
酸化物と水の反応
酸化物の分類
非金属の酸化物 酸性酸化物 例 NO₂, CO₂, SO₃, SO₂
金属の酸化物 塩基性酸化物 例 Na₂O, K₂O, CaO, BaO
両性金属の酸化物 両性酸化物 例 Al₂O₃, ZnO, SnO, PbO
塩基性酸化物+水 → 水酸化物
例 Na₂O+H₂O → 2NaOH
例 CaO+H₂O → Ca(OH)₂
酸性酸化物+水 → オキソ酸
酸性酸化物 | 中心元素の酸化数が同じオキソ酸 | 名称 | 中心元素の酸化数
CO₂ | H₂CO₃ | 炭酸 | C +4
SiO₂ | H₂SiO₃ | ケイ酸 | Si +4
NO₂ | HNO₃(※例外) | 硝酸 | N +4 → +5
P₄O₁₀ | H₃PO₄ | リン酸 | P +5
SO₂ | H₂SO₃ | 亜硫酸 | S +4
SO₃ | H₂SO₄ | 硫酸 | S +6
Cl₂O₇ | HClO₄ | 過塩素酸 | Cl +7
CrO₃ | H₂CrO₄ | クロム酸 | Cr +6
Mn₂O₇ | HMnO₄ | 過マンガン酸 | Mn +7
例 SO₃+H₂O → H₂SO₄
例 P₄O₁₀+6H₂O → 4H₃PO₄
例 3NO₂+H₂O → 2HNO₃+NO(温水)
例 2NO₂+H₂O → HNO₃+HNO₂(冷水)
COとNOは非金属の酸化物だが, 例外的に中性酸化物であり, 水と反応しない.
両性金属Al, Zn, Sn, Pbの酸化物も水と反応しない.
遷移金属元素のCr, Mnなどは, 酸化物が酸化数によって酸性・塩基性・両性のいずれにもなりうる.
高酸化数酸化物は酸性酸化物(CrO₃ +6, Mn₂O₇ +7).
低酸化数酸化物は塩基性酸化物(CrO +2, MnO +2).
中酸化数酸化物は両性酸化物(Cr₂O₃ +3, MnO₂ +4).
塩基性酸化物と水の反応の根幹は, イオン反応式 O²⁻ + H₂O → 2OH⁻ である.
O²⁻がH₂OからH⁺を1つ奪い取り, 互いに中間のOH⁻となって安定すると考えられる.
ただし, 常温の水と反応するのは, Be, Mgを除くアルカリ土類金属とアルカリ金属の酸化物に限る.
アルカリ金属以外の水酸化物は, 加熱で逆反応が起こる(熱分解).
例 Ca(OH)₂ →(加熱)CaO+H₂O
もし酸性酸化物も塩基性酸化物と同様の規則だと仮定すると, SO₃+H₂O → SO₂(OH)₂ となる.
SO₂(OH)₂ は見慣れない化学式だが, 元素の順序を変えると硫酸H₂SO₄に他ならない.
結局, 酸性酸化物+水により, 中心元素の酸化数が同じオキソ酸(分子中に酸素を含む酸)ができる.
例えば, SO₃(Sの酸化数+6)に水を加えると, H₂SO₄(Sの酸化数+6)が生成する.
酸化数が変化していないので酸化還元反応ではないことに注意(NO₂は例外).
いずれにせよ, 酸性酸化物に対応するオキソ酸は暗記しておく必要がある.
また, 水酸化物はイオン結合であるが, 非金属元素からなるオキソ酸は共有結合である.
H₂CO₃とH₂SO₃は不安定な物質で, 容易に分解される.
CO₂+H₂O ⇄ H₂CO₃
SO₂+H₂O ⇄ H₂SO₃
形式的に SiO₂+H₂O → H₂SiO₃ とも表すが, 共有結合結晶のSiO₂は直接水と反応しない.
一旦塩基と共に加熱融解してNa₂SiO₃とし, 弱酸の遊離でH₂SiO₃を得る(詳細は無機化学:ケイ素).
NO₂(Nの酸化数+4)には対応する酸化数+4のオキソ酸が存在しない.
よって, HNO₃(+5)が生じるとき, 同時にNO(+2)やHNO₂(+3)も生じる(自己酸化還元反応).
亜硝酸HNO₂は不安定な酸で温度が上がるとHNO₃になるため, 指定がなければ温水の反応式を書く.
問い BaOに水を加えると?
BaOは金属の酸化物なので塩基性酸化物であり, 水と反応すると水酸化物が生じるはずである.
よって BaO+H₂O → Ba(OH)₂
問い Cl₂O₇に水を加えると?
Cl₂O₇は非金属の酸化物なので酸性酸化物であり, 水と反応するとオキソ酸が生じるはずである.
Cl₂O₇に対応するオキソ酸はHClO₄であるから, Cl₂O₇+H₂O → 2HClO₄
