両性金属(Al、Zn、Sn、Pb)とその化合物、アルミニウムの製法

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両性金属(Al, Zn, Sn, Pb)の単体・酸化物・水酸化物の基本的反応 ① ゴロ合わせ「あ(Al)あ(Zn)すん(Sn)なり(Pb)と両性に愛される♥」 13族のAlと14族のSn, Pbは典型金属元素だが, 12族のZnは遷移元素である. ② AlとZnの単体・酸化物・水酸化物はいずれも, 酸とも塩基とも反応する. 単体の場合に限り, 酸・塩基と反応するとH₂が発生する. ───────────────────────────── 単体+酸 2Al + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂↑ (酸化還元反応) 単体+塩基 2Al + 2NaOH + 6H₂O → 2Na[Al(OH)₄] + 3H₂↑ 酸化物+酸 Al₂O₃ + 6HCl → 2AlCl₃ + 3H₂O (中和) 酸化物+塩基 Al₂O₃ + 2NaOH + 3H₂O → 2Na[Al(OH)₄] 水酸化物+酸 Al(OH)₃ + 3HCl → AlCl₃ + 3H₂O (中和) 水酸化物+塩基 Al(OH)₃ + NaOH → Na[Al(OH)₄] (錯イオン形成反応) ───────────────────────────── 単体・酸化物・水酸化物いずれも HClと反応して 塩 AlCl₃ NaOHと反応して 塩 テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウム Na[Al(OH)₄] ───────────────────────────── 単体+酸 Zn + 2HCl → ZnCl₂ + H₂↑ (酸化還元反応) 単体+塩基 Zn + 2NaOH + 2H₂O → Na₂[Zn(OH)₄] + H₂↑ 酸化物+酸 ZnO + 2HCl → ZnCl₂ + H₂O (中和) 酸化物+塩基 ZnO + 2NaOH + H₂O → Na₂[Zn(OH)₄] 水酸化物+酸 Zn(OH)₂ + 2HCl → ZnCl₂ + 2H₂O (中和) 水酸化物+塩基 Zn(OH)₂ + 2NaOH → Na₂[Zn(OH)₄] (錯イオン形成反応) ───────────────────────────── 単体・酸化物・水酸化物いずれも HClと反応して 塩 ZnCl₂ NaOHと反応して 塩 テトラヒドロキシド亜鉛(II)酸ナトリウム Na₂[Zn(OH)₄] ───────────────────────────── 12族は性質が典型元素に近いため, 遷移元素に含めない場合がある(以前の高校化学). 現在の教科書ではZnは遷移金属の項で扱われているが, 当サイトでは両性金属のくくりで扱う. (単体+酸) 根幹は 2Al + 6H⁺ → 2Al³⁺ + 3H₂ (イオン化傾向Al > Hに起因する酸化還元反応) (酸化物+酸) 両性酸化物+酸 → 塩+水 (中和) (水酸化物+酸) 両性水酸化物+酸 → 塩+水 (中和) 塩基との反応は, 水酸化物との錯イオン形成反応 Al(OH)₃ + OH⁻ → [Al(OH)₄]⁻ を基準にする. 単体と酸化物は, 一旦水と反応して水酸化物となった後に錯イオンを形成すると考える. 2Al + 6H₂O → 2Al(OH)₃ + 3H₂ (水を酸と考えて, 単体+酸) Al(OH)₃ + OH⁻ → [Al(OH)₄]⁻ ×2 (錯イオン形成反応) 2Al + 2OH⁻ + 6H₂O → 2[Al(OH)₄]⁻ + 3H₂ Al₂O₃ + 3H₂O → 2Al(OH)₃ (酸化物+水 → 水酸化物) Al(OH)₃ + OH⁻ → [Al(OH)₄]⁻ ×2 (錯イオン形成反応) Al₂O₃ + 2OH⁻ + 3H₂O → 2[Al(OH)₄]⁻ 反応式が重要なのはAlとZnである. SnとPbは単純ではなく, 出題の可能性は低い. 万一Sn, Pbの反応式が問われた場合, Znの反応式のZnをそのままSn, Pbに置き換えればよい. 例 Sn + 2HCl → SnCl₂ + H₂↑ ただし, Pbは不溶性の塩PbCl₂, PbSO₄に表面が覆われるため, HCl, H₂SO₄とは反応しない. 硝酸HNO₃とならば, Pb + 2HNO₃ → Pb(NO₃)₂ + H₂↑ となる. ───────────────────────────── アルミニウムAl単体の反応性 ① 高温の水蒸気と反応して, 水素を発生する.  2Al + 6H₂O → 2Al(OH)₃ + 3H₂↑ (水を酸と考えて, 単体+酸) ② 空気中では表面に緻密な酸化物Al₂O₃の被膜ができる(不動態). 人工的に酸化被膜をつけて強度と外観を向上させた製品をアルマイトという. ③ 基本的に酸に溶けるが, 濃硝酸には不動態となり溶けない. 濃硝酸で不動態となる金属ゴロ合わせ 硝酸翔さんのFe手にAlあるCr黒いCoコーラ ④ 強い光とともに激しく燃焼する(金属中最大の燃焼熱).  Al + ¾O₂ → ½Al₂O₃ ΔH = −837 kJ ⑤ Al粉末と酸化鉄(III)の混合物(テルミット)に点火すると, 融解した鉄が得られる. 反応熱により得られる3000℃の高温が溶接に利用される.  2Al + Fe₂O₃ → Al₂O₃ + 2Fe ΔH = −852 kJ (テルミット反応) 酸化しやすい(相手を還元しやすい)Alにより, 金属の酸化物を還元して単体を得る. ───────────────────────────── アルミニウムAl単体の製法 ボーキサイト NaOH H₂O 強熱 アルミナ 溶融塩電解 Al₂O₃·nH₂O → Na[Al(OH)₄] → Al(OH)₃ → Al₂O₃ → Al バイヤー法(ボーキサイト Al₂O₃·nH₂O → アルミナ Al₂O₃) ① ボーキサイトにNaOH水溶液を加えて加熱溶解させる.  Al₂O₃ + 2NaOH + 3H₂O → 2Na[Al(OH)₄] ② テトラヒドロキシドアルミン酸ナトリウムNa[Al(OH)₄]を加水分解する.  Na[Al(OH)₄] → Al(OH)₃↓ + NaOH (錯イオン形成反応の逆) ③ Al(OH)₃を強熱(1200℃)してアルミナAl₂O₃を得る.  2Al(OH)₃ → Al₂O₃ + 3H₂O (酸化物+水 → 水酸化物の逆) ホール・エルー法(アルミナAl₂O₃ → 単体Al) アルミナAl₂O₃に, 融点を下げるための氷晶石Na₃AlF₆を加え, 溶融塩電解する. 陽極:C + 2O²⁻ → CO₂ + 4e⁻(炭素電極が消費され, 小さくなる) 陰極:Al³⁺ + 3e⁻ → Al(Alが析出) イオン化傾向の大きい金属(Li, K, Ca, Na, Mg, Al)は, 溶融塩電解で単体を得る. 溶融塩電解:水を加えずに塩そのものを直接電気分解する. ───────────────────────────── 両性金属とその化合物の性質と用途 ① 地殻中の元素の存在比(質量%)が大きい順 地殻近くでO押しSiしAl合ってFeかNaな ② Al単体 銀白色の柔らかい軽金属で, 電気・熱伝導性が高い.  展性・延性があり, 加工しやすい. アルミ箔やアルミ缶などに利用.  ボーキサイトから単体を得るときの3%のエネルギーでリサイクル可能. ③ Zn単体 銀白色の柔らかい重金属.  閃亜鉛鉱ZnSからZnOを作り, これをCで還元して得られる.  ZnO + C →(高温) Zn + CO ④ ZnO 亜鉛華とも呼ばれる白色粉末で, 医薬品や白色顔料として利用される. ⑤ Zn(OH)₂ 過剰のアンモニア水に溶け, 無色水溶液となる.  Zn(OH)₂ + 4NH₃ → [Zn(NH₃)₄]²⁺ + 2OH⁻ ⑥ Sn単体 銀白色の柔らかい重金属. スズ石SnO₂をCで還元して得られる. ⑦ Pb単体 青灰色の柔らかい重金属. 主に鉛蓄電池の負極やX線の遮蔽剤として利用.  方鉛鉱PbSからPbOを作り, これをCで還元して得られる.  不溶性の塩PbCl₂, PbSO₄に表面が覆われるため, 塩酸・硫酸には不溶.  耐食性がよく加工しやすいが, 毒性があるので利用は減少傾向にある. ⑧ Pbの酸化物 PbO(黄色):黄色顔料 PbO₂(褐色):鉛蓄電池の正極 Pb₃O₄(赤色):赤色顔料 ⑨ 鉱物 ルビー(赤色):アルミナAl₂O₃にクロムCrを含有した鉱物. サファイア(青色):アルミナAl₂O₃に鉄FeとチタンTiを含有した鉱物. ⑩ ミョウバン(AlK(SO₄)₂·12H₂O)(硫酸アルミニウムカリウム十二水和物)  2つの塩Al₂(SO₄)₃とK₂SO₄から成る正八面体結晶(複塩). 水溶液は弱酸性を示す. ⑪ 酸化性・還元性 スズは酸化数+4が安定 SnCl₂(II)は還元性あり. SnCl₂(+2) → SnCl₄(+4) 鉛は酸化数+2が安定 PbO₂(IV)は酸化性あり. PbO₂(+4) → Pb²⁺(+2) ⑫ 合金 ジュラルミン:アルミニウムAlと銅Cuの合金. 軽くて強い. 飛行機の機体. 無鉛はんだ:スズSnと銀Agと銅Cuの合金. 融点が低い. 金属の接合. ⑬ トタン:鉄板Feに亜鉛Znをめっきしたもの. トタン屋根. ブリキ:鉄板FeにスズSnをめっきしたもの. 缶詰, おもちゃ. Znが先に腐食し, その間Feを守る. 傷がつくと, Feが先に侵されさびる. ───────────────────────────── 金属の電気・熱伝導性比較 Ag > Cu > Au > Al Al₂(SO₄)₃は, 強酸H₂SO₄と弱塩基Al(OH)₃からできる正塩であるから, 水溶液は酸性を示す. また, K₂SO₄は, 強酸H₂SO₄と強塩基KOHからできる正塩であるから, 水溶液は中性を示す. 総合すると, ミョウバンの水溶液は弱酸性を示すことになる. 以前はスズSnと鉛Pbの合金だったが, 有害な鉛を含まない無鉛はんだへの移行が進んでいる. 一般に, イオン化傾向が小さい金属ほど水や空気に対して安定しており, 腐食しにくい. よって, 鉄Feにはよりイオン化傾向が小さいスズSnでめっきすることが有効である. しかし, 一旦傷がついてしまうと意味がなくなる. イオン化傾向の小さいSnよりも先にイオン化傾向の大きいFeが腐食してしまうからである. 一方, Znめっきは, 傷がつくと先にイオン化傾向の大きいZnが腐食し, その間Feを守る. よって, ブリキは缶詰の内壁のように傷が付きにくいところで使用される. 逆に, トタンは屋根のように傷が付きやすく, 水に濡れやすいところで使われる.
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