約160冊を購入してみたので、気付いたことをまとめた後、高校生に特にオススメしたい書籍を紹介する。
Kindle版Newtonとは?
まず、KindleとはAmazonが提供する電子書籍サービスである。Kindle専用端末はもちろん、アプリをダウンロードするとスマートフォン、タブレット、パソコンでも閲覧できる。
Kindle版Newtonは、言わずと知れた科学雑誌Newton(月刊誌)の過去記事や別冊Newtonの一部を電子化したものである。
160冊購入してわかった注意点
- ページ数が書籍によってバラバラで、150ページ近い大ボリュームのものから10ページほどしかないものまで存在する。購入前に要確認。
- タブレットで拡大すると画質がちょっと微妙。ほとんどの場合は気にならないが、配色などによっては気になるときもある。
- ところどころ記述やイラストが使い回しされている。というより、宇宙・相対論・量子論に関する書籍の割合が多く、それらはそもそも内容的にかなりかぶっている。
- 2010年頃の記事もあり、情報が古くなっている。購入前に要確認。
スマホ、タブレット、パソコンのどれで読むといい?
iPhone、iPad、パソコンで試してみたところ、iPadの読みやすさが別格であった。横にしてNewtonでよくある見開きのイラスト全体を眺めながらでもテキストを読めるメリットは大きい。
iPhoneを横にして見開き1画面とすると、さすがに文字が小さくなりすぎて読むのが困難になる。
パソコンの大画面で読むのがベストかと思いきや、ソフトの問題なのかページめくりが重くてイライラする。
1冊あたりの容量はどれくらい?
調子に乗ってアプリをダウンロードしまくっていたり電子書籍を買いまくっていたりすると、気付いたときには端末の容量が不足しているのはよくあることである。1冊当たりの容量が気になるところであろう。
調べてみたところ、1冊当たりの容量(MB)はおおよそページ数の1/3であった。つまり、10ページの書籍ならば3~4MB、100ページの書籍ならば30~35MBほどである。
先程も述べたとおりページ数は書籍によって大きく異なるので購入前に確認が必要である。
なお、160冊分の容量は約2.5GBであった。
高校生にオススメしたいKindle版Newton
特に高校生にも読んでもらいたいものを以下で紹介しよう。
微分と積分
高校生にオススメのダントツのNo.1はこれしかない。みんな大好き(?)微分積分に関する合計180ページもの大特集である。
微分積分とは何か、何の役に立つのか、どのように生まれたのか、ニュートン・ライプニッツらの人物像と微積分の創始者を巡る争いがメインであるが、その他に、ニュートン・ライプニッツ以降の微積分の発展、カヴァリエリの原理、裏技パップス・ギュルダンの定理、最短シュタイナー問題、ネイピア数と世界で最も美しい数式(オイラーの等式)、高校物理の力学で学習する惑星の運動に関するケプラーの法則からの万有引力の原理の証明、高校レベル+αの微積分の公式集、大学で学習するオイラーの公式、微分方程式、フーリエ解析等、微分積分に関する話題が幅広く取り上げられている。
その中で、ガリレオ、ケプラー、フック、デカルト、フェルマー、カヴァリエリ、トリチェリ(の真空)、カッシーニ、ラプラス、ガウス、ハリー(ハレー彗星に名を残す)、ド・モアブル、ホイヘンス、ベルヌーイ、オイラー、ロピタル、ダランベール、ラグランジュ、マクローリン、コーシーなど数学・物理学史上に燦然と輝く超大者の名前が次々と登場する。
なお、説明途中に出てくる数式を理解するには数Ⅲの微分・積分および2次曲線の知識が必要になるので、これらを学習直後に読むのがベストである。
※ これらはNewton別冊『微分と積分 増補改訂版』(2016年5月)の電子版です。
直感がはずれる確率のパラドックス
有名な確率の8つのパラドックスについて直感的に解説したものである。
- ギャンブラーの誤謬
- 誕生日のパラドックス
- ベルトランの箱
- 3囚人のジレンマ
- モンティ・ホール・ジレンマ
- サンクトペテルブルクのパラドックス
- シンプソンのパラドックス
- 交換のパラドックス
例えば、モンティ・ホール・ジレンマとは次のような問いである。
3枚のドアA、B、Cのうち1つの後ろに豪華賞品がある。挑戦者(当然正解のドアは知らない)がドアAを選択したところ、正解のドアを知っている司会者がBを開けてはずれであることを示した。
そして司会者は挑戦者に言った。「ドアを変えたければ変えてもいいですよ」と。
さて、あなたはドアAのままにすべきですか?それともドアCに変えるべきですか?
意外かもしれないが、結論を言えば豪華商品が当たる確率は1/2ずつではない。
答えと理由が知りたければ書籍でどうぞ。
パラドックス好きの人は以下のシリーズもどうぞ。
- うそつきのパラドックス
- ワニのジレンマ
- ラッセルのパラドックス
- プロタゴラスのパラドックス
- ベリーのパラドックス
- リシャールのパラドックス
- その他の自己言及のパラドックス
- 相互言及のパラドックス
- 囚人のジレンマ
- ニューカムのパラドックス
- 投票のパラドックス
- アビリーンのパラドックス
- 倹約のパラドックス
- ギッフェン・パラドックス
- 抜き打ちテストのパラドックス
- 砂山のパラドックス
- テセウスの船
- 全能のパラドックス
- ヘンペルのカラス
※ これらはNewton別冊『絵解きパラドックス』(2014年4月)の電子版です。
夢のくすりを求めて
怪我や病気をしたときほど薬の有り難さが身にしみる時はない。
本書は、普段使っている薬がどれだけの大変な過程を経て我々の元に届いたものなのかを教えてくれる。
1つの薬の開発期間は約20年、費用は平均で800億円だという。病気の原因を特定し、数百万種の化合物の中から薬の元を見つけ、副作用をおさえるための分子レベルの設計・改良、動物実験(3~5年)、千人以上の患者での治験(3~7年;クリアできるのは8%)、厚生労働省による承認という長く険しい道を通って初めて販売される。そして、販売後にも効果のほどが調査される。
以上の薬の開発物語以外にも、そもそも薬とは何か、薬の仕組み、「薬を飲むときに気をつけること」などの薬に関する身近な疑問の答え、遺伝子やiPS細胞やスーパーコンピュータを用いた次世代型創薬、代表的な病気とその治療薬のまとめなどが取り上げられており、非常に密度の濃い内容となっている。
是非とも多くの高校生に本書を読んでもらいたい。特に、医学・薬学・化学を目指す学生が将来良い薬を作ってくれることに期待したい。なにとぞお願い致しますm(_ _)m
※ 本書はNewton2015年8月号の特集記事の電子版です。
生命の設計図 DNA
場所、構造、役割、研究の歴史など、DNAに関して広範囲かつ基本的な内容が取り上げられている。
高校化学や高校生物で学習する内容も多く含まれており、浅すぎず深すぎず高校生にとって適度なレベルであるためにオススメしたい1冊である。
※ 本書はNewton2011年11月号の特集記事の電子版です。
巨大地震関連
世界ダントツNo.1の地震大国、それが日本である。日本に住む限り、この現実から目を背けることは許されない。
4つものプレートがぶつかり合う世界的にも有数の危険地帯で、地球上で起こる大地震の約20%が日本で発生している。
必ず来る次の巨大地震に備え、以下の書籍を読んで意識を高めておきたいところである。
※ 本書はNewton2014年10月号の特集記事の電子版です。
※ 本書はNewton2016年6月号の特集記事の電子版です。
火山関連
世界ダントツNo.1の火山大国、それが日本である。日本に住む限り、この現実から目を背けることは許されない。
世界に対する割合は、国土面積0.25%に対して活火山数7%である。
日本にはかつて超巨大噴火を起こした火山が複数ある。統計的には今後100年間で1%の確率で起こる計算になるという。かつて九州を壊滅させ日本中に大量の火山灰を降り積もらせたような超巨大噴火が今の日本で起こったら・・・死者700万人?
う~ん、もはや意識を高めておいてもどうしようもなさそう。。。
※ 本書はNewton2016年2月号の特集記事の電子版です。
※ 本書はNewton2013年2月号の特集記事の電子版です。
検証 福島原発
2011年3月11日に発生した東日本大震災に付随してとてつもない負の遺産が残された。我々は少なくとも今後数十年間この遺産とともに生きていかなければならない。
福島第一原発事故に関する書籍は何百冊と発売されているが、豊富なイラストとともに解説しているのはNewtonだけである。
すでに情報が古くなっているものの、日本に住む限り高校生もこの現実を知っておくべきである。
※ 本書はNewton別冊『検証 福島原発1000日ドキュメント』(2014年5月)の電子版です。