合成繊維(ナイロン、アラミド、ポリエステル、アクリル)

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gouseiseni@2x
ポリアミド系繊維(ナイロン)アミド結合{- CO-NH -}の繰り返しによる高分子) ナイロン66(6,6–ナイロン) {ヘキサメチレンジアミンアジピン酸アミド結合{縮合重合} 特徴} 天然の絹に似た肌触りや光沢をもつ世界初の合成繊維. 高強度,\ 高弾力性,\ 耐摩耗性,\ 耐薬品性がある. 用途} 衣類,\ ロープ,\ 歯ブラシ. \実験室での合成手順 {アジピン酸ジクロリドを有機溶媒(ベンゼンやヘキサンなど)に溶かす. 別のビーカーに水を入れ,\ 水酸化ナトリウムとヘキサメチレンジアミンを溶かす. 一方の溶液を他方のビーカーにガラス棒を伝わらせて静かに加える. 境界面にできるナイロン66の薄膜をピンセットで引き上げ,\ 試験管などで巻き取る. 6個(ヘキサ)のメチレン基({- CH₂ -})と2個(ジ)のアミノ基({- NH₂}). ナイロン66の6,\ 6は,\ ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の炭素数である. ナイロン66は,\ 繰り返し単位一つあたり,\ 2個のアミド結合をもつ. 分子間の{NH}と{CO}との間で多くの{水素結合}を作るため,\ 強固な繊維となる. ナイロンは,\ 昔はデュポン社(米)の登録商標であったが,\ やがてポリアミド系繊維の総称となった. 天然繊維の絹は,\ タンパク質からなる高分子である. また,\ タンパク質はペプチド結合(アミド結合の一種)をもつ. よって,\ 同じアミド結合をもつナイロンは絹と似た性質をもつ. アジピン酸ジクロリドはアジピン酸よりも反応性が大きいため,\ 加熱や加圧が不要になる. 比重が1より大きい有機溶媒を用いるときは,\ のビーカーにを注ぐ(上が水層,\ 下が有機層). 比重が1より小さい有機溶媒を用いるときは,\ のビーカーにを注ぐ(上が有機層,\ 下が水層). アジピン酸ジクロリドとの重合反応では,\ H₂Oではなく{HCl}が生成する. 塩基(水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウム)を加え,\ {HCl}を中和して反応系から取り除く. 平衡が右に移動するから,\ ナイロン66の生成が促進される(ルシャトリエの原理). 2つの溶液の境界における縮合重合を界面重合という. ナイロン6(6-ナイロン,カプロラクタム{開環重合}] {C}6個をもつ直鎖カルボン酸\ {CH₃-CH₂-CH₂-CH₂-CH₂-COOH}\ の慣用名を{カプロン酸}という. 1分子中にカルボキシ基\ {- COOH}\ とアミノ基\ {- NH₂}\ を合わせもつ化合物をアミノ酸という. カルボキシ基から近い順に,\ 炭素を\ α,\ β,\ γ,\ δ,\ \varepsilon(イプシロン)位とする. {H₂N-CH₂-CH₂-CH₂-CH₂-CH₂-COOH}は,\ \varepsilon位にアミノ基をもつ\ {\varepsilon–}アミノカプロン酸}である. 環状のアミド結合をもつ化合物を{ラクタム}という. \varepsilon–}アミノカプロン酸からできるラクタムカプロラクタム}というわけである. ナイロン6はナイロン66と同様の脂肪族ポリアミドであり,\ 性質・用途も類似している. {ポリ–${p}$–フェニレンテレフタルアミド(代表的なアラミド繊維) \p-フェニレンジアミン {テレフタル酸ジクロリド}{ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド(ケブラー) 特徴} 超高強度,\ 超高弾力性,\ 耐熱性. 用途} 消防服,\ 防弾チョッキ,\ 安全手袋. 脂肪族ポリアミドであるナイロンと区別するため,\ 芳香族ポリアミドを{アラミド}と名付けた. ケブラーはデュポン社(米)の登録商標である. {ポリエステル系繊維(エステル結合{- COO -}の繰り返しによる高分子) [{ポリエチレンテレフタラート(PET) {ポリエチレンテレフタラート(PET) 特徴} 親水基をもたないため,\ 吸湿性が低い(速乾性が高い). 硬くてしわになりにくい,\ 耐熱性,\ 耐摩耗性. 用途} 合成繊維として衣類(フリース),\ 合成樹脂としてペットボトル,\ 包装フィルム. 同じ合成高分子化合物でも,\ 樹脂状に加工すると合成樹脂,\ 繊維状に加工すると合成繊維となる. {アクリル繊維 \アクリロニトリル {付加重合]} ポリアクリロニトリル(PAN){特徴} 軽い,\ 軟らかい,\ 保湿性,\ 羊毛に類似,\ 燃焼で有毒なシアン化水素{HCN}が発生. 用途} セーター,\ 毛布,\ カーペット. PANを高温で処理すると,\ ほぼ炭素だけの炭素繊維(カーボンファイバー)になる. 特徴} 高強度・高弾性・耐熱性・耐薬品性. 用途} ゴルフクラブ,\ テニスラケット,\ 釣り竿, 飛行機の翼. PAN}単独では染色性が悪いため,\ アクリル酸メチルや酢酸ビニルなどと共重合させることが多い. 塩化ビニルや塩化ビニリデンと共重合させたものは{アクリル系}繊維}と呼ばれる. 難燃性が高いことが大きな特徴であり,\ カーテンやカーペットに用いられる. なお,\ アクリル樹脂はPAN}ではなく,\ ポリメタクリル酸メチル(PMMA})のことである. 以下の問いに整数値で答えよ. ${C}=12,\ {H}=1.0,\ {N}=14,\ {O}=16$  分子量$3.010⁴$のナイロン66分子1個に含まれるアミド結合は何個か.  ポリエチレンテレフタレート1.0kgを合成するときに必要なテレフタル酸の 質量を求めよ.  100gのテレフタル酸と100gのエチレングリコールを完全に反応させてポリエ チレンテレフタレートを合成したときに発生する水の質量を求めよ. $重合度\ {3.010⁴}{226}\ より,\ 分子1個中のアミド結合は {3.010⁴}{226}2}{265個}$ 重合度を$n$とすると,\ ポリエチレンテレフタレート1.0kgの物質量は ${1000}{192n}$mol { }重合度$n$のポリエチレンテレフタレート1molは,\ $n$molのテレフタル酸から作られる. { }必要なテレフタル酸の質量は  テレフタル酸の物質量は\ ${100}{166}$mol,\ エチレングリコールの物質量は\ ${100}{62}$molである. { }よって,\ テレフタル酸\ ${100}{166}$molが完全に反応する. { }$n$molのテレフタル酸が反応すると$2n$molの水が生じるから { }発生する水の質量は  ナイロン66[-{- NH-(CH₂)6-NH-CO-(CH₂)4-CO -}-]_n\ の分子量は 226n 分子量3.010⁴のナイロン66分子の重合度nは,\ 226n=3.010⁴より n={3.010⁴}{226} ナイロン66は繰り返し一つあたり2個のアミド結合をもつから,\ これを2倍すればよい. ナイロン66の反応式の右辺は,\ 正確には重合体の両端の{H -},\ {- OH}を考慮して次のようになる.   {-> H -}-[-{- NH-(CH₂)6-NH-CO-(CH₂)4-CO -}-]_n-{- OH}+(2n-1)H₂O 実際には,\ 両端の{H -},\ {- OH}を省略してH₂Oに付け加えた扱いやすい式を用いることが多い.   {->}\ [-{- NH-(CH₂)6-NH-CO-(CH₂)4-CO -}-]_n+2nH₂O 仮に正確な式を使うと,\ 分子量は226n+18となるから次のような計算になる. 226n+18=3.010⁴ より 重合度n={3.010⁴-18}{226} アミド結合の数は発生する水分子の数と等しいから 2n-1=2{3.010⁴-18}{226}-1264 答えが1個ずれるが,\ 高分子化合物分野では許容範囲である. ポリエチレンテレフタレート[-{- CO-C6H4-COO-(CH₂)2-O -}-]_n\ の分子量は 192n ポリエチレンテレフタレートを合成するには,\ n倍の物質量のテレフタル酸が必要になる. PET}の物質量をn倍し,\ さらにテレフタル酸{HOOC-C6H4-COOH}の分子量166を掛ける. nは不明だが,\ 約分によって消える. エチレングリコール{HO-(CH₂)2-OH}の分子量は 62 物質量の多いエチレングリコールは余り,\ 物質量の少ないテレフタル酸は完全に反応する. 反応式より,\ 発生する水の物質量は反応したテレフタル酸の2倍である. よって,\ テレフタル酸の物質量を2倍し,\ さらに水の分子量18を掛ける.