天然ゴムと合成ゴム(IR・BR・CR・SBR・NBR・フッ素ゴム・シリコーンゴム)

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天然ゴム(生ゴム) (natural rubber) ゴムノキから得られる乳白色の樹液をラテックス(疎水コロイド溶液)という. これに酸を加えて凝析させると天然ゴム(生ゴム)になる. 天然ゴムは, イソプレン C5H8 が付加重合したシス形のポリイソプレンである. n イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン) ⇔[付加重合][乾留] […シス-1,4-ポリイソプレン…] n 天然ゴムは, そのままでは機械的強度や弾性が弱く, 実用性がない. また, 空気中の酸化剤 O2, O3 により, C=C が酸化開裂して弾性を失う(ゴムの老化). そこで, 天然ゴムに数%の硫黄 S を加えて加熱(加硫)する. すると, 鎖状分子が C=C の部分で架橋されて立体網目構造を形成し, 弾性や強度が増す. ただし, 燃焼時に有毒ガスの二酸化硫黄 SO2 が発生するようになる. 天然ゴムに3〜8%の硫黄を加えて加熱すると, 弾性ゴム(輪ゴムなど)ができる. 30〜40%を加えた場合は, エボナイト(弾力性のない硬い黒色の樹脂状物質)ができる. アカテツ科の木からは, トランス形のポリイソプレン(グッタペルカ)が得られる. ゴム弾性のない硬い樹脂で, ゴルフボールの外皮や歯科用充填剤として利用されている. イソプレンは, 単結合と二重結合が交互に連なる結合(共役二重結合)をもつ. また, 二重結合(エン-ene)を2個もつ化合物をジエンという. ジエンを付加重合させると, どの二重結合が反応しやすいかで異なる重合体が生成しうる. イソプレンは, 2つの二重結合が同程度に反応しやすい. よって, 1位と4位のCで重合し, 二重結合が中央に移動する1,4-付加が最も起こりやすい. 1,4-付加によるポリイソプレンには, シス-トランス異性体が存在する. ポリイソプレンを人工的に合成するとき, 少ない割合ながら1,2-付加や3,4-付加も起こる. 熱可塑性樹脂は, 力を加えると変形し, 加えた力を除いたときに元に戻らない(塑性). これに対し, ゴムのように加えた力を除くと元に戻る性質を弾性という. シス形のポリイソプレンは, 分子全体が丸まった構造が安定している(エントロピー大). 分子同士が近づきにくいので, 分子間力が小さく結晶化が起こらず, 軟らかい物質となる. また, C=C は回転できないが C-C が回転できるため, 外力を加えると伸ばすことができる. 分子が一方向に揃った状態(エントロピー小)となるが, 外力を除くと分子の熱運動により縮む(弾性). トランス形のポリイソプレンは, 分子が直線状で強い分子間力がはたらくため, 硬く弾性を示さない. 合成ゴム (synthetic rubber) ① ブタジエンゴム(BR) n 1,3-ブタジエン →[付加重合] […ブタジエンゴム(BR)…] n 特徴 耐摩耗性, 耐寒性, 耐熱性. 用途 タイヤ, ホース, スーパーボール, 他のゴムとのブレンド. ② イソプレンゴム(IR) n イソプレン →[付加重合] […イソプレンゴム(IR)…] n 特徴 高強度. 天然ゴムと似た性質(同じ単量体だが, シス形とトランス形が混在). 用途 タイヤ, 防振ゴム, 長靴. ③ クロロプレンゴム(CR) n クロロプレン →[付加重合] […クロロプレンゴム(CR)…] n 特徴 耐候性, 耐熱性, 難燃性. 用途 コンベアーベルト, 被覆材, ゴム引布. クロロプレンは, 2-クロロ-1,3-ブタジエン である. Cl は, 電気陰性度(電子を引き寄せる強さ)が高い. よって, O2 によって電子を奪われにくく(酸化されにくく), Cl を含む高分子化合物は燃えにくい. ④ スチレン-ブタジエンゴム(SBR) m スチレン + n 1,3-ブタジエン →[共重合] […SBR…] 特徴 バランスが取れた特性. 耐熱性, 耐久性, 耐摩耗性, 機械的強度大. 用途 タイヤ, 工業用品, 靴底, 他のゴムとのブレンド. 2種類以上の単量体による付加重合を共重合という. 実際には2種類の単量体はランダムに並んでおり, m個, n個がそれぞれ連続しているわけではない. 一般に, ベンゼン環を含む高分子化合物は硬く, 強度が大きくなる. ⑤ アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR) (Nはニトリルの頭文字) m アクリロニトリル + n 1,3-ブタジエン →[共重合] […NBR…] 特徴 耐油性, 耐寒性, 耐摩耗性, 耐熱性. 用途 石油ホース, パッキング, 接着剤. シアノ基(ニトリル基) -C⁺≡N⁻ は強い極性をもつため, 親水性の官能基である. 無極性の油分子の浸透を妨げるため, アクリロニトリルの割合が多くなるほど耐油性が高くなる. 分子間相互作用が大きくなり, 耐熱性も増す. ブタジエンの割合が多くなると, 弾性が増して割れにくいゴムになる. ⑥ フッ素ゴム m フッ化ビニリデン + n ヘキサフルオロプロピレン →[共重合] […フッ素ゴム…] 特徴 耐老化性, 耐熱性, 耐油性, 耐薬品性. 用途 電気部品, ホース, シール材, Oリング. ⑦ シリコーンゴム(ケイ素ゴム) ジクロロジメチルシラン →[加水分解]→ ジメチルシラノール →[縮合重合] […シリコーンゴム…] 特徴 耐老化性, 耐熱性, 耐寒性, 耐薬品性, 電気絶縁性. 用途 シール, 水泳帽, 人工血管, 電気絶縁材料. 炭素Cと同じ14族のケイ素Siの水素化物 SiH4 をシランという. ケイ素をシリコン(silicon), ケイ素を含む化合物の総称をシリコーン(silicones)という. シリコーンのうち, 立体網目構造のものがシリコーン樹脂, 鎖状構造のものがシリコーンゴムである. メチル基 -CH3 の一部をビニル基 -CH=CH2 で置き換えると加硫でき, 実用性が増す. 二重結合 C=C をもたないフッ素ゴムやシリコーンゴムは, 耐老化性に優れている. H=1.0, C=12, N=14, Br=80 (1) 炭素原子の個数 : 窒素原子の個数 = (3m+4n) : m = 19 : 1 より n = 4m ∴ アクリロニトリルの物質量 : ブタジエンの物質量 = m : n = 1 : 4 [物質量(mol)は個数のことであるから, 単純に炭素原子と窒素原子の個数の比を考えればよい.] (2) 臭素 Br2 の物質量に等しいから, ブタジエンの物質量は 2.0 g / 160 g/mol = 1/80 mol ブタジエン C4H6 = 54 の質量は 54 g/mol × 1/80 mol = 27/40 g スチレンの質量は 1.0 – 27/40 = 13/40 g スチレン C8H8 = 104 の物質量は (13/40 g) / (104 g/mol) = 1/320 mol ∴ スチレンの物質量 : ブタジエンの物質量 = 1/320 : 1/80 = 1 : 4 [SBR のブタジエン単位1つにつき1個の二重結合がある. 1個の二重結合に1個の臭素分子が付加するから, 臭素分子の物質量とブタジエンの物質量は等しい.] (3) NBRの分子量は 53×2n + 54×3n = 268n NBRの物質量は 0.536 g / (268n g/mol) = 67 / (33500n) mol 発生する窒素ガスは (67 / (33500n) × 2n × 1/2) mol × 22400 mL/mol = 44.8 mL [アクリロニトリルとブタジエンの物質量比 2 : 3 より, それぞれの重合度を 2n と 3n と設定できる. アクリロニトリル単位 C3H3N = 53, ブタジエン単位 C4H6 = 54 より, NBRの物質量が求まる. NBR分子1個に 2n 個のN原子が含まれる. よって, NBR分子 (67 / (33500n)) mol 中に (67 / (33500n) × 2n) mol のN原子が含まれる. N原子2個でN2分子1個できるから, 窒素分子は (67 / (33500n) × 2n × 1/2) mol 発生する. 1 mol : 22400 mL = (67 / (33500n) × 2n × 1/2) mol : x mL により, 体積に換算できる.]

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