指数関数${y=a^x}$の微分公式を導くことを考えよう. もちろん,\ 導関数の定義$f'(x)=lim[h→0]{f(x+h)-f(x)}{h}$に基づいて導出する. $lim[h→0]{a^h-1}{h\ $に帰着するが,\ そのままだと$00$の不定形なので図形的に考える. .97}{$lim[h→0]{a^h-1}{h}=lim[h→0]{a^h-a^0}{h-0$とみると,\ 微分係数の定義$f'(a)=limb→ a}{f(b)-f(a)}{b-a}$の形である.} .97}{つまり,\ は$f(x)=a^x$のときの$f'(0)}$であり,\ これは$x=0$における微分係数(傾き)}である.} $f(x)=a^x$を図示すると左下図になるが,\ 困ったことに$a$の値によって$f'(0)$は変化する. 仕方がないので,\ $f'(0)$が一定値をとらないことを逆に利用しよう. $f'(0)$が一定値をとらないならば,\ 都合がよい値になるように$a$を定義してしまえばよい. の式を見て,\ 「$lim[h→0]{a^h-1}{h}=1\ $だったらいいのに$$}」と思えないだろうか. .97}{となるには,\ $h0$のとき${a^h-1}{h}=1a^h=1+ha=(1+h)^{1h}$であればよい.} 実は,\ ${lim[h→0](1+h)^{1h$は一定値${2.71828}$(無理数)に収束することが知られている. [-0.2zh] この極限値を${e$と定義し,\ 「自然対数の底」と呼ぶ.\ 当然,\ ${lim[h→0]{e^h-1}{h}=1$となる. 図形的には,\ $f(x)=e^x$の$x=0$における傾き$f'(0)$が1になる}ことを意味する(右下図). $lim[h→0](1+h)^{1h}$が収束することの証明は高校範囲を超えるので,\ 高校生は丸暗記である. [0zh] .97}{結局,\ ${e=lim[h→0](1+h)^{1h}$と定義すると${(e^x)’=e^x$となり,\ 完全無欠の微分公式が完成する.} 微分で変化しないならば積分でも変化しないということであり,\ その利便性は計り知れない. $(e^x)’=e^x$を元にして${(a^x)’}$の微分公式も導かれる. 以下,\ 対数では底の$e$を通常省略して表すことに注意する.\ つまり,\ $log x=log_ex$である. $a^x=e^{log a^x$より ${(a^x)’=(e^{log a^x})’=e^{log a^x}(log a^x)’=a^x(xlog a)’={a^xlog a$} 自然対数の底$e$の定義には,\ 同値な表現がいくつかある. ここまでで,\ $lim[h→0](1+h)^{1h}=e$と$lim[h→0]{e^h-1}{h}=1$が同じ意味合いをもつ. $h→1k$とすると$h→0$のとき$k→∞$である. よって,\ $lim[h→0](1+h)^{1h}=e$は,\ ${lim[k→∞](1+1k)^k=e$に書き換えることができる. こちらのほうを自然対数の底$e$の定義とすることも多い. さらに,\ ${lim[h→0]{log(1+h)}{h}=lim[h→0]log(1+h)^{1h}=log e={1$も導かれる. 対数関数${y=log_ax}$の微分公式を導くことを考えよう. ここで,\ $ hx=k$とおくと$h→0$のとき$k→0$であるから こうして,\ 対数関数の微分公式\ ${(log_ax)’={1}{xlog a}$が導かれる. 特に$a=e$のとき,\ ${(log x)’=1x$と簡潔になり,\ $e$の定義の合理性を再確認できる. さらに,\ ${y=log_a x$の微分公式を導くことを考える. $log_ax$の定義域は真数条件から$x>0$だが,\ $log_a x$の定義域は$x0$である. 先に,\ $log x$を$x>0$と$x<0$で場合分けして絶対値をはずして微分してみる. $ x>0のとき (log x)’=(log x)’=1x x<0のとき (log x)'={log(-x)}'={1}{-x}(-x)'=1x & (合成関数の微分}) $} 結局,\ 場合分けせずとも${(log x)'=1x$とまとめて表せることがわかる. これを元にして,\ $(log_a x)'$の微分公式も導かれる. ${(log_a x)'=({log_e x}{log_ea)'={1}{log_ea}1x=1}{xlog a}$} 以上が自然対数の底$e$の定義や指数関数・対数関数の導関数の重要事項の全てである. かなり長くなったが,\ 正直言ってここまでの話は知らなくても試験ではほぼ困らない. 高校生がやるべきことは,\ 以下を公式として丸暗記することである.\ $a>0,\ a1$とする. 自然対数の底$e$の定義 同値な表現 & $ {$e$の近似値 &{2.72}$ 指数関数の導関数 &f{対数関数の導関数 対数の定義\ a^p=Mp=log_aM\ より,\ {a^{log_aM}=M}\ が成り立つ(数II}). この関係式においてa→e,\ M→a^xとすると,\ e^{log_ea^x}=a^x\ となることがわかる(e^{log_ax}ではない). このようにして,\ {指数関数は,\ 底が何であっても底をeに変換することができる.} (e^{log a^x})’は,\ log a^x=uと考えると合成関数の微分であるから (e^u)’=e^u u’ log_a(1+k)^{1}{kx=log_a{(1+k)^{1k^{1x}=1xlog_a(1+k)^{1k} {対数関数は,\ 底が何であれ変換公式\ log_ab={log_cb}{log_ca}\ で底をeに変換できる}のは言うまでもない. 全ての指数関数と対数関数の底をeに変換できるからこそ,\ 底eの公式の存在価値が際立つのである.