始めに
数学の記述試験で点を取る上で採点基準を知っておくことが重要である。採点基準次第でどのような答案を書くべきかが変わってくるからである。
多くの学生が「部分点はどれくらいもらえるのか」「どこまで細かく記述すべきか」「高校範囲外の知識を使うと減点されるか」などを気にしている。自分も気になるので、可能な範囲で調査しわかったことをまとめる。
ただし、最初に断っておくと、わかったことは「採点基準に関して絶対的に言えることはない」ということだけであった。
以下では採点基準に関する要点を列挙していくが、すべての大学のすべての試験で同様であるとは決して思わないでほしい。
採点の流れと部分点を稼ぎやすい答案の書き方~書籍から~
まず、大学入試における数学の採点の流れや答案の記述の仕方ついて、いくつかの書籍からなるほどと思った部分を抜粋してみる。
繰り返しになるが、すべての大学のすべての試験で同様である保証は全くない。そういう場合もある、そういう方法も考えられるという1つの参考に過ぎないので、誤解しないようにしてほしい。
採点の流れ
- 大問ごとに採点基準を協議し、決定する。
- 考えられる解答例を挙げておく。予想外の解答は採点官同士で協議する。
- 採点官が各自で採点し、採点に間違いがないか数人でダブルチェック、トリプルチェックをする。
部分点を稼ぎやすい答案の書き方
- 実験は問題用紙ではなく、解答用紙の隅で行いできるだけ残しておく。
- 途中でミスに気付いた場合、消しゴムで消すのではなく、斜線や×をして残しておく。
- 複数の解法で迷った場合、並列して書いておく。
- 数式だけでなく、出来る限り日本語で説明をしておく。
- 時間内に計算が終わりそうにない場合、答えまでの流れを日本語で記述しておく。
- (1)が証明問題で、(2)がその結果を利用する問題の場合、(1)が出来ていなくても(1)の結果を用いて(2)を記述しておく。
- 高校範囲外の知識でも正しく使えているなら大きな減点はされない。
- 同値記号「⇔」はできる限り使わない。
(理由:大学では特に同値性を明確にしたい場合にのみ使用する記号であり、この記号があると採点官の評価が厳しくなりがちである。さらには、同値でないのに同値記号を使ってしまう人が多く、この場合は最悪。)
リスクを避け、普通に式を並べておけばよい。
例:x²-x=0 x(x-1)=0 よって x=0, 1
参考文献
過去の入試の大学別採点基準~大学入試懇談会報告他から~
大学入試懇談会では、毎年各大学の先生が、自大学の前年度入試の結果(各問題の受験生の出来や採点基準)を講評している。その中の話から採点基準や答案の書き方につながりそうな部分を掲載する。
以下は、過去のある年の採点基準がたまたま結果としてそうなったというだけで、毎年必ずこの基準で採点することにしているという大学としての採点基準を示したものでは決してない。間違っても、「○○大学ではこういう採点基準なのか~」などと受け取らないように。
また、以下はかなり古い情報なので参考程度に。
東京大学
- 計算力を問う問題、数学的センスを必要とする問題、工夫を必要とする問題、様々な解法がある問題のバランスを配慮している。
- 学習指導要綱に沿っていて、高校の基本的な学習内容の理解と習熟があれば解ける問題の出題を心掛けている。
- 良問であれば、有名問題でも過去問でも繰り返し出題する可能性がある。過去同様の出題があるかは確認しない。
- 数学で差が出るようにして、数学が出来ないのに合格できる可能性を排除する。
- 難問・奇問は避け、潜在的な力を見る。
- 現在の合格ラインには不満がある。
- 採点官による主観の違いが出ないよう、複数人で相談し、常に最大限の注意を払いながら採点している。
- なるべく1つのパターンにはまらない問題を出題したい。すると、本当にさまざまな答案が出るので、採点基準は、他の受験生との比較や全体の印象や問題の趣旨やその他あらゆることに依存して変わってくる。
- 単純に増減表を書いて最大・最小を求めるようなものは出題しない。複雑な条件が絡み、何故最大なのか説明が必要なものは、それがなければ答えがあっていてもかなりの減点になる。
- 最終的な答えとは関係のない部分での計算ミスなども含めて、答案に書いてあるものはすべて目を通し、間違いがあれば減点する。
- 字が薄かったり小さい答案は、細心の注意を払って採点しても見落とす可能性がある。読めないものは、書いてないものと判断する。
- 受験生には、「論理性」と「計算力」を求める。
- 論理を重視し、時間をかけて厳密に採点する。紙に書いてあるものだけで判断する。
- 論証は、日本語できちんと説明して欲しい。論証重視の問題では、式を羅列しただけでは、ほとんど点にならない。
- 論証問題は厳しく採点する基本方針だが、あまり厳しくすると軒並み0点になるので、高校生が限られた時間内で解いていることを配慮して採点する。
- 「a=b」のように式だけを書くのではなく、きちんと日本語で説明をしてほしい。「a=bと仮定した」のか「a=bを代入した」のか「a=bが導かれた」のか。
- 小問がついていることもあるが、最後の問題を解いて欲しい。
- 途中の推論が正しければ、最終的な答えに至らなくても部分点を与える。
- 直感で解いて記述が不足していても、方向性があっていれば部分点を与える。
- 符号を2回間違えて正しい結果に戻ったというような場合も、全ての途中過程をチェックしているが、減点するかは場合による。
- 論理的記述力を見る問題では、答えのみ羅列しても得点は低い。
- 出てきた答えが常識的に正しいかをもっと意識して欲しい。面積が負になっていたり、確率が1より大きくなっていたりするような答案は、できればマイナス点をつけてやりたい。
- 最後の答えがあっているだけで完答できたと考えている受験生が多いが、たいてい満点ではない。
- 予備校の模試の採点は、本番に比べると極めていい加減である。実際は、論理力・表現力を重視して採点しているので、単純にここまでで何点というものではない。
- 立体問題や整数問題は、高校の授業で軽視されているが今後も出題する。
- 面積・体積など答えさえ求まればよい問題では、高校範囲外の知識を用いても問題はない。しかし、使用条件などをチェックせずにいい加減に使っているものがほとんどで、その場合は減点する。
- ロピタルの定理を用いてもよいが、極限値の存在証明を行う必要がある。そもそも、大学の知識で簡単に解けてしまう問題は、出題しないように注意している。
- 「高校範囲外の知識を用いてもよいか」「分母は有理化すべきか」「関数の連続性を断るべきか」など、一律の基準はなく、そのときに拠る。
- 合同式はいきなり使うのではなく、定義を書いてから使ってもらいたい。
- 最大・最小問題において、そのときのxの値は要求されていない限り答える必要はない。
- 文系が分数関数の微分を用いて解答しても問題はない。
京都大学
- 易問から難問までバランスよく出題したい。難問は解けるか解けないか、易問はどう解答するかが問われる。易しい問題でも、小問に分かれていなければ受験生の論理力を試すことが出来る。
- 思考を要する問題だけでなく、ある程度パターン問題も出題し学力を測る。
- 基本的に小問はつけない。部分点を稼ぐより1問の完答を期待する。
- 京大は解法が複数ある問題を好むという印象を持っている人が多いが、様々な解答があると採点が大変になるので特別に意図しているわけではない。
- 教科書の発展にしか書かれていないレベルの内容でも出題する。
- 公表している出題範囲からはすべて出題する。何年か分をまとめてみると全範囲から出題している。
- 問題作成者は毎年全員を入れ替える。
- 傾向がなくなるように工夫して問題を作る。
- 通常の学習の延長線上にあって高校生でも理解できる問題ならば、学習指導要綱を超える内容でも出題する。
- 文系でも出題範囲を広く設定し、理系の範囲を出題していく可能性がある。
- 今後、簡単な微分方程式を出題する可能性がある。
- プロの数学者が中心となって採点するので、細かい手順に違いはあるが採点の基本精神は東大と同じである。
- 答案は2回ずつ時間をかけて丁寧に採点し、説明が不足していないか受験生が理解しているかを確認する。丁寧に部分点を与えるということではなく、丁寧に減点するということであり、受験生に厳しい基準を要求している。
- 論理を重視して採点する。答えが求まっていても説明不足だと半分以下の点しか与えないことも多い。逆に、答えが求まっていなくても論理が正しければ部分点を与える。
- 解答用紙に書いてある考え方は、正答につながるもののみ部分点を与える。部分点狙いでの知識の羅列にはほとんど点を与えない。
- 「この公式を用いればよい」とだけ書いてあっても得点は与えない。
- 数学的帰納法で自明なn=1のときを書いただけでは点を与えない。
- 高校生の知識として明らかとしてよいことと駄目なことに分けて、正確かつ簡潔に記述してほしい。
- 答案には必要なことは全て書き、必要のないことは書かないのが望ましい。
- 式の羅列だけで説明不足の答案は好ましくない。
- 基本的な小問などは0点か満点の2択である。
- 易しい問題では論理の不備や説明不足があると0点になる。
- 高校範囲外の知識を用いても数学的に正しいなら問題ない。ただし、採点基準は相応のものになる。
- 「~であればよい」という表現はそのまま受け取ると十分条件を意味するが、必要十分条件の意味で使っていると思われる答案が多い。言葉の選び方にも注意してほしい。
- 一部のサイトでは「京大は採点が厳しく完答主義で部分点はほとんど与えない」とあるが、実際は受験生の数学力がわかるよう配慮して採点している。
- 見慣れないからといって勝手に難問だと思いこんでいる傾向がある。
- もっと教科書を大切にしてほしい。教科書の理解が100%でないため、いろいろなところでアラが出ている答案が多い。
- 多くのパターンを暗記してきただけのように思える答案が多いのは残念だ。
東京工業大学
- 難問だと差がつかないので、易しめの問題を出題し数学で差がつくようにして数学の出来る学生を採りたい。
- 中途半端な公式やパターンの暗記は害である。無理にでも当てはめようとして不自然な思考に陥ってしまう。
- 過程を大切にし、いかに答えを導いたかで採点する。
- 様々な思考力を見る問題を重視して出題していく。
- 明らかな内容でも何故そうしたかを一言でも説明するべきである。
- 採点官は書いてあるか否かで判断する。内容から推察するようなことはしない。
- ロピタルの定理など高校範囲外の知識でも正しく使えていればよい。しかし、ロピタルの定理は使い方を間違えている受験生が多い。
- 大学1年生を見ているので合格者全員が次の問題を解けるわけではないことを知っている。結果、満点は3割で合格者の数にほぼ等しい。(1)は6~7割が正解。(2)では216通り書き出した受験生がいた。
東北大学
- 問題は10人ほどで数回会議を開いて作り、採点は30人ほどが1週間かけて1人1000枚ほど行う。
- 採点基準は学部で異なる。
- 過去問と同じ問題でも出題する可能性がある。
- 文系の問題は理系の問題に比べて明確に易しくしたい。
- 易問から難問まで知識・計算力・論理力を問う問題をバランスよく出題したい。
- 学習指導要綱の範囲内で出題する。
- 説明や途中計算が不足している解答は答えが合っていても減点する。
- 必要条件と十分条件の認識が甘い答案が多いが、全て減点しているときりがないので黙認することもありうる。
- センター試験と2次試験の相関関係はあまり見られない。
- いわゆる1/6公式などは断りなく使うと減点する。そもそも使用自体好ましくない。
- ロピタルの定理は使うべきではない。
- ケーリー・ハミルトンの定理は断りなく使うと減点する。
- 高校の常識と大学の常識が同じであるとは思わないで欲しい。
慶応大学
- 「答案は読みやすいように丁寧に書く」という表紙の注意事項を確認して欲しい。
- 問題にはなるべく図を入れず、受験生が問題から読み取り表現する能力を試したい。
- 易しい問題が多いときは答案をよく見て厳しく採点する。
- 思考力を問うためには全て記述式が望ましいが、時間的制約を考えると穴埋め問題を多く出題せざるを得ない。
- 穴埋め問題は、途中計算は見ずに穴埋めの結果のみで採点する。部分点も与える。
- 記述式では何段階かに分けて加点する。方針が正しければ「方針点」として加点する。
- 「明らか」は使うべきではない。
- 受験生全員が必要条件のみで十分条件の考慮がない場合、必要条件のみでも満点を与える。
- 入学後の実験データの整理で確率の知識が必須となるため、確率は毎年出題していきたい。
早稲田大学
- 計算式ばかりで説明不足の答案が多い。
- 毎年想定外の解答が多く見られる。
- 1万人以上の受験者がいるので採点が大変だが、レベルの低下を避けたいので全て記述式にして文章能力も試している。
- 思考力が問われる問題を出題したいが、全滅するおそれがあるので配慮している。
東京理科大学
- 簡単な計算問題を必ず出題する。基本的な計算力はあっても繰り返すとミスが出る。
- 今後も計算力を重視した出題を続けていく。
- 問題にはなるべく図を入れないようにしている。
- 穴埋め式の問題ではまぐれで当たらないよう工夫している。
- 裏技的な公式が使えないよう工夫している。
- 各学部・学科が独自に問題を作成しており、連携は取っていない。
学習院大学
- 基礎的な学力が試せるような問題作成を心掛ける。
- 難問でなくても解く時間の差から能力評価が可能であり、今後も標準的な問題を出題していく。
- 増減表は書けるのにそれを正確にグラフにできない受験生が多い。
- 「グラフを書け」には変曲点を求めることも含まれる(理系)。
- ベクトルの問題をチェバ・メネラウスの定理を用いて解いても正解とする。
- 数学を選択してきた文系は入試後に伸びやすい。
- 恵まれた教育環境で育った都会出身者は何でも教えてもらおうという受け身の姿勢が目立つ。
大学入試連絡協議会における関西地方の大学の先生の講評
数学・大学入試連絡協議会での大学の先生方からのお話から要点を抜粋する。
1つ1つはあくまである特定の大学の見解であり、全ての大学に統一されたものではないので注意。
- 難問を並べると部分点だけで合格できてしまうので、標準的な問題を入れて最後まで解ききる能力をしっかり見て採点する。
- 問題文を正確に読み取り何が問われているのかをつかむ「読解力」、それを解決するための方針を立てる「構想力」、立てた方針を実行に移す「計算力」、それらを読み手にわかるように筋道立てて記述する「表現力」を試すための問題を作成する。
- 易問題では簡単に部分点は出さない。正しい方向に向かっているほとんど正解に近いものに大きく部分点を出す。
- 図示したり問題の内容を整理・把握して見通しを立てることなく、いきなり計算を開始した結果途中で路頭に迷う答案が多い。
- 計算の羅列だけではなく、論理の説明を採点官がわかるように書いて欲しい。
- 「ある条件を満たす例を求めよ」という問題では、例を見つけるだけでなくそれが条件を満たすことを示す必要がある。
- 方針は正しいのに計算でケアレスミスしている答案が多い。
- 解いた後で面積が負になったというような少しの吟味で間違いに気付けるのにそのままにしている答案が多い。
- 公式やパターンを意識しすぎて無理矢理あてはめようとした結果、かえって遠回りになっている答案が多い。
- 部分積分や置換積分の計算力が毎年低下している。
- 計算力不足で複数の解法を試すだけの余裕がないため、1つの解法で行き詰まってしまう。
- 幾何学的直感を必要とする問題は出来が悪い。
- 基本的なポイントであっても、それを複数つなげる必要がある問題は出来が悪い。
- 公式や計算手順を暗記するだけで意味を理解していないため、応用することが出来ない。
- パラメータを含む問題を扱えない。
- 合格者層と不合格者層が明確に分かれ、1点の違いで合否が変わる層が少ないほどよい入学試験であると考えている。
- 正しい方向に向かっている答案に大きく点を与える。解答の中で使う公式を覚えていたからとりあえず書いておいたとしても、それで1点2点を与えるようなことはしない。
- 採点者が答案に書かれていない行間を自分の頭で補って、その補ったことに対して点を出すというようなことはしない。書かれていることだけが受験生の考えたことで、書かれていないことは考えていないものとして扱う。
- 高校範囲外の公式は、数学的に正しいもので正しく使っているのであれば減点しない。ただし、利用条件まで含めて正しく理解して覚えている必要がある。
- いくつかの特殊例から結果を予想しただけで、一般的に成り立つかどうかの証明がない答案には点を与えていない。
- AO入試や推薦入試で合格した受験生は基礎学力が低く入学後苦労する。理系なら数Ⅲ数Cくらいは理解しておくこと。
元東大教授の岡本和夫氏の見解
- 公式についてどれだけ説明すべきかは場合による。
- 入試は大学での学習に十分な力があるかを判定する場であるから、答案が指導要綱に適合しているかはどうでもよい。
- ロピタルの定理は使い方を誤るとバッサリ減点される。この定理嫌い。
- もう一度大学に入り直す人もいるのだから数学的に正しいならば高校範囲外の知識を用いてもよい。実際には答案の流れを見て判断する。とにかく、内容が読み手に伝わり、使い方が正しいことが大切である。
- 採点者は数学のプロなのでごまかしてもすぐにバレる。
- 採点者は「何とか点をあげよう」という優しい人達である。しかし、それができる答案が・・・
- グラフの概形を描く問題で、f”(x)を計算して凹凸を調べる必要があるかは場合による。ただし、雑なグラフは採点者が怒るので、時間次第だがf”(x)も必要だと考えておいたほうがよい。
- 式自体の証明でない限り、計算途中で1/6公式を用いても問題ない。ただし、計算過程の記述が少ない答案はもし答えが違うとバッサリ減点される。
- 外積を用いても数学的に正しいならば問題ない。
- 式自体の証明でない限り、∫logxdx=xlogx-x+C の途中計算を書く必要はない。
- ∫[0→1]√(1-x²)dx=π/4 などは、一言「半径1の円の1/4の面積」と書いておけばよい。答案を書くときは面倒くさがらず、一言でも添えるという姿勢が重要である。
- 答案の書き方の基本は「横書きに書く」「各行は左から右に書く」「行は上から下に続く」のたった3つである。これだけのことが守られていない。
- 答案は丁寧に書いて欲しい。6とbや9とqが区別できないのは困るし、本人も間違えている。
まとめ
採点基準は、大学によっても、年度によっても、採点官によっても、試験結果によっても変わってくる。採点官自身ですら試験が終わってみないと正確なことは言えないだろう。
定期試験とは異なり、大学入試は一定数の学生を選抜するための試験だからである。他の学生と比較してどうかという観点で採点される。
結局、細かい採点基準を気にしていても意味がない。最も確実に得点する方法は、「問題の空気を読む」ことである。問題作成者がどこまで記述することを求めているかを問題文から読み取った上で答案を作成する。本番までに空気を読めるだけの数学力を身につけておかなければならないのである。
最後のおまけに出題者側がどのような姿勢で大学入試を行っているかを述べておきたい。できれば、受験生にはこれに見合う答案を作成してもらいたからである。
ある東大の教授によると、「東大の大学院生であっても、まともに採点できる能力はない」という。つまり、学部卒・院卒の並レベルの高校や塾の教師ではできないほど高いレベルで実際の採点は行われているのである。1,2週間ほどで1000枚、2000枚という量の答案(しかも、1つとして同じものはない)を正しく公平に採点しなければならないのであるから、たとえ大学入試レベルの試験であっても、採点官に求められる数学力は並大抵ではない。
暇な大学生のアルバイトが、あらかじめ予備校が決めた採点基準に従って機械的に採点しているような普通の模試とは全く質が違う。高校や塾の教師とは別次元の数学力を持ち、世界最先端の数学研究をしている本物の数学者たちが、受験生の想像をはるかに超えた圧倒的な高みから受験生を見つめている。それが、本番の大学入学試験である。彼らが自分の研究時間を削って作問・採点をしているのである。
また、大学入試は教授陣が暇つぶしに受験生をからかったりもてあそんだりするものでは決してない。なぜなら、合格者は3年後には研究室に所属して教授陣と一緒に研究に励むことになるからである。教授達は、自分が人生を賭けてやっている研究を共に進めてくれる相手を捜し求めている。それが教授自身の研究成果につながる。当然、できる限り優秀な学生を求めるだろう。そういう意味では、教授陣は受験生よりも遙かに大学入試に必死になっているはずなのである。
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