遷移元素(周期表3~12族)の一般的性質

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周期表の\textbf{\textcolor{magenta}{3族\,~\,12族}}に属する元素を\textbf{\textcolor{blue}{遷移元素}}といい,\ \textbf{\textcolor{Purple}{すべて金属}}である. \\[1zh]  \maru2\ \ 最外殻電子数が1個または2個で,\ \textbf{\textcolor{magenta}{周期表で隣り合う元素と性質が似ている}}ことが多い. \\[.8zh]  \maru3\ \ 典型元素の金属に比べて,\ \textbf{\textcolor{red}{単体は融点が高く, 硬く, 密度が大きい}.} \\[.2zh]   \ \ \textbf{融点最大はタングステン\ce{W}}\ (約3400℃). \\[.8zh]  \maru4\ \ \textbf{\textcolor{red}{複数の酸化数}}をとる元素が多い(高い酸化数の原子を持つ物質は酸化剤になる). \\[.8zh]  \maru5\ \ \textbf{\textcolor{red}{イオンや化合物が有色}}であるものが多い(水溶液中の典型元素のイオンは全て無色). \\[.8zh]  \maru6\ \ 単体や化合物には,\ \textbf{\textcolor{red}{触媒}}として働くものが多い(\ce{Pt},\ \ce{V2O5},\ \ce{MnO2}など). \\[.8zh]  \maru7\ \ \textbf{\textcolor{Purple}{\ce{Fe},\ \ce{Co},\ \ce{Ni}}}のように,\ 単体や化合物に\textbf{\textcolor{red}{強磁性}}をもつ(磁石につく)ものがある. \\[.8zh]  \maru8\ \ 様々な配位子と安定した\textbf{\textcolor{red}{錯イオン}}を作りやすい. \\[.8zh] %(不完全な内殻が非共有電子対をもつ分子やイオンと配位結合して希ガスの電子配置). \\\\  \maru9\ \ \textbf{\textcolor{red}{合金}}をつくりやすい. \\\\[.5zh] 12族\ce{Zn},\ \ce{Cd},\ \ce{Hg}\,は性質が典型元素に近く,\ 遷移元素に含めない場合がある(以前の高校化学). \\[1zh] \maru3\ \ 周期表の下の元素ほど融点が高く,\ 密度が大きい.\ ほとんどが重金属である. \\[.2zh]  \ \ 一般には「密度が4\,~\,5\,\text{g/cm}^3以下の金属が軽金属」とされ,\,軽金属と重金属の厳密な区別はない. \\[.2zh]  \ \ 明らかに軽金属なのはスカンジウム\ce{Sc}\,(2.99\,\text{g/cm}^3)のみである. \\[.2zh]  \ \ イットリウム\ce{Y}\,(4.47\,\text{g/cm}^3)とチタン\ce{Ti}\,(4.51\,\text{g/cm}^3)はどちらにも分類されうる. \\[1zh] \maru4\ \ \rei\ \ \ce{Mn}は+2,\ +\,4,\ +\,6,\ +\,7をとるが,\ +\,7の\ce{KMnO4}\,は強力な酸化剤である. \\[1zh] \maru9\ \ 2種類以上の金属を混合・融解し,\ 凝固させたものを\bm{合金}という. \\[.2zh]  \ \ 単体の金属とは異なる実用上優れた特性をもった金属材料となる. \\[1zh] さて,\ 発展的な内容になるが,\ 多くの高校生がもつことになる2点の疑問に答えておく. \\[.2zh] 「なぜ,\ 18個の電子が入る\text{M}殻が満たされていないのに,\ \,_{19}\ce{K}からは\text{N}殻に電子が配置される?」 \\[.2zh] 「なぜ,\ 遷移元素は典型元素と異なる性質をもつ?」 \\[1zh] 電子殻は,\ エネルギー準位が低い順に\text{K,\ L,\ M,\ N},\ \cdots 殻(主量子数n=1,\ 2,\ 3,\ 4,\ \cdots)と呼ばれる. \\[.2zh] \bm{それぞれの電子殻には,\ 最大で2n^2\,個の電子が収容できる.} \\[.2zh] つまり,\ \text{K殻には2個,\ L殻には8個,\ M殻には18個,\ N殻には32個}の電子が収容できる. \\[.2zh] 第3周期18族の\,_{18}\ce{Ar}\,までは,\ エネルギー準位の低い内側の\text{K}殻から順に満たされていく(納得). \\[.2zh] しかし,\ 次の\,_{19}\ce{K}の電子配置は,\ \text{K(2),\ L(8),\ M(9)}\ ではなく,\ \text{K(2),\ L(8),\ M(8),\ N(1)}\ となる(疑問). \\[1zh] 実は,\ \bm{各電子殻は,\ さらに細かく以下のような電子軌道に分かれている}(括弧内は最大電子数). \\主量子数4,\ 合計電子数32個) 電子がないとき,\ 同じ電子殻の電子軌道のエネルギー準位はすべて等しい(\,\text s=\text p=\text d=\text f\,). \\[.2zh] しかし,\ 電子が入るとその相互作用によってエネルギー準位が変化し,\ \text s<\text p<\text d<\text fとなる. \\[.2zh] 結果,\ 電子殻のエネルギーの大小関係が逆転し となる. \\[.4zh] つまり,\,電子が入るとき,\,\text N殻の\text{4s}軌道は\text{M殻の3d}軌道よりもエネルギー準位が低くなるのである. \\[.2zh] よって,\ \text{N}殻の\text{4s}軌道が先に満たされ,\ その後で\text{M}殻の\text{3d}軌道に電子が配置されていく. \\[.5zh] ※\ オクテット(最外殻電子8個)の状態で安定(貴ガス) \\[.2zh]   ※\ 3\text d^94\text s^2\,とみなすと内殻が閉殻ではない \\[.2zh] \ 内殻が閉殻 3\text dと4\text sはエネルギー差が小さく,\ また,\ 3\text dは半閉殻(5個)または閉殻(10個)の状態が安定する. \\[.2zh] よって,\ \,_{24}\ce{Cr}と\,_{29}\ce{Cu}では4\text s軌道から3\text d軌道に1個の電子が移動する. \\[1zh] 遷移元素の定義が「内殻の電子殻に電子が満たされていく元素」なので,\ 3\,~\,12族が遷移元素となる. \\[.2zh] 一方で,\,_{30}\ce{Zn}の内殻は閉殻なので,\ 性質が典型元素に近い. \\[.2zh] これが12族を遷移元素に含めるか否かがゆらぐ理由である. \\[1zh] 遷移元素特有の性質は,\ \bm{内殻に電子の空きがある(安定できていない)}ことに起因する. \\[.2zh] 最外殻電子数は常に1個または2個なので,\ 隣り合う元素と似た性質を示す. \\[.2zh] 内殻電子の一部も自由電子となりうるため,\ 典型金属元素よりも金属結合が強くなる. \\[.2zh] その他,\ 内殻電子の影響により,\ 複数の酸化数を示したり,\ 色づいたり,\ 錯イオンを形成したりする