数列の極限⑤:二項定理を利用する極限(rn、nk/rn、nrn、rn/n!、n1/n)と発散速度比較

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この不等式が,\ {二項定理を途中で打ち切ってできる不等式}であることを知っておく必要がある. 一度理解してしまえば簡単には忘れないだろう.\ 高校数学で時々登場し,\ 意外な活躍を見せる. 証明も,\ 実際に二項展開して途中で打ち切るだけである. (a+b)^n=C n0a^n+C n1a^{n-1}b+C n2a^{n-2}b²++C nra^{n-r}b^r++Cn}{n-1}ab^{n-1}+C nnb^n h>0で,\ さらに常にC nk>0なのですべての項が正であり,\ 途中で打ち切ると小さくなる. 二項定理さえ理解していれば簡単な証明だが,\ {場合分けを必要とする}という思わぬ落とし穴がある. C n2の項で打ち切るわけだが,\ C n2はn2でしか定義されない.\ C 12などとなると意味不明である. {極限を考えやすい整式でr^nを評価できる}という点で意義深い不等式であり,\ 以下で利用する. 証明せずとも自明だろうと思ったかもしれない. 確かに,\ 例えばr=2ならば2,\ 4,\ 8,となるから,\ 無限大に発散するのは明らかである. しかし,\ r>1ということはr=1.01などの場合もあり得るということである. このとき,\ 1.01,\ 1.0201,\ 1.030301,であり,\ もはや自明ではない.\ 厳密な証明が必要である. r=1+hとおいて二項定理による不等式を利用するこの証明は,\ 経験がないと思い浮かばない. lim[n→∞]r^nの結果を丸暗記している学生が多いが,\ {誘導なしで証明できるようにしておく}べきである. はh>0のとき成り立つ不等式なので,\ その適用条件を満たすかを確認した上で適用する. ここではを利用したが,\ の証明だけなら二項定理をC n1の項で打ち切れば十分である. 二項定理をC n1の項で打ち切った(1+h)^n1+nhを特にベルヌーイの不等式という. 0<{n}{r^n}は明らかであるから,\ 極限が0に収束するもので上から評価できればよい. 分子がn(1次式)であることを考慮すると,\ n}{(nの2次以上の式)\ となれば極限が0に収束する. このためには,\ {の不等式の右辺の3項目のみ取り出してくれば十分}である. やの証明は,\ ,\ よりもはるかによく問われる.\ 誘導なしで証明できるのが望ましい. }]$  $h>0,\ n3}$のとき,\ 二項定理}より はさみうちの原理より {lim[n→∞]{n²}{r^n}=0}$} $[l} 分子がn²(2次式)であるから,\ 極限が0に収束するためには分母が3次式でなくてはならない. 二項定理をC n3の項で打ち切った不等式を利用する必要があり,\ まずはそれを証明する. このとき,\ h>0とn3という条件がなければならないことに注意してほしい. n→∞とするのであるから,\ 不等式の証明問題でもない限りn=1,\ 2のときを確認する必要はない. 同様にして,\ lim[n→∞]{n^k}{r^n}=0\ (k:自然数)であることも示される. これは,\ {r^nの発散速度がn^kの発散速度に比べてはるかに速い}ことを意味している. n→∞の世界では,\ 2^nと比べるとn²だろうがn^{10000}だろうが無同然というわけである. r=1sとおいてを利用してもよいが,\ 通常は単独で問われるのでを利用する方針でいく. もっとも,\ r={1}{1+h}とおけばと全く同じである. r=1+hとおいても00が必要なは適用できない. 本問は二項定理を使わずとも証明できる.\ まず,\ {n個の分数に分割}して考える. n→∞とするのであるから,\ n r+1としてよい. このとき,{r}{n-1}1,\ {r}{n-2}1,\ ,\ rr=1なので,\ これを利用して上から評価する. 最終的に0に収束させることを見越し,\ { rnだけはそのままにしておく}のがポイントである. 本問の結果は,\ {n!の発散速度がr^nの発散速度に比べてはるかに速い}ことを意味している. 結局,\ 発散速度は\ n1}$のとき,\ $[n]{n}=1+h}$とおくと$h>0}$である.本問も二項定理の不等式を利用する有名問題である.\ 一度は経験が必要だろう. n→∞とするのであるからn>1としてよく,\ このとき[n]{n}>1である. よって,\ [n]{n}=1+hとおくとh>0となり,\ を適用できる. 全てのnを同時に極限にとばさなければならないので,\ lim[n→∞]n^{1n}=lim[n→∞]n^0=1としてはならない.