イオン交換樹脂とアミノ酸の分離

スポンサーリンク
ionkoukanjyusi@2x
陽イオン交換樹脂  スチレン(ビニルベンゼン)と p ジビニルベンゼンを共重合させる.  すると, 三次元網目状構造をもつポリスチレン樹脂ができる.  さらに濃硫酸でスルホン化すると, ポリスチレンスルホン酸樹脂となる.  スチレン(C₈H₈)  ・ベンゼン環に CH=CH₂ が結合した構造  p ジビニルベンゼン(C₁₀H₁₀)  ・ベンゼン環の para 位に 2 つの CH=CH₂ が結合した構造  スルホン化後の単位構造(−SO₃H がベンゼン環の p 位に導入)  ポリスチレンスルホン酸樹脂  酸性基を多く含む樹脂は, 電離した H⁺ と溶液中の他の陽イオンとを交換できる.    R−SO₃H + Na⁺ ⇄ R−SO₃Na + H⁺  樹脂の使用後は, そのままでは交換能力が失われたままである.  そこで, 使用後の樹脂に希塩酸や希硫酸などの強酸性溶液を通す(多量の H⁺ を加える).  すると, 逆反応が起こって再び −SO₃H に戻り, 交換能力を取り戻す.  これをイオン交換樹脂の再生という.  再生後, 塩酸が流出しなくなるまで十分に蒸留水で洗浄する. 陰イオン交換樹脂  ポリスチレン樹脂に塩基性基 −N⁺(CH₃)₃(トリメチルアンモニウム基)を導入する.  さらに強塩基で処理すると, 水酸化物 −N⁺(CH₃)₃OH⁻ となる.  塩基性基を多く含む樹脂は, 電離した OH⁻ と溶液中の他の陰イオンとを交換できる.    R−N⁺(CH₃)₃OH⁻ + Cl⁻ ⇄ R−N⁺(CH₃)₃Cl⁻ + OH⁻  使用後, 水酸化ナトリウム溶液などの強塩基性溶液を通すと再生する. イオン交換樹脂の利用  陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂混合物をカラム(円筒状容器)に詰める.  上から食塩水を通すと, Na⁺ は H⁺ に, Cl⁻ は OH⁻ に交換され, 下から H₂O が流出する.  このような陽イオンや陰イオンを含まない水を脱イオン水という.  当然, イオン交換樹脂では非電解質(イオンでない物質)や有機化合物は除去できない. スチレン 52 g と p ジビニルベンゼンが物質量比 4:1 になるように混合し, 共重合させたポリスチレン樹脂を濃硫酸で処理して得られるポリスチレンスルホン酸樹脂の質量を整数値で答えよ. 濃硫酸でポリスチレンのベンゼン環のパラ位のみが 60% スルホン化されたとする. H=1.0, C=12, O=16, S=32 スチレン x mol と p ジビニルベンゼン y mol が共重合してできたポリスチレン樹脂の スチレン単位の a% がスルホン化されてできたポリスチレンスルホン酸樹脂は  スルホン化されたスチレン単位(−SO₃H 導入)  スチレン単位  p ジビニルベンゼン単位 スルホン化されたスチレン単位 C₈H₈O₃S = 184 スチレン単位 C₈H₈ = 104 p ジビニルベンゼン単位 C₁₀H₁₀ = 130 スチレンの物質量は  52 g / 104 g/mol = 0.50 mol ポリスチレンスルホン酸樹脂の質量は  184 g/mol × (0.50 × 60/100) mol +104 g/mol × (0.50 × 40/100) mol +130 g/mol × (0.50 × 1/4) mol = 55.2 + 20.8 + 16.25 = 92.25 ≈ 92 g 別解 p ジビニルベンゼンの質量を m g とすると  52/104 : m/130 = 4 : 1 より m = 16.25 g スチレンの全てのベンゼン環のパラ位の −H が −SO₃H になると式量は SO₃ = 80 増加. スチレンの 60% スルホン化による質量増加量は  80 g/mol × (52/104) mol × (60/100) = 24 g ポリスチレンスルホン酸樹脂の質量は  52 + 16.25 + 24 = 92.25 ≈ 92 g [本解は, ポリスチレンスルホン酸樹脂の 3 つの構成単位の質量をそれぞれ求めるものである.  別解は, スチレンと p ジビニルベンゼンの質量にスルホン化による増加分を足すものである.] 十分量の陽イオン交換樹脂を詰めた管に濃度不明の硫酸銅(II)水溶液 10 mL を通し, 流出液を 0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ, 40 mL を要した. 硫酸銅(II)水溶液のモル濃度を求めよ. 2 R−SO₃H + Cu²⁺ → (R−SO₃)₂Cu + 2 H⁺ 化学反応式より, 1 mol の Cu²⁺ が 2 mol の H⁺ に交換される. 硫酸銅(II)水溶液のモル濃度を x [mol/L] とする. Cu²⁺ は (x × 10/1000) mol あったから, 流出液中に H⁺ は (x × 10/1000 × 2) mol ある. よって x × (10/1000) × 2 = 1 価 × 0.10 mol/L × (40/1000) L より x = 0.20 mol/L (H⁺ の mol)=(OH⁻ の mol) ―――――――――――――――――――― 下の記述に当てはまるものを, 次の 3 つのアミノ酸から全て選べ.  アラニン (等電点 6.0), グルタミン酸 (等電点 3.2), リシン (等電点 9.7) (1) pH 9 の緩衝液に溶解させたとき, 陰イオン交換樹脂に吸着するもの. (2) pH 6 の緩衝液に溶解させたとき, 陽イオン交換樹脂に吸着するもの. (3) pH 6 の緩衝液に溶解させたとき, 陰イオン交換樹脂に吸着するもの. (4) pH 4 の緩衝液に溶解させたとき, 陽イオン交換樹脂に吸着するもの. (1) アラニン, グルタミン酸 (2) リシン (3) グルタミン酸 (4) アラニン, リシン [アミノ酸は, 水溶液中では陽イオン・双性イオン・陰イオンが平衡状態にある. 水溶液の pH が変化すると平衡が移動し, それぞれのイオンの割合が変化する. pH が小さい (H⁺ が多い) ほど, H⁺ を受け取って陽イオンの割合が増える. pH が大きい (H⁺ が少ない) ほど, H⁺ を放出して陰イオンの割合が増える. 陽イオンと陰イオンの割合が等しく, 平衡混合物全体として電荷が 0 になる pH が等電点である. 結局, アミノ酸は等電点より小さい pH では主に陽イオン, 大きい pH では陰イオンとなっている. 後は, 陽イオンは陽イオン交換樹脂, 陰イオンは陰イオン交換樹脂に吸着することに着目する.  pH  1.0  3.2  6.0  9.7  11  アラニン  [Ala⁺]      [Ala^±]      [Ala⁻]  グルタミン酸  [Glu⁺]  [Glu^±]  [Glu⁻]      [Glu²⁻]  リシン  [Lys²⁺]      [Lys⁺]  [Lys^±]  [Lys⁻] (1) pH 9 で陰イオンが存在するのは, 等電点が pH 9 よりも小さいアラニンとグルタミン酸である. (2) pH 6 で陽イオンが存在するのは, 等電点が pH 6 よりも大きいリシン. アラニンは双性イオン. (3) pH 6 で陰イオンが存在するのは, 等電点が pH 6 よりも小さいグルタミン酸である. (4) pH 4 で陽イオンが存在するのは, 等電点が pH 4 よりも大きいアラニンとリシンである.]
タイトルとURLをコピーしました