酸化数の決め方、酸化還元反応、酸化剤と還元剤

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酸化数の決め方 単体中の原子 0とする. 例 H₂のHやAl原子などは全て0. 単原子イオン イオンの価数に等しい. 例 Na⁺ (+1), S²⁻ (−2) 化合物中の原子 H:+1, O:−2とし, 合計が0となるよう定める. 例 H₂SO₄のSの酸化数 (+1)×2 + x + (−2)×4 = 0 → x = +6 例外 水素化合物のHの酸化数は−1 例 NaHのHの酸化数は−1 例外 H₂O₂のOの酸化数は−1 多原子イオン H:+1, O:−2とし, 合計がイオンの価数となるよう定める. 例 NH₄⁺のNの酸化数 x + (+1)×4 = +1 → x = −3 酸化還元反応 電子e⁻の授受が起こる反応. 酸化と還元は必ず同時に起こる. 酸化剤と還元剤 酸化剤 電子を奪い, 相手を酸化する. 自身は還元される. 還元剤 電子を与え, 相手を還元する. 自身は酸化される. 酸化剤と反応前後の物質(酸化数) 酸化剤 反応前後 酸化数変化 過マンガン酸イオン(酸性) MnO₄⁻ → Mn²⁺ +7 → +2 過マンガン酸イオン(中性・塩基性) MnO₄⁻ → MnO₂ +7 → +4 二クロム酸イオン Cr₂O₇²⁻ → 2Cr³⁺ +6 → +3 濃硝酸 HNO₃ → NO₂ +5 → +4 希硝酸 HNO₃ → NO +5 → +2 熱濃硫酸 H₂SO₄ → SO₂ +6 → +4 塩素 Cl₂ → 2Cl⁻ 0 → −1 過酸化水素 H₂O₂ → 2H₂O −1 → −2 二酸化硫黄 SO₂ → S +4 → 0 酸素 O₂ → 2H₂O 0 → −2 オゾン O₃ → H₂O + O₂ 0 → −2 還元剤と反応前後の物質(酸化数) 還元剤 反応前後 酸化数変化 水素 H₂ → 2H⁺ 0 → +1 硫化水素 H₂S → S −2 → 0 過酸化水素 H₂O₂ → O₂ −1 → 0 二酸化硫黄 SO₂ → SO₄²⁻ +4 → +6 シュウ酸 (COOH)₂ → 2CO₂ +3 → +4 ヨウ化物イオン 2I⁻ → I₂ −1 → 0 鉄(II)イオン Fe²⁺ → Fe³⁺ +2 → +3 スズ(II)イオン Sn²⁺ → Sn⁴⁺ +2 → +4 チオ硫酸イオン 2S₂O₃²⁻ → S₄O₆²⁻ 特殊 酸化剤と還元剤は, 反応前後の物質を丸暗記しておく必要がある. この知識を元に, 以下に示す手順で酸化還元反応式を作成することになる. 言い換えると, 反応前後の物質さえ暗記しておけば, 酸化還元反応式は作ることができる. H₂O₂は原則酸化剤だが, 強力な酸化力を持つMnO₄⁻やCr₂O₇²⁻が相手の場合は還元剤となる. SO₂は原則還元剤だが, 強力な還元力を持つH₂Sが相手の場合は酸化剤となる. 過マンガン酸カリウムの硫酸酸性溶液と過酸化水素水の酸化還元反応式の作成 [1] 半反応式の作成 (電子e⁻を含む反応式) MnO₄⁻ → Mn²⁺ (酸化剤) H₂OでOの数を合わせる → MnO₄⁻ → Mn²⁺ + 4H₂O H⁺でHの数を合わせる → MnO₄⁻ + 8H⁺ → Mn²⁺ + 4H₂O e⁻で総電荷を合わせる → MnO₄⁻ + 8H⁺ + 5e⁻ → Mn²⁺ + 4H₂O H₂O₂ → O₂ (還元剤) H₂OでOの数を合わせる → H₂O₂ → O₂ H⁺でHの数を合わせる → H₂O₂ → O₂ + 2H⁺ e⁻で総電荷を合わせる → H₂O₂ → O₂ + 2H⁺ + 2e⁻ [2] イオン反応式の作成 酸化剤と還元剤の半反応式から電子を消去する. 2MnO₄⁻ + 16H⁺ + 10e⁻ → 2Mn²⁺ + 8H₂O 5H₂O₂ → 5O₂ + 10H⁺ + 10e⁻ ―――――――――――――――――――― 2MnO₄⁻ + 5H₂O₂ + 6H⁺ → 2Mn²⁺ + 8H₂O + 5O₂ [3] 酸化還元反応式の作成 イオンが余らないように, 反応に関係しないイオンを加える. 両辺にK⁺とSO₄²⁻を加えると 2KMnO₄ + 5H₂O₂ + 3H₂SO₄ → 2MnSO₄ + 8H₂O + 5O₂ + K₂SO₄ KMnO₄のH₂SO₄水溶液とH₂O₂の酸化還元反応式を作成する. 強力な酸化力を持つMnO₄⁻が酸化剤となり, H₂O₂が還元剤となる. それ以外のイオンK⁺, H⁺, SO₄²⁻は, とりあえず無視する. 最初の半反応式の作成が最も厄介で, 酸化剤・還元剤ともに4段階を踏んで作成する. 両辺のOの数, Hの数, 総電荷を順に合わせていくことで, 半反応式が完成する. 結果, 電子を受け取る酸化剤は左辺に, 電子を与える還元剤は右辺にe⁻がくる. また, 半反応式の電子e⁻の数は, 両辺の酸化数の差に等しくなる. 実際, MnO₄⁻(+7) → Mn²⁺(+2)における酸化数の差5が, 5e⁻と対応している. 酸化剤と還元剤の半反応式を作成後, 電子を消去してイオン反応式を作成する. 単純に, 連立方程式を解くようにe⁻を消去すればよい. 直接反応に関与しないイオンK⁺, SO₄²⁻を両辺に加えてイオンをなくせば, 酸化還元反応式となる. まず, 左辺のMnO₄⁻, H⁺に着目してK⁺とSO₄²⁻を加え, 左辺からイオンをなくす. つまり, 2個のK⁺と3個のSO₄²⁻を左辺に加え, 2KMnO₄, 3H₂SO₄とする. この反応のH⁺はH₂SO₄由来のものであるから, H⁺にSO₄²⁻を組合せたわけである. 硫酸酸性条件がなければ, 水に由来するH⁺と考え, OH⁻を組み合わせることになる. 次に, 同数のイオンを右辺にも加える必要がある. まず, 2Mn²⁺には陰イオンSO₄²⁻を2個組み合わせればよい. 後は残った2個のK⁺と1個のSO₄²⁻を組んでK₂SO₄にすると, 酸化還元反応式が完成する. 特殊な酸化還元反応の例 いわゆる酸化 例 S + O₂ → SO₂ 例 CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O (有機化学) いわゆる還元 例 SiO₂ + 2C → Si + 2CO 例 Fe₂O₃ + 3CO → 2Fe + 3CO₂ 金属単体の反応(イオン化傾向) 例 Zn + CuSO₄ → ZnSO₄ + Cu ハロゲン単体の反応 例 H₂ + F₂ → 2HF 例 2KBr + Cl₂ → Br₂ + 2KCl 自己酸化還元反応 例 NH₄NO₂ →(加熱) 2H₂O + N₂ とにかく反応前後で酸化数が変化する反応はすべて酸化還元反応である. ただし, すべての酸化還元反応をいちいち半反応式から作る必要があるわけではない. 以上のような特殊なものは, 直接的に化学反応式を作成すればよい. 酸化物ができるいわゆる酸化や, 逆に酸化物から単体を得るいわゆる還元も酸化還元反応である. イオン化傾向 Zn > Cu に起因して起こる Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu も酸化還元反応である. ハロゲン単体の酸化力 F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂ に起因する反応も酸化還元反応である. (酸化力が強い) = (自身は還元されやすい)より, 2Br⁻ + Cl₂ → Br₂ + 2Cl⁻ が起こる. 同一物質が酸化剤にも還元剤にもなる反応を自己酸化還元反応という. 例は, NH₄⁺中のN(−3)からNO₂⁻中のN(+3)に3e⁻が受け渡されてN₂(0)となるものである. 自己酸化還元反応は種類も少ないので, 基本的には出てくるたびに丸暗記することになる.

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