nがkとk+1のときを仮定する数学的帰納法

スポンサーリンク

2つの仮定を要する数学的帰納法である。出題頻度が高いわけではないが、出題された場合には経験がないと解けないだろう。理解したうえで問題ごとパターンとして覚えておこう。

前1つを仮定する普通の数学的帰納法を「昨日法」と考え、前2つを仮定するこの数学的帰納法を、「おととい帰納法」と呼ぶ人もいる。

$a,\ bを正の整数とする.\ 2次方程式\ x²-ax+b=0\ の2つの実数解をα,\ βとするとき,$ $すべての自然数nについて,\ α^n+β^n\ が整数となることを示せ.$ ${kとk+1を仮定する数学的帰納法}$ $解と係数の関係より=1}\ のとき α^1+β^1=a}$α²+β²=(α+β)²-2αβ=a²-2b}$ { $$}$よって,\ n=1,\ 2\ のとき,\ α^n+β^n\ は整数である.$ $n=k,\ k+1}\ のとき,\ α^k+β^k,\ α^{k+1}+β^{k+1}\ が整数である}と仮定する.$ { $$}$n=k+2}\ のとき,\ α^{k+2}+β^{k+2}\ が整数となることを示す.}$ { $$}$  α^{k+2}+β^{k+2}=(α^{k+1}+β^{k+1})(α+β)-αβ(α^k+β^k)}$ { $$}${  α^{k+2}+β^{k+2=(α^{k+1}+β^{k+1)a-b(α^k+β^k})$ { $$}$  仮定\ α^k+β^k,\ α^{k+1}+β^{k+1}\ が整数}より,\ α^{k+2}+β^{k+2}は整数}である.$ { $$}$  よって,\ n=k+2\ のときもα^n+β^nは整数である.}$ ${,\ より,\ すべての自然数nについてα^n+β^nは整数である.}$ 普通の数学的帰納法で示そうとすると,\ {α^{k+1}+β^{k+1}\ を\ α^k+β^k\ で表す}必要が生じる. 例として,\ α⁵+β⁵\ を\ α⁴+β⁴\ で表すことを考える. このような対称式の変形では,\ α+β\ と組み合わせ,\ 余計なものを引くと考えるのであった. つまり,\ α⁵+β⁵=(α⁴+β⁴)(α+β)-αβ(α³+β³)\ と表せる. これを一般化すると α^{k+1}+β^{k+1}=(α^k+β^k)(α+β)-αβ(α^{k-1}+β^{k-1}) ここまででで,\ {α^{k+1}+β^{k+1}を表すには,\ α^k+β^kだけでなくα^{k-1}+β^{k-1}も必要}だとわかる. つまり,\ {1つ前だけではなく,\ 2つ前も必要}なのである. よって,\ {直前2つを仮定する数学的帰納法を適用}することになる. k-1とkを仮定するとk-11,\ つまりk2とする必要があり面倒である. 結局,\ 以下の型の数学的帰納法を利用する. }{P,\ Pが成立することを示す.} }{P(k),\ P(k+1)が成立することを仮定し,\ P(k+2)が成立することを示す.} 前のドミノ2つ分の重みがなければ倒せないドミノというわけである. n=1,\ 2\ のときは,\ 解と係数の関係を用いて整数であることが示される. ax²+bx+c=0\ の2解を\ α,\ β\ とするとき {α+β=- ba,αβ= ca} n=k+2のときは,\ {α^{k+2}+β^{k+2}=(α^{k+1}+β^{k+1})(α+β)-αβ(α^k+β^k)}\ を利用する. この等式は暗記しておくことが推奨される. 本問において試しに\ a=1,\ b=-1\ とすると,\ 2解は x={15}{2} すべての自然数nについて({1+5}{2})^n+({1-5}{2})^n\ が整数であると示されたのである. $x=t+1t,P_n=t^n+{1}{t^n}(n=1,\ 2,\ 3,\ )\ とおくとき,\ P_n\ はxのn次式になる$ ことを示せ.                            \ [香川大] $「P_nはxのn次式である」をとする.$ $n=1}\ のとき P₁=t+1t=x}$ { $$}$n=2}\ のとき P₂=t²+{1}{t²}=(t+1t)²-2=x²-2}$ { $$}$よって,\ n=1,\ 2\ のとき,\ は成立する.$ $n=k,\ k+1}\ のとき$ { $$}$  の成立を仮定}する.$ { $$}$  このとき,\ P_kはxのk次式,P_{k+1}はxの(k+1)次式である.}$ { $$}$n=k+2}\ のとき,\ P_{k+2}がxの(k+2)次式となることを示す.} { $$}$  仮定\ P_{k+1}はxの(k+1)次式}より,\ P_{k+1}xはxの(k+2)次式}である.$ { $$}$  また,\ P_kはxのk次式}であるから,\ x^{k+2}の項が消えることはない.}$ { $$}$  よって,\ n=k+2\ のときもは成立する.}$ ${,\ より,\ すべての自然数nに対しては成立する.}$} 先の問題とほぼ同じ要領で証明できる. α=t,\ β=1t\ とすると,\ {t^{k+2}+{1}{t^{k+2\ をt^{k+1}+{1}{t^{k+1\ と\ t^k+{1}{t^k}\ で表せる.} 後は次数について成立していることを示せばよい. {多項式の次数について議論するとき,\ 最高次の項が消えてしまわないかを確認する}必要がある. 例えば,\ P(x)とQ(x)がn次式だからといって,\ P(x)+Q(x)もn次式であるとは限らない. 実際,\ P(x)=x^n+x,\ Q(x)=-x^nならば,\ P(x)+Q(x)=x\ (1次式)である. 本問ではP_{k+1}xが(k+2)次式,\ P_kがk次式であるから,\ P_{k+1}x-P_kは確実に(k+2)次式である.