気体の性質は、「各気体がどんな性質をもつか」をそれぞれ覚えるより、「同じ性質をもつ気体は何か」「なぜ同じ性質をもつのか」に着目して覚えるとよい。

気体の性質
[1] 気体の色と臭い
気体の色
O₃ 淡青色
Cl₂ 黄緑色
NO₂ 赤褐色
F₂ 淡黄色
気体の臭い
腐卵臭 H₂S
特有の臭い O₃
刺激臭 Cl₂, NO₂, SO₂, NH₃, HCl
[2] 気体の水溶性・水溶液の性質・捕集法
水に溶ける
塩基性・上方置換:NH₃
酸性・下方置換:HCl, NO₂, Cl₂, SO₂, H₂S, HF, CO₂(無臭)
水に溶けない(中性・水上置換):H₂, O₂, O₃, N₂, CO, NO, CH₄, C₂H₂, 貴ガス
NH₃は基本仲間はずれである。酸性・塩基性は、水に溶けて初めて示す。
酸性・塩基性の気体は基本的に有毒・有臭だが、CO₂のみ無毒・無臭である。
逆に、中性気体の中では、O₃が有毒・有臭、COが有毒である。
水は極性分子であるから、同じように極性をもつ分子は水に溶けやすい。
逆に、水に溶けない気体は、単体や無極性のものが多い。
また、C–H結合は疎水性であるから、炭化水素の気体は水に溶けにくい(有機化学)。
その他、二酸化化合物は水に溶けやすく、一酸化化合物は溶けにくいという傾向も見て取れる。
CO₂とCl₂は無極性だが、水に少し溶ける。
CO₂ + H₂O ⇄ H₂CO₃(炭酸)
Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO(次亜塩素酸)
原子量 N = 14, O = 16 とする。
空気(組成:窒素80%, 酸素20%)の平均分子量は、28×80/100 + 32×20/100 = 28.8 である。
水に溶け、空気(28.8)より分子量が軽い気体は上方置換、重い気体は下方置換で捕集する。
HFは分子量20だが、二量体 (HF)₂(40)や多量体として存在しているため、下方置換で捕集する。
[3] 気体の乾燥方法
酸性乾燥剤:P₄O₁₀(十酸化四リン), 濃硫酸(H₂SO₄) (塩基性気体には不適)
中性乾燥剤:シリカゲル, CaCl₂(塩化カルシウム) (NH₃だけには不適)
塩基性乾燥剤:生石灰 CaO, ソーダ石灰(CaO + NaOH) (酸性気体には不適)
酸性気体のH₂Sと濃硫酸の組み合わせも不適。
H₂Sは還元剤で、濃硫酸は酸化力をもつので、酸化還元反応してしまう。
H₂SO₄ + 3H₂S → 4S + 4H₂O
気体と乾燥剤は反応しない組み合わせで使用しなければならない。
CaCl₂とNH₃は反応してCaCl₂・8NH₃を作成してしまう。
半反応式:
酸化剤 H₂SO₄ + 6H⁺ + 6e⁻ → S + 4H₂O
還元剤 H₂S → S + 2H⁺ + 2e⁻
結局、H₂SO₄のS(+6)とH₂SのS(–2)から単体S(0)ができる。
[4] 気体の酸化性・還元性
酸化作用のある気体:F₂, Cl₂, O₂, O₃, NO₂
還元作用のある気体:NO, SO₂, H₂S, H₂(高温), CO(高温)
[5] 気体の検出方法(色や臭い以外)
H₂:試験管にとって点火すると、燃焼による爆鳴音が生じる。
2H₂ + O₂ → 2H₂O
O₂:線香の火を入れると、激しく炎を上げて燃える。
CO:完全燃焼し、青色の炎をあげる。
2CO + O₂ → 2CO₂
CO₂:石灰水(Ca(OH)₂水溶液)を白濁する。
Ca(OH)₂ + CO₂ → CaCO₃↓(白濁) + H₂O
(塩基 + 酸性酸化物 → 塩 + 水)
HCl, NH₃:近づけると白煙NH₄Clを生じる。
HCl + NH₃ → NH₄Cl(白煙) (中和反応)
NH₃:赤色リトマス紙を青変。溶液はネスラー試薬で赤褐色沈殿。
Cl₂, O₃:ヨウ化カリウムデンプン紙を青色にする。
まず、強い酸化力で 2I⁻ → I₂ + 2e⁻ が起こる。
さらに、生じたI₂のヨウ素デンプン反応で青色になる。
Cl₂:湿らせた青色リトマス紙が赤変後、脱色され白変する(漂白性・脱色性)。
まず、水に少し溶ける。Cl₂ + H₂O ⇄ HCl + HClO
HClがリトマス紙を赤変、HClOが強酸化作用でリトマス紙を漂白する。
O₃:酸化作用によるリトマス紙の漂白性・脱色性。
SO₂:還元作用によるリトマス紙の漂白性・脱色性。
NO:空気中のO₂と反応し、すぐに赤褐色のNO₂になる。
2NO(無色) + O₂ → 2NO₂(赤褐色)
H₂S:酢酸鉛試験紙を黒変する。
(CH₃COO)₂Pb + H₂S → PbS↓(黒沈) + 2CH₃COOH(沈殿生成反応)
H₂S, SO₂:水溶液が白濁する。
2H₂S + SO₂ → 3S↓(白濁) + 2H₂O(酸化還元反応)
この他、酸性の気体は青色リトマス紙を赤変させる。
