}}$ \\\\[.5zh]
\textbf{\textcolor{blue}{\ce{H2S}と\ce{SO2}\,の共通性質}} \maru1\ \ \textbf{水に溶け, \textcolor{red}{弱酸性.}} \maru2\ \ \textbf{\textcolor{red}{還元性}}あり. \maru3\ \ \textbf{\textcolor{red}{有毒}}\textbf{\textcolor{cyan}{気体}}. \\\\
\textbf{\textcolor{blue}{\ce{H2S}と\ce{SO2}\,の相違性質}} \\[1zh]
\textbf{\textcolor{blue}{\ce{H2S}}} $\begin{cases}
\maru1\ \ \bm{\textcolor{red}{腐卵臭}} \\[.2zh]
\maru2\ \ 水溶液中の\textbf{\textcolor{magenta}{金属イオンを硫化物として沈殿}}. \ \rei\ \ \ce{Cu^2+ + S^2- -> CuS v}
刺激臭}} \\[.2zh]
\maru2\ \ 塩素の酸化力による漂白では傷む絹・羊毛を\bm{\textcolor{red}{還元力によって漂白}}する.
H2S}と\ce{SO2}\,の反応}} \textbf{\textcolor{cyan}{\ce{SO2}が酸化剤}}, \textbf{\textcolor{magenta}{\ce{H2S}が還元剤}}として酸化還元反応する.SO2 + 2H2S -> 3}\textcolor{red}{\ce{S}}+\ce{2H2O}$} (\textcolor[named]{ForestGreen}{酸化還元反応}) \\\\\\
\ce{H2S}の製法 \ce{FeS}に強酸を加えて弱酸\ce{H2S}を遊離させるわけだが,\ \bm{希硝酸は不適}である. \\[.4zh]
\phantom{\ce{H2S}の製法} \ 酸化力をもつ硝酸により,\ \ce{H2S}が酸化されて\ce{S}を遊離してしまう. \\[1zh]
\ce{H2S}も\ce{SO2}\,も弱酸性であるから,\ 強酸による弱酸の遊離反応によって容易に得ることができる. \\[.4zh]
亜硫酸\ce{H2SO3}\,は,\ 直ちに分解されることに注意する. \ce{H2SO3 -> H2O + SO2} \\[1zh]
(酸化剤) \ce{H2SO4 + 2H+ + 2e- -> SO2 + 2H2O} (還元剤) \ce{Cu -> Cu^2+ + 2e-} \\[.4zh]
2式を足すと \ce{Cu + H2SO4 + 2H+ -> Cu^2+ + SO2 + 2H2O} \\[.4zh]
\ce{H+}の由来は\ce{H2SO4}と考えられるから,\ 両辺に\ce{SO4^2-}を1個加えて完成する. \\[1zh]
黄鉄鉱の反応は,\ \ce{4Fe + 3O2 -> 2Fe2O3}\ と\ \ce{S + O2 -> SO2}\ が合体したと考えると作成できる. \\[.4zh]
この方法では不純物が含まれるので,\ 現在は使われていない. \\[1zh]
(酸化剤) \ce{SO2 + 4H+ + 4e- -> S + 2H2O} (還元剤) \ce{H2S -> 2H+ + S + 2e-} \\[.4zh]
後は,\ 還元剤の半反応式を2倍してから2式を足せば,\ 酸化還元反応式が得られる. \\[.2zh]
\ce{S}の酸化数は,\ \ce{SO2}\,(+\,4)\ →\ \ce{S}\,(0),\ \ \ce{H2S}\,(-\,2)\ →\ \ce{S}\,(0)\ となっている. \\\\
化石燃料の燃焼で生じる\ce{SO2},\ \ce{SO3}\,などの硫黄酸化物は,\ \bm{\ce{SO}x\,(ソックス)}と総称される. \\[.4zh]
大気汚染物質であることに加え,\ 雨水に溶けると硫酸に変化し,\ \bm{酸性雨}(\text{pH}5.6以下)の原因となる. \\[.2zh]
日本では,\ 石油中から硫黄分を除く脱硫生成により,\ 自動車の排ガス中の\ce{SO}xは減少した. \\[.2zh]
工場などから発生する\ce{SO}xは,\ 石灰石\ce{CaCO3}\,と反応させ,\ \ce{CaSO4}\,に変えて除去される.
工業的製法(\textcolor{red}{接触法})} \\[.5zh]
\maru1 \textbf{\ce{S + O2 -> SO2}} \\[.4zh]
\maru2 {\boldmath $\ce{2SO2 + O2 ->[\textcolor{Purple}{\ce{V2O5}}]} \ce{2SO3}$} \ce{SO2}を\textbf{\textcolor{Purple}{酸化バナジウム(V)(触媒)}}で\ce{SO3}とする. \\[.8zh]
\maru3 {\boldmath $\ce{SO3 + H2O ->}\textcolor{red}{\ce{H2SO4}}$} \ \textbf{\textcolor{cyan}{水を作用}}させる. \\[1zh]
\ce{SO3}\,に直接水を加えると,\ 激しい発熱が生じて危険である. \\[.2zh]
よって, 実際には,\ \textbf{\ce{SO3}\,を濃硫酸に吸収させて\textcolor{red}{発煙硫酸}としたのち,\ 希硫酸で薄める.} \\\\\\
\textbf{\textcolor{blue}{希硫酸の性質}} $\ \textbf{\textcolor{magenta}{強い酸性}}のみ.\ これに起因し,\ 次のような反応が起こる. \\[1zh]
\maru1\ \ \ce{Zn + H2SO4 -> ZnSO4 + H2 ^} \\[.2zh]
\ \ (\textcolor[named]{ForestGreen}{\ce{H}よりイオン化傾向の大きい金属を溶かす.\ イオン化傾向に起因する酸化還元反応}) \\[.6zh]
\maru2\ \ \ce{FeS + H2SO4 -> FeSO4 + H2S ^} 強酸による弱酸の遊離反応})$ \\\\\\
濃硫酸の性質}} (濃度90\%以上の硫酸) \\[1zh]
\maru1\ \ \textbf{\textcolor{red}{不揮発性酸}} \\[.2zh]
\ \ \rei\ \ \ce{NaCl + 濃 H2SO4 -> NaHSO4 + HCl ^} (\textcolor[named]{ForestGreen}{揮発性酸を遊離させる}) \\[.8zh]
\maru2\ \ \textbf{\textcolor{orange}{加熱}で\textcolor{red}{酸化作用}} \\[.2zh]
\ \ \rei\ \ \ce{Cu + 濃 2H2SO4 -> CuSO4 + 2H2O + SO2 ^} (\textcolor[named]{ForestGreen}{酸化還元反応を起こす}) \\[.8zh]
\maru3\ \ \textbf{\textcolor{magenta}{脱水性}} \rei\ \ \ce{C2H5OH ->[\ce{濃 H2SO4}] C2H4 + H2O} (\textcolor[named]{ForestGreen}{有機物から\ce{H2O}を引き抜く}) \\[.8zh]
\maru4\ \ \textbf{\textcolor{magenta}{吸湿性}} (\textcolor[named]{ForestGreen}{空気中の水分を吸収する}) \\[.8zh]
\maru5\ \ \textbf{\textcolor{magenta}{溶解熱が大きい.}} \ce{H2SO4 + aq -> H2SO4aq} 溶解エンタルピー$\Delta H=-\,95.3\text{kJ}$ \\[.8zh]
\maru6\ \ \textbf{粘性が高く, 密度が大きい.} \\\\
\textbf{\textcolor{blue}{濃硫酸の希釈}} \textbf{\textcolor{red}{\underline{水に濃硫酸}を少しずつ加えて希釈}}する.
希硫酸と濃硫酸は別物である.\ 希硫酸は単なる強酸だが,\ 濃硫酸になると様々な性質を示す. \\[.2zh]
理由の1つは,\ \bm{濃硫酸は分子同士が水素結合している}ことである. \ce{(HO)2SO2}\cdots\ce{(HO)2SO2} \\[.2zh]
粘性が高くなり,\ また蒸発しにくくなるため,\ 不揮発性となる. \\[.2zh]
また,\ \ce{H2O}分子とも水素結合できるため,\ 吸湿性を示す. \\[.4zh]
熱濃硫酸は,\ \ce{H}よりイオン化傾向が小さい\ce{Cu}や\ce{Ag}でも無理矢理電子を奪い取って酸化できる. \\[1zh]
\bm{\dot{希}硫酸が紙や木綿につくと,\ \ce{H2SO4}\,は不揮発性なので水分のみが蒸発し,\ 濃度が高まる.} \\[.2zh]
\bm{\dot{濃}硫酸となり,\ 紙や木綿の主成分\ce{(C6H10O5)}_n\,が脱水されて炭化し,\ 焦げたような穴が空く.} \\[1zh]
\bm{濃硫酸に水を加えると,\ 濃硫酸よりも密度の小さい水が濃硫酸の表面に浮く.} \\[.2zh]
さらに,\ \bm{多量の溶解熱で浮いた水が沸騰し,\ 硫酸とともに飛び散る危険がある.}
硫黄3.2\,kgを接触法で完全に硫酸にしたとすると,\ 98\%硫酸は何kg得られるか. \\
よって,\ 得られる\ce{H2SO4}は100 [mol] である.\ その質量は,\ \ $98\times100=9800$\ [g] \\
原子量を\ \ce{H}=1,\ \ce{S}=32,\ \ce{O}=16\ とすると,\ \ce{H2SO4}=98 \\[.4zh]
本問のポイントは2つある.\ 1つは,\ 1\text{mol}の\ce{S}から1\text{mol}の\ce{H2SO4}\,が得られることである. \\[.4zh]
\ce{S + O2 -> SO2}\ より,\ 1\text{mol}の\ce{S}から1\text{mol}の\ce{SO2}\,が得られる. \\[.4zh]
\ce{2SO2 + O2 -> 2SO3}\ より,\ 1\text{mol}の\ce{SO2}\,から1\text{mol}の\ce{SO3}\,が得られる.\ (\ce{SO2}:\ce{SO3}=2:2=1:1) \\[.4zh]
\ce{SO3 + H2O -> H2SO4}\ より,\ 1\text{mol}の\ce{SO3}\,から1\text{mol}の\ce{H2SO4}\,が得られる. \\[.4zh]
結局,\ 1\text{mol}の\ce{S}からは,\ 最大1\text{mol}の\ce{H2SO4}\,が得られるわけである. \\[1zh]
本問の最大のポイントは,\ そもそも\bm{硫酸が\,\ce{H2SO4}\ 分子と\ce{H2O}分子の混合物である}ところにある. \\[.4zh]
故に,\ 題意は\bm{「\ce{H2SO4}と\ce{H2O}の混合物(\ce{H2SO4}が98\%,\ \ce{H2O}が2\%)が何\,\textbf{kg}得られるか」}である. \\[.4zh]
\ce{S}の物質量(\text{mol})から\ce{H2SO4}\,の質量9800\,\text{g}が求まる. \\[.4zh]
これは,\ \bm{\ce{H2SO4}\,分子(98\%分)だけで9800\,\text{g}ある}ことを意味している. \\[.4zh]
硫酸の質量は,\ これに残り2\%を占める\ce{H2O}分子の質量を加えて100\%にしたものである. \\[.4zh]
98\%が9800\,\text{g}なのであり,\ \bm{決して9800\,\text{g}の98\%を求めるわけではない}ことに注意して欲しい. \\[.4zh]
結局,\ 98\,[\%]:9800\,[\text{g}]=100\,[\%]:x\,[\text{g}]\ を求めることになる.