熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂)

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netukoukasei@2x
合成樹脂}} 樹脂状の合成高分子化合物で,\ \textbf{\textcolor{magenta}{希望の形に成型できる性質(塑性)}}をもつ. \\[.2zh]       \textbf{高密度の結晶部分と低密度の無定形部分からなり,\ 結晶部分が多いほど硬い.} \\[.2zh]       合成樹脂は,\ 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別される. \\[.2zh]       Plastic\,(可塑性の)に由来し,\ \textbf{\textcolor{blue}{プラスチック}}とも呼ばれる. \\\\  \textbf{\textcolor{blue}{熱可塑性樹脂}} \textbf{\textcolor{red}{加熱すると軟らかくなり,\ 冷却すると硬化する性質}}をもつ合成樹脂. \\[.2zh]         加熱で軟らかくしてから型に入れ,\ 冷却することで自由に成形加工できる. \\[.2zh]         \textbf{\textcolor{red}{付加重合}}のものが多く,\ 一般に鎖状高分子化合物}}が該当する. \\[1zh]  \textbf{\textcolor{blue}{熱硬化性樹脂}} \textbf{\textcolor{red}{加熱すると硬化する性質}}をもつ合成樹脂. \\[.2zh]         熱可塑性のある重合度の低い段階(プレポリマー)で成形する必要がある. \\[.2zh]         熱可塑性樹脂よりも耐熱性や耐薬品性に優れている. \\[.2zh]         \textbf{\textcolor{red}{縮合重合}}のものが多く,\ 一般に三次元網目状構造の高分子化合物}}が該当する. \\\\\\\\  \textbf{\textcolor{blue}{代表的な熱硬化性樹脂}} \\[1zh] フェノール樹脂(PF)(ベークライト)ホルムアルデヒド酸触媒塩基触媒ノボラックレゾール加熱+硬化剤特徴} ベークランドが開発した\textbf{世界初の合成樹脂}.\ 電気絶縁性・耐熱性に優れる. \\[.5zh]   \ \ \textbf{用途} プリント配線基盤,\ 電子部品,\ 断熱材. \\\\[1zh] フェノール(\text{Phenol})とホルムアルデヒド(\text{Formaldehyde})の縮合は,\ 簡単には次のように起こる. 縮合 実際には,\ まず\bm{フェノールにホルムアルデヒドが付加}し,\ その生成物と別の\bm{フェノールが縮合}する. \\[.5zh]                            メチロール基(ヒドロキシメチル基) \\\\ このように,\ 付加と縮合が同時に起こる重合を\bm{\textcolor{blue}{付加縮合}}という. \\[1zh] フェノール樹脂は,\ 触媒が酸性か塩基性かで反応が異なる. \\[1zh] 酸触媒下では,\ ノボラック(分子量1000程度の軟らかい固体)という中間体が生じる. \\[.2zh] 加熱しても硬化しない熱可塑性樹脂だが,\ 硬化剤を加えて加熱するとフェノール樹脂となる. \\[1zh] 塩基触媒下では,\ レゾール(分子量300程度の粘性の大きい液体)という中間体が生じる. \\[.2zh] 多数の\ce{- CH2OH}が残っているため,\ 加熱のみでフェノール樹脂となる. \\[.2zh] ノボラックとレゾールは,\ 中間体であるにもかかわらずやたらと出題率が高いので要注意である. \\[1zh] フェノールは,\ \bm{オルト位とパラ位でホルムアルデヒドと反応}してフェノール樹脂となる. \\[.2zh] ただし,\ オルト位とパラ位のすべてが反応するとは限らない. 尿素樹脂(ユリア樹脂)(UF)}} 尿素とホルムアルデヒドを付加縮合}}させた樹脂.    \ \ \textbf{特徴} 比較的安価で,\ 耐熱性・耐薬品性・透明性・着色性に優れる. \\[.5zh]    \ \ \textbf{用途} 雑貨,\ ボタン,\ 食器,\ おもちゃ. \\\\ 尿素(\text{Urea})とホルムアルデヒド(\text{Formaldehyde})の縮合は,\ 簡単には次のように起こる. \\[.5zh] 実際には,\ まず尿素にホルムアルデヒドが付加し,\ その生成物と別の尿素が縮合する. \\[.5zh] 尿素\ce{H2N-CO-NH2}\,は\ce{H}原子を4個もつ. \\[.4zh] よって,\ 最大4個のホルムアルデヒドと縮合できるが,\ すべての\ce{H}原子が縮合するとは限らない. \\[1zh] アミノ基をもつ化合物とホルムアルデヒドを付加縮合させてできる樹脂の総称を\bm{\textcolor{blue}{アミノ樹脂}}という. \\[.2zh] アミノ樹脂には,\ 尿素樹脂やメラミン樹脂がある. メラミン樹脂(MF)}} \\[1zh]    \ \ \textbf{\textcolor{red}{メラミンとホルムアルデヒドを付加縮合}}させた樹脂. \\[.5zh]      \ \ \textbf{特徴} 高強度で,\ 耐熱性・耐水性・耐薬品性に優れる.\ 美しい光沢をもつ. \\[.5zh]    \ \ \textbf{用途} 化粧板,\ 塗料,\ 食器,\ 家具. \\\\ アミノ基をもつメラミン(右図)は,\ 尿素と同様の要領で付加縮合する. \\[.2zh] メラミン1個で最大6個のホルムアルデヒドと縮合できる. \\[.2zh] よって,\ メラミン樹脂は強固な立体網目状構造をもつ. \\[.2zh] 加えて,\ ベンゼン環と同様の平面構造ももつため,\ 非常に硬い樹脂となる.     グリプタル樹脂(アルキド樹脂の一種)アルキド樹脂}} \\[.5zh]   \ \  \textbf{\textcolor{magenta}{多価カルボン酸やその無水物と多価アルコールの縮合重合}}による高分子化合物. \\[.2zh]   \ \  \textbf{\textcolor{red}{エステル結合\ce{- COO -}}}ができるから,\ ポリエステル樹脂の一種である. \\[.2zh]   \ \  alkyd(アルキド)は,\ alcohol(アルコール)\,$+$\,acid(酸)に由来する. \\\\   \ \ \textbf{\textcolor{blue}{グリプタル樹脂}}(下図) \\[.5zh]   \ \  \textbf{\textcolor{magenta}{無水フタル酸とグリセリンの縮合重合}}による高分子化合物. \\[.2zh]   \ \  フタル酸は2価カルボン酸,\ グリセリンは3価アルコールである. \\[.2zh]   \ \  glyptal(グリプタル)は,\ gly(グリ) phthal(フタル)に由来する. \\\\ 特徴} 耐熱性・耐光性・接着性に優れる. \\[.5zh]    \ \ \textbf{用途} 塗料,\ 接着剤. \\\\\\ シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)(SI)ジクロロジメチルシラントリクロロメチルシラン加水分解ジメチルシラノールシリコーン樹脂(ケイ素樹脂)}}} \\\\    \ \ \textbf{特徴} 撥水性・耐水性・耐熱性・耐薬品性・電気絶縁性に優れる. \\[.5zh]    \ \ \textbf{用途} ワックス,\ 電気絶縁材料,\ コンタクトレンズ,\ シリコーンゴム. \\\\[.5zh] 炭素\ce{C}と同じ14族のケイ素\ce{Si}の水素化物\bm{\ce{SiH4}}\,を\bm{シラン}という. \\[1zh] ケイ素をシリコン(\text{silicon}),\ \bm{ケイ素を含む化合物の総称をシリコーン}(\text{silicones})という. \\[.2zh] 日常ではシリコーンがシリコンと呼ばれていたりもするが,\ 学生はしっかり区別しておきたい.  以下2つについては構造式まで深く踏み込む必要はないが,\ 概要は確認しておくこと. 不飽和ポリエステル樹脂(UP)}} \\[1zh]   \ \  \textbf{\textcolor{cyan}{無水マレイン酸}}などの不飽和2価カルボン酸と\textbf{\textcolor{cyan}{エチレングリコール}}などの \\[.2zh]   \ \  2価アルコールを縮合重合させて得られた不飽和ポリエステルに\textbf{\textcolor{cyan}{スチレン}}などの \\[.2zh]   \ \  ビニル基をもつ化合物を共重合させて架橋化したもの. \\[.2zh]   \ \  ガラス繊維や炭素繊維で補強したUPは\textbf{\textcolor{blue}{繊維強化プラスチック}}(FRP)として \\[.2zh]   \ \  浴槽, ヨットの船体, 航空機材料, スキー板などに利用されている. \\\\ 無水マレイン酸エチレングリコールスチレンエポキシ樹脂ビスフェノールAエピクロロヒドリン}}を共重合させ, 硬化剤のジエチレントリ \\[.2zh]   \ \  アミン\ce{(NH2CH2CH2)2NH}等を加えてエポキシ環を架橋化して硬化させたもの. \\[1zh]     耐熱性・耐水性・耐食性・耐薬品性・耐摩耗性・接着性・電気絶縁性 \\[.5zh]    \ \ \textbf{用途} 2液式の強力接着剤, 塗料, 電子回路の基板 \\\\\\\\\\ フェノール100\,gとホルムアルデヒド45\,gのすべてが縮合重合してできるフェノール \\[.2zh] \hspace{.5zw}樹脂は何gか.   $\ce{H}=1.0,\ \ce{C}=12,\ \ce{O}=16$ \\   フェノールの物質量は\ $\bunsuu{100}{94}$mol \ \ ホルムアルデヒド\ce{HCHO}の物質量は\ $\bunsuu{45}{30}=1.5$mol \\[1zh]   ここで,\ \textcolor{red}{フェノール1\,molあたり\ce{HCHO}は最大1.5\,mol反応し,\ \ce{H2O}が1.5\,mol脱離する.} \\[1zh]   $\bunsuu{100}{94}>1$より,\ 1.5\,molの\ce{HCHO}が完全に反応し,\ フェノールの一部は反応せずに余る. \\[.2zh]   このとき1.5\,molの\ce{H2O}が脱離する.\ その質量は $18\,\text{g/mol}\times1.5\,\text{mol}=27$g \\[1zh]   生成したフェノール樹脂の質量は  \bm{フェノールは,\ オルト位とパラ位で\ce{HCHO}と反応してフェノール樹脂となる.} \\[.2zh] つまり,\ フェノール1分子は,\ 最大3ヶ所で\ce{HCHO}と反応できる. \\[.2zh] ここで,\ 1個の\ce{HCHO}はフェノール分子2個と反応し,\ 1個の\ce{H2O}が脱離する. \\[.4zh] $結局,\ \bm{フェノール分子1個につき最大0.5\times3=1.5個の\ce{HCHO}が反応し,\ 1.5個の\ce{H2O}が脱離する.分子量18