
振動数f₀ [Hz]の音源Sがx軸上を正方向に速さvₛ [m/s]で等速直線運動している.
観測者Pは点(0, d) (d>0)に静止している. 音速をV [m/s]とする.
(1) 音源Sが原点Oに到達した瞬間に放出した音を観測者Pが聞く振動数f′ₒを求めよ.
(2) 音源Sがx<0にあり, ∠PAO=αを満たす位置Aに到達した瞬間に放出した音を,
観測者Pが聞く振動数f′ₐを求めよ. また, 音源Sがx>0にあり, ∠PBO=βを
満たす位置Bに到達した瞬間に放出した音を, 観測者Pが聞く振動数f′ᵦを求めよ.
(3) x<0側とx>0側に分けて, 音源Sがx座標の絶対値が十分大きい位置で放出した
音を観測者Pが聞く振動数f′₋∞, f′₊∞をそれぞれ求めよ.
(4) 観測者Pが聞く振動数f′ [Hz]と, 音源Sのx座標との関係を表すグラフの概形
を描け.
(5) 観測者Pがy軸負方向に速さvₒ [m/s]で等速直線運動している場合を考える.
観測者Pが点(0, d)を通過する瞬間に音源Sが位置Aで放出した音を,
観測者Pが聞くときの波長λ′ₚと振動数f′ₚを求めよ.
斜めドップラー効果
(1) vₛの視線方向(音源→観測者)の成分は0であるから f′ₒ=f₀ [Hz]
(2) 位置Aで放出された音を観測者Pが聞く振動数は f′ₐ=V/(V−vₛ cosα) f₀ [Hz]
位置Bの場合 f′ᵦ=V/(V−(−vₛ cosβ)) f₀=V/(V+vₛ cosβ) f₀ [Hz]
(3) x=−∞のとき, α≈0よりcosα≈1であるから f′₋∞=V/(V−vₛ) f₀ [Hz]
x=+∞のとき, β≈0よりcosβ≈1であるから f′₊∞=V/(V+vₛ) f₀ [Hz]
(5) λ′ₚ=(V−vₛ cosα)/f₀ [m]
f′ₚ=(V−{−vₒ cos(90°−α)})/(V−vₛ cosα) f₀= (V+vₒ sinα)/(V−vₛ cosα) f₀ [Hz]
斜めドップラー効果は, 音源と観測者を結ぶ直線方向(視線方向)の速度成分を用いて, 公式を適用する.
f′=(V−vₒ)/(V−vₛ) f₀ (vₒ:観測者の速度, vₛ:音源の速度, 常に音源から観測者の方向を正)
(1) 音源の速度が視線方向と垂直ならば視線方向成分は0であり, 結局音源が静止している扱いとなる.
(2) 音源Sから観測者Pの方向を正として符号を決めることに注意する.
(3) 極限を考えるとき, 観測者Pがx軸上にいる通常(一直線上)のドップラー効果と同じ扱いとなる.
(4) x<0のとき, 音源Sが原点に近づくにつれて, α が0°から90°まで増加する.
このとき, cosα は1から0に減少するから, f′ₐ=V/(V−vₛ cosα) f₀ は単調に減少する.
x>0のとき, 音源Sが原点から離れるにつれて, β が90°から0°まで減少する.
このとき, cosβ は0から1に増加するから, f′ᵦ=V/(V+vₛ cosβ) f₀ も単調に減少する.
(1)よりf′ₒ=f₀, (3)よりx=±∞ではV/(V±vₛ) f₀ に漸近することを考慮して図示する.
音源Sが近づくとき, 高い音(振動数が大きい)に聞こえる. x=−∞で振動数は最大となる.
音源Sが遠ざかるとき, 低い音(振動数が小さい)に聞こえる. x=+∞で振動数は最小となる.
また, f′軸との交点となるf₀は, V/(V−vₛ) f₀とV/(V+vₛ) f₀の中央ではない.
V/(V−vₛ) f₀−f₀= vₛ/(V−vₛ) f₀ f₀−V/(V+vₛ) f₀= vₛ/(V+vₛ) f₀
vₛ/(V−vₛ) f₀ > vₛ/(V+vₛ) f₀ より, f₀はV/(V−vₛ) f₀とV/(V+vₛ) f₀の中央より下側に寄る.
速さvₛの音源Sの進行方向前方の波長 λ′=(V−vₛ)/f₀
ここでも, 音源Sから観測者Pの方向を正として符号を決めることに注意する.
振動数f₀ [Hz]の音源Sがx軸上を正方向に速さvₛ [m/s]で等速直線運動している.
観測者Pはy軸上の点(0, d) (d>0)で静止しており, 音速をV [m/s]とする.
時刻t=t₁での音源Sの位置をA, 時刻t=t₁+Δt (Δt>0)での音源Sの位置をBとする.
ただし, 点Aはx<0にあり, Δtは十分小さく, 点Bもx<0にある.
距離をPA=a, PB=bとおく. 点Aにおける視線方向(音源から観測者の方向)とx軸正方向とのなす角をθとする.
(1) 時刻t=t₁に点Aから放出された音が点Pに届く時刻t′ₐをaを用いて表せ.
(2) 時刻t=t₁+Δtに点Bから放出された音が点Pに届く時刻t′ᵦをbを用いて表せ.
(3) 受信時刻差Δt′=t′ᵦ−t′ₐをa, b, Δtを用いて表せ.
(4) 次の2通りの考え方を用いてa−bをΔtの1次式で表せ.
(ア) Δtが十分に小さいため, 線分PAとPBがほぼ平行とみなせる.
(イ) △PABに余弦定理を適用する. (Δt)²の項は無視できるほど小さいものとし,
(1+x)ᵅ≈1+αx (x≪1)を用いる.
(5) 観測者Pが聞く振動数f′を求めよ.
(1) 時刻t=t₁に点Aで放出された音がPA=aを音速Vで進むから t′ₐ=t₁+a/V [s]
(2) 時刻t=t₁+Δtに点Bで放出された音がPB=bを音速Vで進むから
t′ᵦ=t₁+Δt+b/V [s]
(3) Δt′=t′ᵦ−t′ₐ=Δt+(b−a)/V [s]
(4) (ア) 点Bから線分APに下ろした垂線の足をHとすると
a−b≈AH=AB cosθ= vₛΔt cosθ [m]
(イ) △PABにおいて余弦定理より
b²= a²+(vₛΔt)²−2 a vₛΔt cosθ
b≈ √(a²+0−2 a vₛΔt cosθ)
= a √(1−(2 vₛΔt/a) cosθ)
= a (1−(2 vₛΔt/a) cosθ)¹ᐟ²
b≈ a (1−(1/2)·(2 vₛΔt/a) cosθ)
= a−vₛΔt cosθ
よって a−b≈ a−(a−vₛΔt cosθ)= vₛΔt cosθ [m]
(5) (3)に(4)を代入すると
Δt′=Δt+(−vₛΔt cosθ)/V
= Δt(1−(vₛ cosθ)/V)
波の個数は保存されるから
f′= (Δt/Δt′) f₀
= 1/(1−(vₛ cosθ)/V) f₀
= V/(V−vₛ cosθ) f₀ [Hz]
斜めドップラー効果では, 「なぜ視線方向の成分だけで考えてよいか」という理由まで問われうる.
ここでは, 音源Sが動く場合の f′=V/(V−vₛ cosθ) f₀ を導出する.
実は, 斜めドップラー効果を厳密に扱うと, 視線方向が刻々と変わるため, 式は一般に複雑になる.
そのため高校物理では, 「微小時間Δtの間で幾何がほぼ変わらない」とみなす近似(瞬間近似)を行う.
斜めの場合, 視線方向が刻々と変わるため, 一直線上の場合のように「波長の変化」を追うのは難しい.
そこで一般に, 受信の時間差に注目し, 波の個数が保存されること f₀Δt=f′Δt′ を用いて求める.
ここで, Δtは放出の時間間隔, Δt′は受信の時間間隔である.
近似の方法はいくつかあるが, 代表的には次の2通りである.
(ア) [幾何学的近似]
音源と観測者が十分遠いとき, またはΔtが十分小さいとき, 線分PAとPBを平行とみなせる.
このとき, 2回の放出点A, Bに対し, 観測者Pまでの距離差は視線方向への射影で近似できる.
これは「瞬間の値を求める」という微分の考え方(一次の近似)に対応する.
(イ) [代数的近似]
距離PBを余弦定理等で得られる根号式として書き, 近似公式(1+x)ᵅ≈1+αxを適用する.
Δtが十分に小さいとき, vₛΔt≪aより vₛΔt/a≪1が成り立つ.
根号の外にaをくくり出して √(1+x) (x≪1) の形を作ることで, 近似公式を適用できる.
