糖類}} 多くが一般式で表される.\ 米やパンに多く含まれている. \\[.2zh]
とも表せるので,\ \textbf{\textcolor{blue}{炭水化物}}(炭素と水の化合物)とも呼ばれる. \\\\[1zh]
\textbf{\textcolor{blue}{構成単位数による糖の分類}} \\[1zh]
\textbf{\textcolor{blue}{単糖}} \textbf{\textcolor{magenta}{それ以上加水分解されない糖.}} \\[.2zh]
\textbf{\textcolor{blue}{二糖}} 加水分解によって\textbf{\textcolor{magenta}{単糖2分子}}が生じる糖. \\[.2zh]
\textbf{\textcolor{blue}{少糖}} 加水分解によって\textbf{\textcolor{magenta}{単糖2\,~\,10分子}}が生じる糖.\ \textbf{オリゴ糖}ともいう. \\
{\small (オリゴはギリシャ語で『少ない』の意)} \\[.2zh]
\textbf{\textcolor{blue}{多糖}} 加水分解によって\textbf{\textcolor{magenta}{多数の単糖}}が生じる糖.\ \textbf{\textcolor{Purple}{高分子化合物}}. \\\\\\[1zh]
\textbf{\textcolor{blue}{代表的な単糖}} \\[1zh]
\textbf{\textcolor{blue}{グルコース(ブドウ糖)の立体構造と水溶液中での平衡状態}} \\[-2zh]
グルコース(鎖状構造)}} \\
(極少量)
最も代表的な単糖がグルコースで,\ 出題率\text{No.1}である.\ 語尾は糖を意味する\ \text{-\,ose}\,(オース)である. \\[.2zh]
天然に大量に存在しており,\ ぶどうに多く含まれることから葡萄(ブドウ)糖とも呼ばれる. \\[.2zh]
最も重要な生体のエネルギー源の1つである. \\[1zh]
\bm{結晶中では\,\alpha\,か\,\beta\,の環状構造をとるが,\ 水溶液中では\,\alpha,\ 鎖状,\ \beta\,の平衡状態になる.} \\[.2zh]
割合は温度によって変わるので,\ ここで示した数値は参考程度で覚える必要はない. \\[.2zh]
ただし,\ \bm{\beta\,の割合が大きいことと鎖状構造の割合が非常に小さい}ことは重要である. \\[1zh]
グルコースは,\ \alpha,\ 鎖状,\ \beta\ の構造式をいずれも書けるようにしておく必要がある. \\[.2zh]
環状グルコースの場合,\ まず\bm{右上が\ce{O},\ その他が\ce{C}の六角形}を書く. \\[.2zh]
6個の\ce{C}原子を区別するため,\ \bm{右端の\ce{C}原子から時計回りに番号をつけ,\ 1位,\ 2位,\ \cdots\ と呼ぶ.} \\[.2zh]
さらに,\ \bm{5位の\ce{C}から枝分かれさせた\ce{C}\,(6位)を書くと骨格が完成する}. \\[.2zh]
環をつくる\ce{C}は省略して書くことも多いので,\ 構造式を解答する場合は問題の指定に従う. \\[.2zh]
糖類の構造式は\bm{立体構造を考慮して書く}必要があり,\ \bm{\textcolor{red}{4個の\ce{OH}基の立体配置}}が特に重要である. \\[.2zh]
一般に,\ 1位の\ce{OH}基が六角形の面に対して6位の\ce{C}と逆側ならば\,\alpha\,形,\ 同じ側ならば\,\beta\,形という. \\[.2zh]
人それぞれ覚えやすいように覚えればよいが,\ 各構造式を個別に丸暗記してもすぐに忘れてしまう. \\[.2zh]
まず\,\beta\,\text{–}\,グルコースを覚え,\ 他は\bm{\,\beta\,\text{–}\,グルコースとの違いを覚える}ことを推奨する. \\[.2zh]
\bm{「\,\beta\,\text{–}\,グルコースは1位の\ce{C}から\bm{\textcolor{red}{上下上下}}と交互に\ce{OH}基をつけ,\ \alpha\,は1位の\ce{C}の上下が逆」} \\[.2zh]
後は6位の\ce{C}にも\ce{OH}基をつけ,\ 残った部分に\ce{H}をつけて完成である. \\[1zh]
\bm{1位の\ce{OH}基の\ce{H}が環内の\ce{O}原子に転位すると,\ エーテル結合が切れ,\ 鎖状構造になる.} \\[.2zh]
\bm{1位の\ce{CO}間は二重結合となり,\ ホルミル基\,\ce{- CHO}ができる.} \\[.2zh]
環状でなければ単結合は回転できるので,\ \ce{- CHO}の\,=\hspace{-.2zw}\ce{O}と\,\ce{- H}はどちらを上に書いてもよい. \\[.2zh]
逆に,\ 環状の単結合は回転できないので,\ 鎖状構造の経由なしに直接\,\alpha\ce{<=>}\beta\,の変形は起こらない. \\[1zh]
さて,\ \bm{単に「グルコース」というと鎖状構造のものを指す}ことに注意する. \\[.2zh]
電気陰性度\ce{O}>\ce{C}より,\ \bm{鎖状構造のホルミル基の\ce{C=O}間には大きな電荷の偏りがある.} \\[.2zh]
また,\ \bm{\ce{OH}基の\ce{O}は非共有電子対をもち,\ 正に帯電した部分と結合しようとする性質がある.} \\[.2zh]
それゆえ,\ 鎖状構造のグルコースは,\ \bm{ホルミル基の\ce{C=O}に\ce{OH}基が付加して閉環する.} \\[1zh]
\scalebox{.98}[1]{一般に,\ \textbf{アルデヒドやケトンの\ce{C=O}にアルコールの\ce{OH}基が付加するとヘミアセタール構造が生じる.}} \\[.2zh]
C-O-C-O-C}のように,\ 1つの\ce{C}原子が2つのエーテル結合をもつ有機化合物をアセタールという. \\[.2zh]
C-O-C-O-H}のように,\ 一方の\ce{C}が\ce{H}になった部分をヘミアセタール構造という. \\[.2zh]
つまり,\ \bm{1つの\ce{C}原子がエーテル結合\,\ce{- O -}\,と\,\ce{OH}基をあわせもつのがヘミアセタール構造}である. \\[.2zh]
ヘミ(\text{hemi})は半分を意味するギリシャ語である. \\[1zh]
環状グルコースは,\ \bm{ヘミアセタール構造の部分が水溶液中で開環してホルミル基を生じる.} \\[.2zh]
ホルミル基をもつ鎖状構造との平衡状態になるため,\ グルコース水溶液は\bm{還元性を示す.}
%ヘミアセタールがアルコールと脱水縮合するとアセタール結合ができる(アセタール化). \\
フルクトース(果糖)の立体構造と水溶液中での平衡状態}} \\[-2.5zh]
フルクトースは,\ 果実に多く含まれるので果糖(\text{fruit sugar})とも呼ばれる. \\[.2zh]
\bm{天然の糖の中では最も甘く},\ スクロースよりもさらに甘い. \\[1zh]
フルクトースは,\ 水溶液中では\bm{5形態の平衡状態}となる. \\[.2zh]
\bm{割合が高い\,\beta\,(六員環),\ 鎖状,\ \beta\,(五員環)が重要}で,\ 構造式を書けるようにしておく必要がある. \\[.2zh]
多くの教科書等ではこの3形態しか示されていないが,\ 上級者は5形態を把握しておいてほしい. \\[.2zh]
といっても,\ \alpha\,形は\,\beta\,形の2位の\ce{C}の上下を入れ替えただけである. \\[1zh]
グルコースは6位の\ce{C}の上につけたが,\ \bm{\beta\,\textbf{–}\,フルクトースは一番右の\ce{C}の下に\ce{CH2OH}をつける.} \\[.2zh]
その結果,\ グルコースとは違って,\ \bm{この\ce{CH2OH}の\ce{C}が1位になる}ことに注意する. \\[.2zh]
後は,\ \bm{2位\,~\,5位の\ce{C}に\bm{\textcolor{red}{上上下下}}の順で\ce{OH}基をつける}と\,\beta\,\text{–}\,フルクトース(六員環)となる. \\[1zh]
\beta\,(五員環)は,\ まず一番上が\ce{O},\ その他が\ce{C}の五角形を書く. \\[.2zh]
次に,\ \bm{右端の\ce{C}の下と左端の\ce{C}の上に\ce{CH2OH}をつける.} \\[.2zh]
後は,\ \bm{2位\,~\,4位の\ce{C}に\bm{\textcolor{red}{上上下}}の順で\ce{OH}基をつける}と\,\beta\,\text{–}\,フルクトース(五員環)となる. \\[1zh]
環状フルクトースは,\ 環状グルコースと同様にヘミアセタール構造の部分で開環し,\ 鎖状構造となる. \\[.2zh]
2位の\ce{C}の下が\ce{H}ではなく\ce{CH2OH}なので,\ ホルミル基ではなく\,\alpha\,\text{–}\,ヒドロキシケトンができる. \\[.2zh]
この構造は,\ 下のようにホルミル基をもつ構造との平衡状態を作る(ケト-エノール互変異性). \\[1zh]
ホルミル基}} \\[-2zh]
ケト形 エノール形(不安定) ケト形} \\[1zh]
結果として,\ \bm{鎖状構造中にホルミル基をもたないフルクトース水溶液も還元性を示す.} \\[.2zh]
結局,\ \bm{環状構造にヘミアセタール構造をもつか否かが還元性をもつか否かの基準になる}のである. \\[1zh]
鎖状構造の\bm{\alpha\,\textbf{–}\,ヒドロキシケトン中の\ce{CO}基に6位か5位の\ce{C}の\ce{OH}基が付加すると環状になる.} \\[.2zh]
つまり,\ 六員環と五員環の違いは,\ 6位と5位のどちらの\ce{C}の\ce{OH}基が付加するかの違いである.
ガラクトースの立体構造と水溶液中での平衡状態ガラクトースは,\ \bm{グルコースの4位の\ce{C}の上下を入れ替えただけの単糖}である.
単糖類の性質}} 還元性あり.}} \\[.2zh]
\ \ \textbf{\textcolor{red}{フェーリング反応}} \textbf{\textcolor{forestgreen}{単糖1\,mol}あたり\textcolor{red}{1\,molの\ce{Cu2O}\,(赤色)}}が生じる. \\[.2zh]
\ \ \textbf{\textcolor{red}{銀鏡反応}} \textbf{\textcolor{forestgreen}{単糖1\,mol}あたり\textcolor{gray}{2\,molの\ce{Ag}}}が生じる. \\[.7zh]
\maru2\ \ 親水性の\ce{OH}基を複数もつため,\ \textbf{\textcolor{red}{水によく溶ける}}.\ 有機溶媒には溶けない. \\[.7zh]
\maru3\ \ \textbf{無色結晶で甘みがある.} 甘さ比較 $フルクトース>スクロース>グルコース$ \\[-.2zh]
{\small (単糖) \ (二糖) (単糖)} \\[-.5zh]
\maru4\ \ \textbf{\textcolor{blue}{アルコール発酵}} \\[.5zh]
\ \ 単糖は酵素群(\textbf{\textcolor{cyan}{チマーゼ}})の作用で,\ \textbf{\textcolor{red}{エタノールと二酸化炭素}}に分解される. \\[.2zh]
\ \ 酒類の製造や,\ 工業的にエタノールを生成する際に利用される. \\[.2zh]
\ \ \textbf{\ce{C6H12O6 -チマーゼ}},チマーゼ:酵母中の酵素の総称
還元性を示すホルミル基をもつ鎖状構造の糖は,\ 水溶液中では少量しか存在しない. \\[.2zh]
しかし,\ \bm{酸化されて鎖状構造が減ると,\ 直ちにそれを増やす方向に平衡が移る(ルシャトリエの原理).} \\[.2zh]
十分量のフェーリング液やアンモニア性硝酸銀水溶液を加えると,\ 結局はすべての糖が酸化される. \\[.2zh]
よって,\ このとき生じた\ce{Cu2O}や\ce{Ag}の質量から糖を定量することができる. \\[1zh]
糖\ce{R-CHO}\,(アルデヒド)は相手を還元するから,\ 自身は酸化されてカルボン酸\ce{R-COO-}になる. \\[1zh]
[酸化剤]\ \ \ce{2Cu^2+ + 2e- + 2OH- -> Cu2O v + H2O}\ \ \cdots\cdots\,\maru1 (フェーリング液) \\[.4zh]
[還元剤]\ \ \ce{R-CHO + 3OH- -> R-COO- + 2H2O + 2e-}\ \ \cdots\cdots\,\maru2 \\[.4zh]
\maru1+\maru2より \ce{R-CHO + 2Cu^2+ + 5OH- -> R-COO- + Cu2O v + 3H2O} \\[1zh]
[酸化剤]\ \ \ce{[Ag(NH3)2]+ + e- -> Ag v + 2NH3}\ \ \cdots\cdots\,\maru3 (アンモニア性硝酸銀水溶液) \\[.4zh]
\maru3\times2+\maru2より \ce{R-CHO + 2[Ag(NH3)2]+ + 3OH- -> R-COO- + 2Ag v + 4NH3 + 2H2O}
炭素原子6個}}} & \textbf{\textcolor{blue}{ヘキソース}}(\textbf{六炭糖}) \\
& \rei\ \ グルコース,\ フルクトース,\ ガラクトース (すべて\ce{C6H12O6}) \\\hline
\multirow{2}*{\textbf{\textcolor{red}{炭素原子5個}}} & \textbf{\textcolor{blue}{ペントース}}(\textbf{五炭糖}) \\
& \rei\ \ リボース(\ce{C5H10O5}),\ \ デオキシリボース(\ce{C5H10O4}) \\\hline
環を作る原子6個}} & \textbf{\textcolor{blue}{ピラノース形}}(\textbf{六員環構造}) \rei\ \ $\alpha$\,–\,フルクトース \\\hline
\textbf{\textcolor{red}{環を作る原子5個}} & \textbf{\textcolor{blue}{フラノース形}}(\textbf{五員環構造}) \rei\ \ $\beta$\,–\,フルクトース \\\hline
鎖状構造がホルミル基をもつ}} & \textbf{\textcolor{blue}{アルドース}} \rei\ \ グルコース,\ ガラクトース \\\hline
\textbf{\textcolor{red}{鎖状構造がカルボニル基をもつ}} & \textbf{\textcolor{blue}{ケトース}} \rei\ \ フルクトース
ヘキソース,\ ペントースは,\ もちろんギリシャ語の「6:ヘキサ\,」「5:ペンタ\,」に由来する. \\[.2zh]
リボースは\text{RNA},\ デオキシリボースは\text{DNA}の構成要素で,\ 後に核酸の項目で詳しく学習する. \\[1zh]
同じ六炭糖でも,\ 六員環と五員環の両方が存在する場合がある.\ その代表がフルクトースである. \\[.2zh]
ピラノースとフラノースは,\ それぞれピラン(左),\ フラン(右)に由来する. \\[-1zh]
アルドースは,\ ホルミル基をもつ有機化合物の総称アルデヒドに由来する. \\[.2zh]
ケトースは,\ カルボニル基をもつ有機化合物の総称ケトンに由来する.
単糖類の正確な立体構造}} \\[1zh]
これまで,\ 単糖の六員環構造を正六角形に近い形で表記してきた(ハース投影式). \\[.2zh]
正確には,\ 六員環は平面ではなく,\ \ce{C}の結合角が109.5$\Deg$となる\textbf{\textcolor{blue}{いす型構造}}をとっている. \\[.2zh]
置換基が垂直方向(縦線の結合)に,\ 同じ側に多いほど,\ 立体反発が大きくなる.}} \\[.2zh]
グルコースは2,\ 3,\ 4位の\ce{C}に\ce{OH}がほぼ水平方向に結合しており,\ 立体反発が小さい. \\[.2zh]
安定な立体構造ゆえ,\ \ce{C6H12O6}\,の立体異性体の中でグルコースが天然に最も多く存在する. \\[.2zh]
さらに,\ 1位の\ce{OH}も水平方向に結合した$\beta$が$\alpha$よりも安定で,\ 存在割合が高くなる. \\\\
\ce{C}の結合角は,\ 正四面体構造をとる\ce{CH4}\,の場合と同じ109.5\Deg\,となるときが最も安定する. \\[.2zh]
正六角形(平面)は内角が120\Deg なので不安定であり,\ 3次元的構造で安定できる. \\[.2zh]
右の舟型なども存在するが,\ 立体反発が大きく不安定で,\ ほとんどがいす型をとる. \\[-5zh]
単糖類の正体と異性体}} \\[1zh]
下図中央のような6価アルコール(フィッシャー投影式による表記)について考える. \\[.2zh]
\textbf{1位の\ce{C}}に着目すると\textbf{第1級アルコール}なので,\ この\ce{C}の酸化で\textbf{アルデヒド}が生成する. \\[.2zh]
\textbf{2位の\ce{C}}に着目すると\textbf{第2級アルコール}なので,\ この\ce{C}の酸化で\textbf{ケトン}が生成する. \\[.2zh]
つまり,\ 単糖類(鎖状構造)は,\ \textbf{\textcolor{red}{多価アルコールの酸化生成物}}に他ならない. \\[.2zh]
そして,\ \textbf{\textcolor{Purple}{酸化される\ce{C}の位置によってアルドースかケトースかが決まる.}} \\[.2zh]
下例の6価アルコールの酸化生成物がグルコースとフルクトースである. \\[.2zh]
\textbf{鎖状グルコースは4個,\ 鎖状フルクトースは3個の不斉炭素原子をもつ.鎖状グルコースは$\bm{2^4=16}$種,\ 鎖状フルクトースは$\bm{2^3=8}$種の立体異性体をもつ.}}} \\
上図のような不斉炭素原子まわりの立体配置を表現する表記法をフィッシャー投影式という. \\[.2zh]
最も酸化度の高い官能基が一番上になるようにして主炭素鎖が縦に書かれている. \\[.2zh]
各不斉炭素原子の上下は紙面奥,\ 左右は紙面手前へ突き出ている結合を表す. \\[.2zh]
立体配置も表す表記なので,\ 普通の構造式とは異なり,\ 結合原子の位置を変えると別物になる. \\[.2zh]
以下のように,\ くさび形表記との関係に基づくと理解しやすい. \\[.2zh]
くさび形表記は,\ 紙面手前に突き出ている結合はくさび形,\ 紙面奥に突き出ている結合は波線で表す. \\単糖類の場合,\ ハース投影式の下側の置換基がフィッシャー投影式の右側にきている}点が重要である.
不斉炭素原子が複数個あるとき,\ 立体異性体は鏡像異性体とジアステレオマーに区別される.}}} \\
上図中央が教科書に載っている鎖状グルコースのフィッシャー投影式である. \\[.2zh]
鏡に映したように左右を逆にして書くと,\ その鏡像異性体(エナンチオマー)ができる(左). \\[.2zh]
\bm{\dot{す}\dot{べ}\dot{て}\dot{の}不斉炭素原子の左右を入れかえたもの}になっている点が本質的に重要である. \\[.2zh]
単糖(鎖状構造)の鏡像異性体は,\ \ce{CHO}から最も遠い不斉炭素原子(グルコースの場合は5位)と \\[.2zh]
結合した\ce{OH}基が右側にくるとき\text D型,\ 左側にくるとき\text L型と定められている. \\[.2zh]
なお,\ \bm{天然に存在する単糖類はほとんどが\textbf D型}である. \\[1zh]
\text{D\,–\,グルコース}の4位の不斉炭素原子の左右を入れ替えると\text{D\,–\,ガラクトース}になる. \\[.2zh]
この2つは立体異性体だが,\ 鏡像ではない.\ 鏡像関係にない立体異性体を\bm{ジアステレオマー}という. \\[1zh]
\text{D\,–\,グルコース}には2^4=16種の立体異性体(8種の\text D型と8種の\text L型の鏡像異性体)が存在する. \\[.2zh]
つまり,\ \text{D\,–\,グルコース}と\text{L\,–\,グルコース}のような互いに鏡像異性体であるペアが8組ある. \\[.2zh]
鏡像異性体の関係にない立体異性体とはすべてジアステレオマーの関係である.
\textbf{5個の不斉炭素原子をもつ}から,\ \ \textbf{\textcolor{magenta}{環状グルコースは$\bm{2^5=32}$種の立体異性体をもつ.}} \\[1zh]
環状になると1位の\ce{C}も不斉炭素原子になる(右回りと左回りで原子の結合順序が異なる). \\[.2zh]
\alpha\,\text{–}\,グルコースと\,\beta\,\text{–}\,グルコースは,\ 原子の結合順序は同じなので構造異性体ではない. \\[.2zh]
\ce{OH}基の立体配置が異なる立体異性体で,\ 鏡像ではないからジアステレオマーの関係である. \\[1zh]
鏡像の\,\text{$\alpha$\,–\,L\,–\,グルコース}を六員環が\text D型と重なるように裏返すと右になる. \\[.2zh]
このときの\ce{CH2OH}が5位の\ce{C}の上側か下側かで\text D型か\text L型かが決まる. \\[.2zh]
\text D型の\dot{す}\dot{べ}\dot{て}\dot{の}不斉炭素原子の上下を入れかえたものになっている. \