
縦波
媒質の振動方向が波の進行方向と平行である波.
媒質の膨張部分(疎部)と圧縮部分(密部)が交互に伝わるため, 疎密波(そみつは)ともいう.
例 音波, 気柱の振動, 地震P波.
横波
媒質の振動方向が波の進行方向と垂直である波.
例 水面波(注), 弦の振動, 光波(電磁波), 地震S波.
縦波は媒質の密度や体積変化が伝わる波であり, この現象は固体・液体・気体いずれでも生じうる.
横波は媒質のズレに対する復元力によって伝わる波であり, この現象は主に固体で生じる.
光は横波だが, 電場と磁場の振動が伝わる電磁波で, 媒質を必要とせず液体・気体・真空中でも伝わる.
(注) 水面波は, 表面付近の各点が回転運動をする表面波だが, 高校物理では便宜上横波として扱う.
縦波の横波表示
縦波は媒質の振動方向が進行方向と平行なので, 振動の様子や変位が直感的にわかりにくい.
媒質の変位(x軸方向)を反時計回りに90°回転すると, 縦波を横波のように理解できる.
縦波の密部は, 横波表示の山→谷の境界(y=0かつ傾き負)に対応する.
縦波の疎部は, 横波表示の谷→山の境界(y=0かつ傾き正)に対応する.
高校物理では, 波の進行方向によらず同一の基準で横波表示を作図する.
よって, 波がx軸負方向に進む場合でも, 元の縦波と横波表示との疎密の対応関係は変わらない.
便利な覚え方:片仮名の「ミ」と「ソ」の曲線の傾きが, 横波表示の密・疎の瞬間の傾きと似ている.
図はx軸正方向に速さ2.0 m/sで伝わる縦波の時刻t=0 [s]の瞬間の横波表示である.
以下の位置に該当する媒質の点のx座標(0≤x≤8.0)を答えよ.
(1) 媒質の密度が最大の部分
(2) 媒質の密度が最小の部分
(3) 変位がx軸正方向に最大の部分
(4) 振動の速さが0の部分
(5) 振動の速さがx軸負方向に最大の部分
(6) t=1.5 sの瞬間に最も疎になる部分
(7) x=4.0 mの媒質の変位yおよび速度vの時間変化を表すグラフを描け.
(1) x=0, 8.0
(2) x=4.0
(3) x=6.0
(4) x=2.0, 6.0
(5) x=4.0
(6) x=7.0
(7) v=λ/Tより 2.0 m/s=8.0 m/T [s]
よって 周期T=4.0 s
vmax=2πA/T=2·3.14×1.2 m/4.0 s=1.884≈1.9 m/s
(1)(2) どの小問も横波表示のままで解答できる. 疎密は「ソ」「ミ」で瞬時に判断できる.
(3) 縦波のx軸正方向の変位は, 横波表示のy軸正方向の変位に対応する.
(4) 縦波の媒質の各点はx軸方向に単振動しており, 横波表示ではy軸方向の単振動として考える.
単振動はその両端で速さが0となる. 媒質の振動の速さは波の速さとは無関係なので注意する.
(5) 縦波のx軸負方向の振動の速さは, 横波表示のy軸負方向の振動の速さに対応する.
単振動は振動の中心で速さが最大となる. その状態(y=0)にあるのはx=0, 4.0, 8.0である.
微小時間後の波形を考えて媒質の移動方向も調べると, x=4.0の位置が負方向である.
(6) 2.0 m/s×1.5 s=3.0 m分だけ平行移動したときの「ソ」の位置を答える.
(7) t=0, x=4.0のときy=0で, (5)より媒質は負方向に移動中なので, y-t図は-sin型となる.
またこのとき, (5)より媒質の振動の速さは負方向に最大なので, v-t図は-cos型となる.
目盛りを定めるため, 周期Tと速さvの最大値を求める.
振幅Aの単振動の最大速度は, 半径A・周期Tの等速円運動の速度に等しく, 円周長/周期で与えられる.
