
固有振動 媒質の特性と境界条件を満たす定常波(定在波)として生じる振動.
境界条件を満たす振動数の場合のみ定常波が生じ,その振動数を固有振動数という.
共振 振動する物体に,その固有振動数と同じ周期的な外力を加えると振幅が大きくなる現象.
共振によって音を出す現象を共鳴という.
弦の固有振動
両端が固定された弦に生じる定常波.弦の両端は固定端(常に節)となる.
腹の数 m=1 の振動を基本振動,その振動数 f₁ を基本振動数,生じる音を基本音という.
m=2,3,… の振動を2倍振動,3倍振動,… といい,まとめて倍振動という.
倍振動によって生じる音を倍音(2倍音,3倍音,…)という.
(図は省略)
基本振動(m=1)
ℓ=1·(λ₁/2)
→ λ₁=2ℓ
f₁=v/(2ℓ)
2倍振動(m=2)
ℓ=2·(λ₂/2)
→ λ₂=ℓ
f₂=v/ℓ
=2f₁
3倍振動(m=3)
ℓ=3·(λ₃/2)
→ λ₃=(2/3)ℓ
f₃=3v/(2ℓ)
=3f₁
一般化すると ℓ=m×(λₘ/2)
m倍振動の波長 λₘ=2ℓ/m=λ₁/m
m倍振動の振動数 fₘ=v/λₘ=m·(v/(2ℓ))=m f₁ (m=1,2,3,…)
弦を伝わる波の速さ v [m/s]
弦の張力を S [N],弦の線密度を ρ [kg/m] とすると
v=√(S/ρ)
[補足]
弦を振動させると,弦を伝わる波は両端の固定端で反射を繰り返し,逆向きに進む振幅・波長・速さが等しい波が往復して重なり合うため,定常波が形成される.
両端が固定端という境界条件のため,弦の長さに半波長(節から節)がちょうど整数個だけ収まるような特定の波長(固有振動数)のときにのみ,反射波が強め合って安定した定常波が存在できる.
固有振動数以外の振動数の波では,反射のたびに位相が少しずつずれていき,全体として打ち消し合う.
弦の張力Sが大きいほど復元力が大きくなり,波の速さvは大きくなる.
弦の線密度ρが大きいほど慣性が大きくなり,弦が変位したときに元に戻りにくくなるため,波の速さvは小さくなる.
波の速さの公式は問題で与えられることも多いが,理解した上で覚えておことを推奨する.
図のように,振動数 4.0×10² Hz の音叉Aの腕に,弦の一端を取り付ける.弦を間隔0.60 mだけ離れた2つの支点P,Q間に張り,他端に滑車を通しておもりを吊り下げる.
弦を伝わる波の速さ v は v=√(S/ρ) (弦の張力S[N],線密度ρ[kg/m])で表される.
最初,区間PQには3倍振動の定常波が生じていた.
(1) 単位を調べることによって,√(S/ρ)が速さの単位をもつことを確認せよ.
(2) 3倍振動の定常波の波長 λ₃ と弦を伝わる波の速さ v を求めよ.
(3) おもりと音叉はそのままで,区間PQの長さを0.80 mに変えると何倍振動になるか.
(4) 区間PQの長さを元の0.60 mに戻し,別の音叉Bを用いると,基本振動が生じた.音叉Bの振動数 f_B を求めよ.
(5) 区間PQの長さと音叉Aはそのままで,弦に5倍振動が生じるようにしたい.おもりの質量は最初の何倍にすればよいか.また,このときの波長 λ₅ も求めよ.
(6) 音叉を弦に対して縦置きに変えて区間PQに3倍振動の定常波が生じるようにするには,おもりの質量を最初の何倍にすればよいか.
(7) 支点Qの右側に0.30 m離れた位置に支点Rを設置し,PQ間とQR間で線密度の異なる2本の弦をつないで振動させたところ,P,Q,Rのみが節となる定常波が生じた.PQ間とQR間の弦の線密度を ρ_PQ,ρ_QR とするとき,線密度の比 ρ_PQ/ρ_QR を求めよ.
(図は省略)
メルデの実験
(1) 張力Sの単位は [N]=[kg·m/s²],線密度ρの単位は [kg/m] である.
よって,√(S/ρ) の単位は √((kg·m/s²)/(kg/m))=[m/s] であり,速さの単位をもつ.
(2) PQ=3×(λ₃/2)=0.60 m より
λ₃=(2/3)×0.60 m=0.40 m
v=fλ₃=4.0×10² /s ×0.40 m=1.6×10² m/s
(3) 張力Sと線密度ρが変わらないため,波の速さvは(2)と同じである.
また,音叉の振動数fも変わらないため,v=fλより,波長も(2)と同じλ₃である.
腹の数を m′ とすると
m′×(λ₃/2)=m′×(0.40 m/2)=0.80 m より m′=4
よって 4倍振動
[補足]
v=fλ が常に成り立つから,問題ごとにv,f,λのうち何が一定で何が変化するかを考える.
おもりが同じなら張力Sが同じであり,弦が同じなら線密度ρも同じなので,波の速さvは一定である.
また,音叉(おんさ)は長さや材質で決まる固有振動数の純音を出す.
m倍振動の波長や振動数の公式は丸暗記するのではなく,定常波の図を描いて導けるかが重要である.
結局,定常波の節と節の間隔 λ₃/2=0.20 mが不変であるため,0.80 mはその4倍に相当するだけである.
(4) 基本振動であるから 1×(λ₁/2)=0.60 m よって λ₁=1.20 m
速さは(2)と同じであるから
f_B=v/λ₁=160 m/s /1.20 m=133.33…≒1.3×10² Hz
(5) 5倍振動であるから 5×(λ₅/2)=0.60 m よって
λ₅=(2×0.60 m)/5=0.24 m
おもりの質量をM,重力加速度をgとすると v=√(Mg/ρ) より
M=ρv²/g=ρf²λ²/g
質量の倍率は
M₅/M₃=(λ₅/λ₃)²=(0.24 m/0.40 m)²=(3/5)²=0.36倍
[補足]
5倍振動であることからλ₅が求まるから,後は v=fλ と v=√(S/ρ) に基づいて質量の比に換算する.
本質は,振動数f,線密度ρ,重力加速度gが一定より,
M₅:M₃=v₅²:v₃²=λ₅²:λ₃² である.
(6) 音叉を縦置きにしたときの弦の振動数 f_縦 は,音叉の振動数 f の1/2になる.
v=fλより,(2)と同じ波長λ₃に保つには,波の速さ v_縦 を v の1/2にする必要がある.
質量の倍率は
M_縦/M=(v_縦/v)²=(1/2)²=1/4=0.25倍
[補足]
音叉が横置きのときは音叉の腕が弦と垂直に動き,音叉が縦置きのときは音叉の腕が弦と平行に動く.
音叉の置き方による振動数の違いは,音叉と弦の運動方向の関係による実験的事実であり,暗記する.
(7) P,Q,Rのみが節となっているから,PQ間とQR間はどちらも基本振動となっている.
1×(λ_PQ/2)=0.60 m より λ_PQ=1.2 m
1×(λ_QR/2)=0.30 m より λ_QR=0.60 m
ここで,v=√(S/ρ)より ρ=S/v²=S/(f²λ²)
よって
ρ_PQ/ρ_QR=(λ_QR/λ_PQ)²=(0.60/1.2)²=(1/2)²=1/4=0.25倍
[補足]
波は媒質中の隣接する点に強制的に振動を伝えて進むため,どの点でも振動数は音源の振動数と一致する.
よって,異なる媒質(異なる線密度の弦)に移っても振動数は変化しない.
これは,異なる媒質の境界で屈折が起こっても,波の振動数が変化しないことと同様である.
結局,振動数f,張力Sが一定より,
ρ_PQ:ρ_QR=1/v_PQ²:1/v_QR²=1/λ_PQ²:1/λ_QR² である.
