代表的なα-アミノ酸の特徴と性質、シスチンとその立体異性体

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アミノ酸 1分子中にカルボキシ基 −COOH とアミノ基 −NH2 をもつ低分子化合物. α–アミノ酸 カルボキシ基とアミノ基が同一の炭素原子に結合しているアミノ酸. 最も簡単なグリシン以外には不斉炭素原子があり, 鏡像異性体が存在する. 生体のタンパク質を構成する主要な α–アミノ酸は約20種類ある. 必須アミノ酸 ヒトの体内で作られないので食物として摂取する必要があるアミノ酸. 代表的な α–アミノ酸とその特徴(★:必須アミノ酸;括弧内の数値は等電点) [中性アミノ酸] グリシン (Gly;6.0) 最も簡単なアミノ酸 鏡像異性体なし アラニン (Ala;6.0) セリン (Ser;5.7) アルコール性の OH 基を含む システイン (Cys;5.1) 硫黄原子 S を含む 還元性あり メチオニン (Met;5.7) ★ 硫黄原子 S を含む フェニルアラニン (Phe;5.5) ★ ベンゼン環を含む チロシン (Tyr;5.7) ベンゼン環を含む フェノール性の OH 基を含む [酸性アミノ酸] アスパラギン酸 (Asp;2.8) グルタミン酸 (Glu;3.2) 側鎖にカルボキシ基をもつ [塩基性アミノ酸] リシン (Lys;9.7) ★ 側鎖にアミノ基をもつ カルボキシ基が結合している C 原子から順に, 炭素鎖に α 炭素, β 炭素, γ 炭素, … と名付ける. α 炭素にアミノ基が結合しているアミノ酸が α–アミノ酸である. 代表的な α–アミノ酸をどこまで覚える必要があるかは場合による. 最低でも, 名称を見ただけで特徴(「S を含む」など)がわかるようにしておく必要がある. 上位大学を目指すならば, 10個すべての構造式や略記号まで覚えておいたほうがよい. アミノ酸も糖類と同様, 鏡像異性体は D 型と L 型に区別される. フィッシャー投影式において, 上が COOH, 下が CH3 となる方向から眺める. フィッシャー投影式では, 紙面奥側の置換基を上下に, 紙面手前側の置換基を左右に書くのであった. このとき, NH2 が右側にくるのが D 型, 左側にくるのが L 型である. 天然の単糖類はほとんどが D 型であったが, 天然のアミノ酸はほとんどが L 型である. L–アラニン D–アラニン 鏡像異性体 α–アミノ酸は, 分子式や分子量が与えられれば, ほぼ特定することができる. まず, 「グリシン C2H5NO2 (75)」と「アラニン C3H7NO2 (89)」は覚えておくと早い. グリシンとアラニン以外の α–アミノ酸は, すべて (共通骨格:NH2–CH(–)–COOH) よって, 共通部分 C3H6NO2 (88) を除くと, 自ずと R の部分の原子や式量がわかる. 例えば, C4H7NO4 は, C3H6NO2 を除くと CHO2 より, R = COOH のアスパラギン酸とわかる. 酸性のグルタミン酸とアスパラギン酸とは別に, 中性のグルタミンとアスパラギンが存在する. 高校化学で頻出するのは酸性アミノ酸のグルタミン酸とアスパラギン酸なので混同しないように注意. 必須アミノ酸9種類はゴロ合わせ『風呂場イス独り占め』が有名だが, 大学受験では重要ではない. フェニルアラニン, ロイシン, バリン, イソロイシン, スレオニン, ヒスチジン, トリプトファン, リジン(リシンの別名), メチオニン. 等電点については次項で詳細を取り扱う. アミノ酸の性質 ① COOH 基(酸性)と NH2(塩基性)をもつため, 酸とも塩基とも反応する(両性化合物). ② 結晶中や水溶液中では, COOH から NH2 へ H⁺ が移動(中和)し, 分子内塩となる. このように, 分子内に正電荷と負電荷をもつイオンを双性イオンという. 双性イオン(示意) 双性イオンがクーロン力でイオン結晶を作るため, 無機化合物の塩の性質をもつ. → 白色結晶で, 有機化合物としては融点が高い(200℃以上). → 極性の大きい水にはイオンとなって溶けるが, 有機溶媒には溶けにくい. ※ 中性分子の状態のアミノ酸は実際にはほとんど存在しない.   結晶中でも水溶液中でも, アミノ酸は双性イオンの状態で存在している. ③ ニンヒドリン水溶液と温めると, 赤紫~青紫色に呈色する(ニンヒドリン反応). ④ カルボキシ基はアルコールでエステル化され, 酸の性質がなくなる. R–CH(NH2)–COOH + R′–OH →(エステル化)→ R–CH(NH2)–COOR′ + H2O (エステル結合) ⑤ アミノ基は無水酢酸 (CH3CO)2O でアセチル化され, 塩基の性質がなくなる. R–CH(NH2)–COOH + (CH3CO)2O →(アセチル化)→ R–CH(NH–COCH3)–COOH + CH3COOH (アミド結合) シスチンとその立体異性体 システインは, 側鎖のチオール基 −SH が空気中の O2 等で容易に酸化され(相手を還元), ジスルフィド結合 −S–S− をもつシスチンに変化する. シスチン(−S–S− の対称面示意) シスチンは2個の不斉炭素原子 C* をもつので最大で 2²=4 種の立体異性体が存在しうるが, 分子内に対称面が存在するため, そのうち2種は実像と鏡像が重なる同一物(メソ体)である. よって, シスチンの立体異性体は 2²−1=3 種類である.

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