
アミロペクチンの枝分かれの数の推定
アミロペクチンの1分子あたりの枝分かれの数を推定することを考える.
アミロペクチン
まず, アミロペクチンのすべてのOH基をメチル化し, メトキシ基 – OCH3 にする.
続いて, これを希硫酸で加水分解する.
このとき, メトキシ基は加水分解されずにそのまま残る.
一方で, グリコシド結合していた部分は, 加水分解されてOH基に戻る.
ただし, 反応性が大きいDの1位のメトキシ基もOH基に戻るため, D’=B’となる.
結局, A, B, C, Dの各部分が下のような加水分解生成物A’, B’, C’, D’として生じる.
A’ 分子量 236
B’ 分子量 222
C’ 分子量 208
D’ 分子量 222
アミロペクチンの枝分かれの数を求めることは, C’ の個数を求めることに等しいのである.
分子式 A’ : C10H20O6 B’ = D’ : C9H18O6 C’ : C8H16O6 D’ : C9H18O6
C = 12, H = 1, O = 16より各分子量が求まるが, C6H12O6 = 180 を基準に求めるのが本質的である.
1つのOH基が OCH3 基に変化するにつき, CH2 = 14 だけ分子量が増加する.
4つのOH基が OCH3 基に変化した A’ の分子量は, 180 + 14×4 = 236 である.
3つのOH基が OCH3 基に変化した B’ の分子量は, 180 + 14×3 = 222 である.
2つのOH基が OCH3 基に変化した C’ の分子量は, 180 + 14×2 = 208 である.
平均分子量 5.10×10^5 のデンプン 6.50 g の全てのOH基を CH3O 基に変換した後, 酸で単糖にまで加水分解したところ, 3種の単糖A〜Cが生じ, Aは 0.349 g, Bは 7.56 g, Cは 0.307 g であった.
なお, AとCの物質量比は, ほぼ 1:1 であった.
このデンプン1分子に含まれる枝分かれの数を求めよ. [お茶の水女子大・改]
A 0.349 g / 236 g/mol ≈ 0.00148 mol
B 7.56 g / 222 g/mol ≈ 0.0341 mol
C 0.307 g / 208 g/mol ≈ 0.00148 mol
よって, 物質量比は A : B : C = 0.00148 : 0.0341 : 0.00148 ≈ 1 : 23 : 1
重合度を n とすると 162 n = 5.10×10^5 より n ≈ 3.148×10^3
∴ 枝分かれの数は 3.148×10^3 × 1 / (1 + 23 + 1) ≈ 1.259×10^2 = 1.26×10^2 個
本問で生じた単糖A〜Cは, 先に述べた単糖A’〜C’ (分子量236, 222, 208) のいずれかである.
まず, 本問の単糖A〜Cがどの分子量の単糖であるかを考える.
下に示した概念図からわかるように, 加水分解によって最も多く生じるのは B’ である.
よって, 本問の単糖の中で最も質量が多い B が B’ (分子量222) に対応する.
また, 枝分かれ1つにつき A’ が1個増えるから, A’ は C’ よりも常に1つだけ多く存在する.
よって, A’ と C’ の物質量はほぼ等しい.
A の質量が C より大きいことを考慮すると, A が A’ (分子量236), C が C’ (分子量208) に対応する.
質量を物質量に変換した後, 物質量比を求める.
当然, A と C の物質量比は 1:1 になるはずである.
1:23:1 から, グルコース25単位につき1個の C (枝分かれ) があることがわかる.
(C6H10O5)_n = 162 n = (平均分子量) より, 重合度 (デンプン1分子中のグルコースの個数) が求まる.
この 1/25 が C の個数, すなわち枝分かれの数である.
