
水素(1族)
実験的製法
イオン化傾向が大きい金属に希酸を加える.
例 Zn + H₂SO₄ → ZnSO₄ + H₂↑
(イオン化傾向 Zn > H に起因する酸化還元反応 Zn + 2H⁺ → Zn²⁺ + H₂)
工業的製法
① 水の電気分解 2H₂O → 2H₂ + O₂
② 石油から得たナフサ(炭化水素)の熱分解で CO と H₂ が生じる.
③ コークス C と水蒸気からできる「水性ガス」から H₂ を分離する.
性質
① 最も密度が小さく, 最も軽い気体. 可燃性. 水に溶けにくい.
② 宇宙に最も多く存在し (H:71%, He:27%), 太陽質量の約70%が水素である.
③ 高温で還元作用を示す.
例 CuO + H₂ → Cu + H₂O
④ バーナーで水素と酸素を完全燃焼させると, 約3000℃の炎が得られる.
これを「酸水素炎」といい, 溶接などに利用される.
用途
① 燃料電池の負極活物質. 石油に代わるエネルギー資源として期待される.
② ロケット燃料(液体水素).
③ 塩化水素やアンモニアの合成.
H₂ + Cl₂ → 2HCl N₂ + 3H₂ → 2NH₃
④ 有機化合物の合成.
例 CO + 2H₂ → CH₃OH(メタノール)
第3周期の元素の水素化合物とその性質
族 1 2 13 14 15 16 17
水素化物 NaH MgH₂ AlH₃ SiH₄ PH₃ H₂S HCl
構造 イオン結晶 イオン結晶 イオン結晶 正四面体 三角錐 折れ線 直線
性質 強塩基 不溶(中性) 弱塩基 弱酸 強酸
実験的製法:Na や Ca を用いると反応が激しすぎるので, 通常 Zn を用いる.
工業的製法②:メタン CH₄ の場合
CH₄ + H₂O →(触媒 Ni)→ CO + 3H₂
工業的製法③:水性ガスとは CO と H₂ が 1:1 で混合した気体である.
C + H₂O → CO + H₂ のようにして得られる.
水素は, 陽性の強い金属とは水素化物イオン H⁻(酸化数 -1)としてイオン結合で結びつく.
一方, 非金属元素とは共有結合で結びつく.
NaH を「水素化ナトリウム」, SiH₄ を「シラン」, PH₃ を「ホスフィン」という.
NaH を水に溶かすと強塩基 NaOH が生じる.
NaH + H₂O → NaOH + H₂↑
