芳香族化合物の構造決定問題演習

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structure-determination
分子式{C8H10}で表される芳香族炭化水素A,\ B,\ C,\ Dがある.\ それぞれを過マンガン酸 カリウムのアルカリ水溶液で酸化すると,\ それぞれE,\ F,\ G,\ Hとなった. EはF,\ G,\ Hに比べて炭素数が1つ少なかった.\ Fは熱すると容易に脱水された. Gはペットボトルの原料であった.\ A,\ B,\ C,\ Dの構造式を示せ. まず{不飽和度}を確認する.\ 8個の{C}に対する{H}の最大数は28+2=18である. 実際は{H}が10個で,\ 最大数よりも8個少ないから,\ 不飽和度は82=4である. ここで,\ 問題に「{芳香族}」とあるから,\ A~D}は{ベンゼン環(不飽和度4)}を有する. よって,\ ベンゼン環以外は不飽和度0で,\ 二重結合や環をもたないとわかる. 後は{H}を無視して考えればよく,\ ベンゼン環以外の2個の{C}を置換基としてつけることになる. 1個ずつつけるときは{3種類の位置異性体}がある点に注意して{全て書き出す}と,\ 全部で4種類ある. よって,\ A~D}はこの4種類の化合物のどれかである.\ 後は条件から1つずつ特定していけばよい. {ベンゼン環に直結した炭化水素基は,\ {C}の数によらず酸化すると{COOH}基となる}のであった. とりあえず{4種類すべてについて酸化後の化合物を書き出す.}\ これらがE~H}のどれかである. この4つの中で,\ いちばん右の{安息香酸}だけが他の化合物に比べて炭素数が1個少ない. よって,\ 安息香酸がE}であり,\ 酸化して安息香酸となる{エチルベンゼン}がA}である. 加熱すると脱水されて{無水フタル酸}となるのは,\ {オルト位のフタル酸}である. よって,\ F}はフタル酸(オルト位)であり,\ 酸化してフタル酸となる{o–}キシレン}がB}である. ペットボトルの原料(ポリエチレンテレフタラート)となるのは,\ {テレフタル酸(パラ位)}である. よって,\ D}がテレフタル酸であり,\ 酸化してテレフタル酸となる{p–}キシレンがCである. 残った{イソフタル酸(メタ位)}が自動的にH}と決まり,\ すなわち{m–}キシレン}がD}となる. 分子式{C7H8O}で表される芳香族化合物A~Eがある. A,\ B,\ Cは水酸化ナトリウム水 溶液を加えると溶けたが,\ D,\ Eは溶けなかった.\ Aを過マンガン酸カリウムのアルカ リ水溶液で酸化すると,\ アセチル化したときに解熱鎮痛作用がある物質が生じた. 2個の置換基をもつBのベンゼン環の水素原子1個をさらに塩素原子で置換すると, 2種類の異性体が生じた.\ A~Eの中で沸点が最も低いのはDであった. A~Eの構造式を示せ. まず{不飽和度}を確認する.\ このとき,\ O}は無視}してよい. 7個の{C}に対する{H}の最大数は\ 27+2=16\ であり,\ 実際はこれよりも8個少ない. よって,\ 不飽和度は4である.\ ベンゼン環の不飽和度が4なので,\ それ以外に二重結合や環はない. 結局,\ ベンゼン環に1個の{C}と1個の{O}を置換基としてつけることになる. 1個の{C}と1個の{O}を別の置換基としてつけるとき,\ {3個の位置異性体}ができる. これらは,\ {OH}基がベンゼン環に直結することになるから,\ {フェノール類}である. 1個の{C}と1個の{O}を1つの置換基としてつけるとき,\ 2通りの置換基が考えられる. {- C-O}とすると{アルコール},\ {- O-C}とすると{エーテル}となる. 以上の{5種類の異性体を最初にすべて書き出し},\ 与えられた条件から1つずつ特定していく. 左からクレゾール(o,\ m,\ p),\ ベンジルアルコール,\ アニソール(メチルフェニルエーテル)である. 「{NaOH}(塩基)に溶解」→「{酸性化合物}」→「A,\ B,\ C}は{フェノール類}(左3つのどれか)」 解熱鎮痛作用があるのは{アセチルサリチル酸}(アスピリン)である. アセチル化によってアセチルサリチル酸となるのは{サリチル酸}であり,\ これは{オルト位}である. 「酸化してサリチル酸(オルト位)」→「A}はオルト位の{o–}クレゾール}」 {CH₃}基,\ {OH}基に加えて,\ さらに{Cl}基をつけるときの異性体の数をA,\ B,\ C}について考える. A}はすでにオルト位であることが特定済みだが,\ 確認のために全て考えた. 左と真ん中のように,\ {CH₃}基と{OH}基が{オルト位とメタ位のとき,\ {Cl}基のつけ方は4通り}ある. {パラ位の場合のみ,\ {Cl}基のつけ方は2通り}しかなく,\ これがB}である. 残ったメタ位の{m–}クレゾール}がC}である. \ 「沸点が最も低い」→「{分子間で水素結合しない}」→「OH}基をもたない}」→「D}は{エーテル}」 残ったベンジルアルコールが自動的にE}と決まる.