核酸(DNAとRNAの違い)、DNAの構造と役割(タンパク質の合成)

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kakusan@2x
核酸 ヌクレオシド 五炭糖と有機塩基が脱水縮合した化合物. ヌクレオチド 五炭糖, リン酸, 有機塩基が脱水縮合した化合物. nucleo(核の)tide(結ばれた). 核酸 多数のヌクレオチドが脱水縮合したポリヌクレオチド. 細胞の核にある酸性物質. 生物の遺伝を支配する重要な高分子化合物で, DNA(下図)とRNAがある. [ リン酸H₃PO₄ のOH基と五炭糖の3位や5位のOH基のHが交互に脱水縮合する. リン酸H₃PO₄ は, 構造式を考えるときや脱水させるときは PO(OH)₃ とみなすとわかりやすい. こうしてできる分子鎖が DNA や RNA の主鎖となる. また, 五炭糖の1位のOH基(橙)は, 核酸塩基のイミノ基NHのHとの間で脱水縮合する. DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸) 糖 デオキシリボース(C₅H₁₀O₄) リボース(C₅H₁₀O₅) 塩基 アデニン(A), グアニン(G) アデニン(A), グアニン(G) シトシン(C), チミン(T) シトシン(C), ウラシル(U) 構造 2本鎖(二重らせん) / 1本鎖 存在 核 / 核と細胞質 役割 遺伝子本体. 遺伝情報の保持, 複製. / タンパク質の合成. 遺伝情報の転写, 翻訳. 核酸塩基(有機塩基) DNAとRNAで共通(アミノ基−NH₂ をもつ) アデニン(A) グアニン(G) シトシン(C) DNAのみ / RNAのみ チミン(T) / ウラシル(U) [ DNA(デオキシリボ核酸) deoxyribonucleic acid RNA(リボ核酸) ribonucleic acid DNAを構成するデオキシリボース(C₅H₁₀O₄)は, リボース(C₅H₁₀O₅)よりOが1つ少ない. 「デオキシ(deoxy)」は「de(脱) − oxygen(酸素)」の意味である. DNAとRNAでは, 1種類だけ含まれる核酸塩基が異なる. チミン(T)は, ウラシル(U)のH 1個がメチル基CH₃ に置換したメチルウラシルである. 核酸塩基の構造式を書ける必要はないが, 構造式を見て名称がわかるようにはしておきたい. ] DNAの構造 2本のポリヌクレオチド鎖が塩基間の水素結合によって1本の二重らせん構造を作る. このとき, 水素結合の対になる核酸塩基は互いに決まっている(相補性). アデニン(A)とチミン(T) またはウラシル(U)は, 2本の水素結合を作って結合する. グアニン(G)とシトシン(C)は, 3本の水素結合を作って結合する. 対になるので, AとT, GとCは常に同じ物質量ずつ存在する(シャルガフの法則). DNA 2本鎖を1本鎖にするとき, 水素結合3本のGとCの割合が多いほど高温が要る. なお, 核酸塩基のどの部分で水素結合を作るかは覚えておく必要がある. DNAの役割① 自己複製 細胞分裂時, 二重らせん構造を作るポリヌクレオチド鎖がほどかれ, 2本の1本鎖となる. 1本となった各鎖の塩基に対応する塩基をもつ新しいヌクレオチドが結合していく. ペアが決まっているので, 同じ塩基配列の二重らせん構造が2組できあがる(複製完了). DNAの役割② タンパク質の合成 DNAには, 4種類の塩基(A, T, G, C)の配列が遺伝情報として組み込まれている. この遺伝情報は, タンパク質のアミノ酸の配列順序を指定している. [1] 細胞の核内で, DNAのもつ遺伝情報(塩基配列)がmRNAに転写される. このとき, まずDNAの必要な部分のみ二重らせんがほどける. そのうちの1本を鋳型として相補的な塩基配列をもつmRNAが合成される. 例として, あるDNAの塩基配列が「GAAGGCGCATGT」であるとしよう. DNAの塩基 A, T, G, C と相補的なRNAの塩基はそれぞれ U, A, C, G である. よって, 塩基配列「CUUCCGCGUACA」をもつmRNAが合成される. [2] 合成されたmRNAは, 核から出て細胞内のリボソーム(タンパク質合成場)に移動する. DNAとRNAは, 塩基配列3組(コドンという)で1つのアミノ酸を指定している. また, tRNAは3個の塩基を持っており, 特定のアミノ酸と結合している. mRNAと相補的なtRNAが, 対応するアミノ酸をリボソームに運んでくる. [1]に続けて, mRNAの塩基配列が「CUU」「CCG」「CGU」「ACA」であるとしよう. このmRNAには, 4個の相補的なtRNA「GAA」「GGC」「GCA」「UGU」が対応する. それぞれ, グルタミン酸, グリシン, アラニン, システインと結合しているtRNAである. [3] リボソームでrRNAの働きでアミノ酸がペプチド結合し, タンパク質ができる(翻訳). 結局, DNA「GAAGGCGCATGT」から次のタンパク質が合成される. グルタミン酸 — グリシン — アラニン — システイン [ mRNAは, メッセンジャーRNAや伝令RNAともいう. tRNAは, トランスファーRNAや運搬RNAともいう. rRNAは, リボソームRNAともいう. 核酸塩基4種(A, T, G, C)の3つの配列は4³=64通りある. タンパク質を構成するアミノ酸は20種なので, その指定に塩基は4種で十分に事足りる. ] ヒトは37兆個の細胞から成り立ち, 1つの体細胞には60億塩基対のDNAが存在する. ヒトのDNAの4つの塩基中のグアニンの割合を20%とする. 鎖状に縮合した状態における, アデニン, グアニン, シトシン, チミンを塩基としたヌクレオチド単位のそれぞれの式量を 313, 329, 289, 304, アボガドロ定数を N_A = 6.0×10²³/mol とする. (1) DNAの二重らせんは, 長さ3.4 nmで1回転し, その中に塩基対を約10個を含む.   二重らせんの長さは何mか. (2) ヌクレオチド単位1個の平均式量を有効数字3桁で求めよ. (3) 1つの体細胞が有するDNAの質量とヒト1人が有するDNAの総質量を有効数字2桁で求めよ. (1) 塩基対1個分の長さは 3.4 nm ÷ 10 = 0.34 nm = 0.34×10⁻⁹ m = 3.4×10⁻¹⁰ m 塩基対60億個分の長さは (3.4×10⁻¹⁰) m × 60億 = 2.04 m (2) アデニン(A)とチミン(T), グアニン(G)とシトシン(C)はそれぞれ同じ割合含まれる. グアニン(G)の割合が20%であるから, シトシン(C)の割合も20%である. 残りは60%であるから, アデニン(A)の割合30%, チミン(T)の割合30%である. ∴ 313×(30/100) + 329×(20/100) + 289×(20/100) + 304×(30/100)  = 308.7 ≈ 309 (3) 1つの細胞内のDNAの質量は 308.7 g/mol × ((60億×2)個 / (6.0×10²³ 個/mol)) = 6.174×10⁻¹² g ≈ 6.2×10⁻¹² g ヒト1人のDNAの総質量は (6.174×10⁻¹²) g × 37兆 = 228.438 g ≈ 2.3×10² g [ m(ミリ):10⁻³, μ(マイクロ):10⁻⁶, n(ナノ):10⁻⁹  億:10⁸ 兆:10¹² (1) ヒトの細胞は0.02 mm, 細胞核はわずか5~10 μmほどである. その小さな細胞核の中に2 m以上もの長さのDNAが折りたたまれた状態で収納されている. また, ヒト1人のDNAの全長は 2.04 m × 37兆 ≈ 76兆 m 76兆 m = 760億 km は, 太陽と地球の距離1.5億 km の約500倍である. (3) 1つの塩基対の中では, 2つのヌクレオチドが対をなしている. よって, 60億塩基対のDNAの中に120億個のヌクレオチドが含まれる. アボガドロ数で割るとヌクレオチドの物質量(mol)が求まる. ]

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