どの陽イオンとどの陰イオンの組合せが沈殿するかは後に以下で学習する。

BaCl₂とH₂SO₄の反応を考えよう.
両者を混ぜると, 水溶液中にはBa²⁺, Cl⁻, H⁺, SO₄²⁻が混在することになる.
すると, 4種の化合物BaCl₂, BaSO₄, HCl, H₂SO₄が生成される可能性が考えられる.
このうち, BaSO₄のみイオン結晶が沈殿する.
沈殿することで, BaSO₄が反応系から除外されることになる.
すると, BaSO₄を増やそうとする方向に反応が進行する(ルシャトリエの原理).
よって, BaCl₂ + H₂SO₄ → 2HCl + BaSO₄↓ のような反応が起こることになる.
この反応の根幹は Ba²⁺ + SO₄²⁻ → BaSO₄↓ である.
陽イオン + 陰イオン → 沈殿↓
例
CuSO₄ + 2NaOH → Na₂SO₄ + Cu(OH)₂↓ (Cu²⁺ + 2OH⁻ → Cu(OH)₂↓)
Pb(NO₃)₂ + H₂S → 2HNO₃ + PbS↓ (Pb²⁺ + S²⁻ → PbS↓)
2AgNO₃ + 2NaOH → 2NaNO₃ + Ag₂O↓ + H₂O (2Ag⁺ + 2OH⁻ → Ag₂O↓ + H₂O)
沈殿生成反応は, 原理自体は非常にわかりやすい.
しかし, どの陽イオンとどの陰イオンの組合せが沈殿するかは暗記を要する.
これは, 「無機化学:金属元素(金属イオンの沈殿)」で学習するので, ここでは詳細を扱わない.
3例目は, 単純に考えるとAgOHが生成するはずである.
しかし, イオン化傾向の小さいAgやHgの水酸化物は不安定で, 酸化物と水に分解される(暗記).
2AgOH → Ag₂O + H₂O, Hg(OH)₂ → HgO + H₂O (酸化物 + 水 → 水酸化物の逆反応).

