正弦波の一般式と波の強さ

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波源 x=0x=0 の単振動から生じる正弦波のGeoGebraアニメーション

正弦波の一般式と波の強さ  正弦波の発生   波源が単振動するとき, 波源x=0のy-t図(変位の時間変化)は正弦曲線(sinカーブ)となり,   その振動が隣の部分に伝わる結果, ある時刻tのy-x図(実際の波形)も正弦曲線となる.   ここで, 単振動は等速円運動の正射影(真横から見た運動)であった(力学で学習済).   よって, 媒質各点の振動段階(変位と速度)を,等速円運動の動径の回転角θで表せる.  位相θ(phase) 媒質が1周期中のどの振動段階か(変位と速度)を一括で表す指標.          角振動数をω[rad/s], 時刻をt[s]とすると θ[rad]=ω[rad/s]×t[s]          ω[rad]:1[s]=2π[rad]:Tより ω=2π/T であるから θ=2πt/T  等速円運動1周 ⇔ 単振動1回 ⇔ 位相が2π進む ⇔ 時間T経過 ⇔ 1波長λ進む  初期位相 原点x=0の時刻t=0における位相で, φ(ファイ)で表す(上図はφ=0の場合).  同位相  2点の振動が同じ段階にあること(2点の位相差 Δθ=0, 2π, 4π, …).  逆位相  2点の振動が逆の段階にあること(2点の位相差 Δθ=π, 3π, 5π, …).  (同位相・逆位相という語は, 異なる波源からの周期が同じ波どうしの場合にも用いられる.) 正弦波の式y(x,t)(φ=0)の導出  前提① 原点Oの媒質の変位の時間変化が y(0,t)=A sin(2πt/T) (上図)であるとする.  前提② 波がx軸正方向に速さv[m/s]で進むとする.  位置xには, 波源x=0の振動が時間x/v[s]だけ遅れて伝わる.  よって, 位置xの時刻tにおける変位yは, 波源x=0の時刻t−x/vにおける変位に等しい.  正方向 y(x,t)=y(0,t−x/v)=A sin{(2π/T)(t−x/v)}=A sin{2π(t/T−x/λ)}  前提②’ 波がx軸負方向に速さv[m/s]で進むとする.  位置xの振動が, 時間x/v[s]だけ遅れて波源x=0に伝わる.  よって, 位置xの時刻tにおける変位yは, 波源x=0の時刻t+x/vにおける変位に等しい.  負方向 y(x,t)=y(0,t+x/v)=A sin{(2π/T)(t+x/v)}=A sin{2π(t/T+x/λ)} [正弦波の式y(x,t)とは, 位置xにある点Pの時刻tにおける変位yの式のことである. 原点x=0にある点Qの時刻tにおける変位y(0,t)=A sin(2πt/T)から, 点Pの変位y(x,t)が導ける. 波がx軸正方向に速さvで進むとき, 点Qの変位が時間x/vかけて点Pに伝わる. よって, 時刻tの時間x/v前の点Qでの変位こそが, 点Pの時刻tにおける変位に他ならない. つまり, y(x,t)=y(0,t−x/v)であり, y(0,t)の式のtをt−x/vに置換するとy(x,t)となる. 波がx軸負方向に速さvで進むとき, 点Pの変位が時間x/vかけて点Qに伝わる. よって, 時刻tの時間x/v後の点Qでの変位こそが, 点Pの時刻tにおける変位に他ならない. つまり, y(x,t)=y(0,t+x/v)であり, y(0,t)の式のtをt+x/vに置換するとy(x,t)となる. 高校物理では, 波の基本公式v[m/s]=λ[m]/T[s]を用いてλで表した式もよく利用する. 上級者は, 角振動数ω=2π/T[rad/s], 波数k=2π/λ[rad/m]を用いた表現も知っておきたい. y=A sin(ωt∓kx) (大学標準) 波数k:1mあたりの位相の回転角. なお, 高校物理では「波数(波の数)」というと単に波のサイクルの個数を指すことが普通なので注意する. また, どの表現も, 前提①を満たす場合にのみ成り立つ. 満たさない場合は以下の一般式を用いる.] 正弦波の一般式y(x,t,φ)  一般には, 原点Oの媒質の単振動が y(0,t)=A sin(2πt/T) (初期位相φ=0)とは限らない.  初期位相がφのとき, 原点Oの媒質の単振動の式は y=A sin(2πt/T+φ)  正方向 y(x,t,φ)=A sin{(2π/T)(t−x/v)+φ}=A sin{2π(t/T−x/λ)+φ}  負方向 y(x,t,φ)=A sin{(2π/T)(t+x/v)+φ}=A sin{2π(t/T+x/λ)+φ} 位置x[m], 時刻t[s]の変位y[m]が y=1.5 sin(π/2.0)(2.0t−x/4.0)で表される波がある. (1) この正弦波の振幅A, 周期T, 振動数f, 速さv, 波長λを求めよ. (2) 時刻t=0[s]とt=1.5[s]における波形を描け. (3) 位置x=0[m]とx=12[m]における変位の時間変化を描け. (1) y=1.5 sin 2π(t/2.0−x/16)として正弦波の式 y=A sin 2π(t/T−x/λ)と比較する.  振幅A=1.5[m] 周期T=2.0[s] 波長λ=16[m]  振動数f=1/T=1/2.0=0.50[Hz] 波の速さv=fλ=8.0[m/s] [正弦波の式を暗記しておき, 与式と比較するのが基本である. 括弧内が−なのでx軸正方向に進む. 与式の括弧内から無理矢理4をくくりだして2πとすると比較できる. y=1.5 sin π(t−x/8.0)としてy=A sin(2π/T)(t−x/v)と比較する場合, 2/T=1, v=8.0となる. 比較した後, 必要があれば波の基本公式v=fλ=λ/T, f=1/Tを用いる.] (2) t=0[s] のとき y=1.5 sin(−πx/8.0)=−1.5 sin(πx/8.0)   t=1.5[s] のとき y=1.5 sin(π/2.0)(3.0−x/4.0)=−1.5 cos(πx/8.0) [数式が与えられている場合, グラフの図示に物理的な考察は必要なく, 単に数学の問題である. 一見複雑な数式でも, y-x図, y-t図ともに高校物理の波のグラフの99%は次の4型である. sin型, −sin型, cos型, −cos型の4種. まず, y軸との交点を確認し, y=Aならcos型, y=−Aなら−cos型が確定する. y=0(原点を通る)の場合, 位相がπ/2ずれた点のy座標を求めれば, ±sin型のどちらかがわかる. t=0のとき, x=0を代入するとy=0となるから, ±sin型のどちらかである. λ=16mなので位相がπ/2ずれたx=4を代入するとy=−1.5となり, −sin型とわかる. t=1.5のとき, x=0を代入するとy=−1.5となるから, 直ちに−cos型とわかる. x=8.0[m/s]×1.5[s]=12[m]より, t=0の波形をx軸正方向に12m分平行移動してもよい. t=0, 1.5を代入した後に数学的に変形して−sin型, −cos型と判断することもできる. sin(−θ)=−sinθ, 加法定理sin(α±β)=sinα cosβ±cosα sinβを用いる. 数式から, t=1.5がt=0よりも位相が3/2π(周期3/4T, 波長3/4λに相当)遅れていることもわかる.] (3) x=0[m] のとき y=1.5 sin(πt)   x=12[m] のとき y=1.5 sin(π/2.0)(2.0t−3.0)=1.5 sin(πt−3/2π)=1.5 cos(πt) [x=0のとき, t=0を代入するとy=0となるから, ±sin型のどちらかである. T=2.0sなので位相がπ/2ずれたt=0.50を代入するとy=1.5となり, sin型とわかる. x=12のとき, t=0を代入するとy=1.5となるから, 直ちにcos型とわかる.] 図は速さ2.0m/sで進む正弦波の時刻t=0[s]における波形である. 波がx軸正方向に進んでいる場合とx軸負方向に進んでいる場合のそれぞれについて, 以下の問いに答えよ. (1) 位置x=0[m]の媒質の時刻t[s]における変位y[m]を表す式を書け. (2) 位置x[m]の時刻t[s]における変位y[m]を表す式を書け. (1) グラフより 振幅A=1.2m 波長λ=8.0m 速さ2.0m/sより 周期T=λ/v=4.0s  正方向 y=1.2 sin(2πt/4.0)=1.2 sin(πt/2)  負方向 y=−1.2 sin(πt/2) [与えられているのはy-x図なので振幅Aと波長λが読み取れ, 速さの条件から周期Tが求まる. y(0,t)=A sin(2πt/T)は初期位相φ=0(sin型)の式なので, その都度何型かを考える必要がある. 問題のy-x図が−sin型であることは, x=0におけるy-t図が何型であるかとは関係ない. まず, y-x図(t=0)でx=0のときy=0なので, y-t図(x=0)は±sin型のどちらかである. y-x図に微小時間後の波形を描いて原点の振動方向を調べると, 正方向sin型, 負方向−sin型とわかる. 問題集の解答では有効数字を強調してy=1.2 sin(πt/2.0)としていることも多いが, 特に必要ではない.] (2) 正方向 y=1.2 sin(π/2)(t−x/2) 負方向 y=−1.2 sin(π/2)(t+x/2) [y(x,t)=y(0,t∓x/v)より, (1)のy(0,t)のtをt∓x/vに置き換えればよい. 負方向の式を, 正方向の式の−を+に変えたy=1.2 sin(π/2)(t+x/2)とするのはよくある誤りである. y=A sin(2π/T)(t+x/v)は, あくまでも初期位相φ=0(sin型)の式である. 本問は正方向と負方向で初期位相(型)が異なるので, 正方向の式の−を+に変えて済むわけではない. (1)の負方向の式y(0,t)(初期位相を考慮済み)のtをt+x/vに置き換えるのが正解である. 式の正誤が不安な場合は, 山や谷の既知の時刻や位置を代入し, 変位yの値を確認する. 本問の場合, 正方向・負方向どちらも, 問題のy-x図よりt=0, x=2でy=−1.2になる必要がある. 高校物理では, tの関数にした後でxの関数にもする方法(時間遅れ・進みの考え方)が普通である. 中級者以上は, xの関数にした後でtの関数にもする方法(波形の平行移動)も知っておきたい. 問題のy-x図(t=0)の式は y(x,0)=−A sin(2πx/λ)=−1.2 sin(2πx/8.0)=−1.2 sin(πx/4) 波形は時間tでvt進むから, 数学的にはx軸方向のvtの平行移動であり, xをx∓vtに置き換える. y(x,t)=y(x∓vt,0)=−1.2 sin(π/4)(x∓2.0t)=±1.2 sin(π/2)(t∓x/2)(正方向上符号, 負方向下符号)] (1) 振幅A[m], 振動数f[Hz]で単振動している質量m[kg]の物体がもつ力学的エネルギーE[J]をA, f, mを用いて表せ. (2) 密度ρ[kg/m^3]の媒質中を進む波の1 m^3あたりのエネルギー(エネルギー密度)U[J/m^3]をA, f, ρを用いて表せ. (3) 波の速さをv[m/s]とする. 波の強さIをA, f, ρ, vを用いて表し, 単位と共に示せ. 波の強さ[J/(m^2・s)=W/m^2] 波の進行方向に垂直な単位面積(1 m^2)を単位時間(1 s)に通過する波のエネルギー. (1) 単振動の速さの最大値をVₘₐₓ, 角振動数をω[rad/s]とする. E = 1/2 m Vₘₐₓ² = 1/2 m (Aω)² = 1/2 m A²(2πf)² = 2π² m f² A² [J] (2) 媒質1 m³の質量はρ[kg]であるから U = 2π² ρ f² A² [J/m³] (3) I = U[J/m³] × v[m³/(m²・s)] = 2π² ρ v f² A² [J/(m²・s) = W/m²] 【補足】 (1) 単振動では, E = (運動エネルギー) + (位置エネルギー) = (最大運動エネルギー) = (一定)である. 単振動中心の最大速さは, 等速円運動の速さと同じAωであった. ω = 2π/T = 2πf. (2) 波のエネルギーの正体は, 媒質の単振動の力学的エネルギーである. (3) 波が単位時間に進む距離はv[m/s] × 1[s] = v[m]である. よって, 単位面積を単位時間に通過する波の体積は1[m²] × v[m] = v[m³]である. J/s = W(ワット). つまり, v[m³/(m²・s)]ということであり, 結局1 m², 1 sあたりのエネルギーはI = Uvとなる.
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高校物理 波動
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