当カテゴリでは、様々な記述テクニックや心構えなどを述べてきた。

中には初めて聞くテクニックや一見邪道とも思えるようなテクニックもある。すると必ず、「本当にこんな記述をして減点されたりしないのですか?」という質問が出る。

一番最初に警告しておいたとおり、採点基準に関する質問には、何回聞かれてもいつ聞かれても誰に聞かれても「わからない。場合による。」としか答えようがない。

大学入試は相対評価であり他の受験生との比較になるから、仮に採点官に聞くことができたとしても明確な答えを得るのは難しいはずである。

それでもどうすべきか迷ってしまう受験生のため、個人的な見解を半分精神論で改めて述べておくことにする。

『減点恐怖症』『答案殺し』

多くの受験生が過剰なまでに「書く」ことによる減点を恐れている。

 「高校範囲外の知識を使って書いて減点されないですか?」
 「途中計算を書いて減点されないですか?」
 「余計なことを書いて減点されないですか?」
 「複数の解法を並列して書いて減点されないですか?」

管理人はこれを『減点恐怖症』と呼んでいる。国語や英語の記述では減点を恐れずに適当なことを書きまくっているにも関わらず、何故か数学になった途端にやたらと減点を恐れ出すのである。

何が厄介って、受験生は「書く」ことによる減点はやたらと恐れるのにも関わらず、「書かない」ことによる減点は全然恐れないことである。


さらに恐ろしいのは、このやり方はダメだと勝手に自己判断で思い込んで一旦記述したものを全て消してしまう受験生が尋常でなく多いことである。管理人はこのような行為を『答案殺し』と呼んでいる。受験生本人は気付いていないが、自分には答案の断末魔の叫び声が聞こえてくる。


受験生 「たぶんこのやり方でいけるかな」
答案  「おっ、いいよ~合ってる合ってる!その調子!」

答案  「あ、ちょっと計算ミスしちゃったかな」

受験生 「あれ、なんかおかしい。たぶん違ってるなこれ・・・」

答案  「え、ちょっと・・・。ま、まさか・・・」

受験生 「消そっと。」
答案  「お願い、消さないで!命だけは・・・
受験生 「ゴシゴシゴシゴシ」
答案  「ぎゃああああああああああああああ

採点官 「この答案死んでる・・・


繰り返しになるが、受験生本人は気付いていなくても、客観的に見ているとこんなパターンが尋常でなく多い。あまりにも多すぎる。程度の差こそあれ、最上位層以外のほとんどの受験生に当てはまると言っても過言ではないかもしれない。


早い話、恐ろしく多くの受験生が本番で次のような事態に陥る。

「減点恐い」→「書かない or 消しとこ」→「白紙」

このギャグ全然笑えない。


9割以上を狙っている最上位層ならば、可能な限り減点を避けようとするのもうなずける。しかし、減点を恐れる受験生の答案の多くが、そもそも点がなく減点云々というレベルにすら到達できていない。

だからこそ、はっきりと言っておきたい。

減点を恐れている暇があれば、裏技でも何でも良いからとにかく書いて書いて書きまくってまずは1点でも多く加点することを考えろ!減点の話はそれからだ!

一旦記述したものを消すべきではない理由

少し感情的になってしまったので、落ち着いて原則として消すべきではない理由を説明しておく。


一旦記述したものを消そうとするとき、消してしまう前によく考えてみなければならない。自分の手で今答案から消し去ろうとしている記述、本当に本当に100%完全な間違いだと、正解とは何ら関係なく1点の部分点ももらえない記述だと断言できるだろうか。

おそらくできないはずである。そもそもそんな判断を正確にできるならばその問題が解けているということであり、最初から無関係の記述をしたりはしない。つまり、多くの受験生は、完全な間違いだと確信できないにもかかわらず、「なんか違っているような気がする」というだけでせっかく記述したものを永久に答案から消し去ってしまっているのである。

最初に書いた記述は、問題を初めて見たときの第一印象で直感的に「これでいけるはず」と思った貴重な記述である。直感、思考、計算、自らそのすべてを『無』にしたのである。


じゃあ別の方法を思いついたとき、それまでの記述を消さずにどうすればいいのかって?

簡単なことである。横か下に並列して書いていけばよいのである。仮に元の記述を消すとしても、試験終了の直前にすべきである。後で再利用できる可能性もあるからである。


正直、「これは消しておいた方がいい」と思う記述もないわけではない。しかし、それは「消すべきではない」と思う記述よりも圧倒的に少ない。

自分の経験上から言えば、100%間違いと確信出来るもの(大抵できないはず)や単純な計算ミスなどは消すべきだが、そうでない場合は消すリスクのほうが圧倒的に高い。特に、数学で9割以上狙っている上位層ならともかく、5割付近で勝負しようとしている受験生に至っては消すメリットなどほぼないに等しい。

受験生・志望校のレベルや記述の内容にもよるので、メリット・デメリットを総合的に考え、最終的には受験生本人がその場で判断するしかない。


採点基準はわからないので、どうしても最終的には精神論になる。

仮に「1点足りずに不合格」という結果が出たとしよう。

「あのとき消さなければ・・・」「何でも良いからなりふりかまわずにもっと書いておけばよかった」などと後悔しないだろうか。

自分ならば、減点のリスクがあったとしても消してしまったことの後悔はしたくないのでできる限り残しておく。「これだけ書いてダメだったらしょうがないな」と思えるくらい、答案の隅から隅まで、白紙部分がなくなるまで何かしら記述をしておく。

自身の答案を自分で読み返してみてほしい。

その白紙だらけの答案で後悔しない?

難問で最低でも書くべきコト

難問では何を書いていいかわからない。だから多くの受験生は何も書かずに白紙で終える。

しかし、何を書いていいかわからなくても、何でもいいから書かなければならない、書くべきなのが本番である。

白紙よりはマシなので、文字通り何でもいいから書けばよいのだが、実際には次のような無限ループになる。

教師  「何でもいいから書いて」
受験生 「何を書けばよいかわかりません」
教師  「いや、だから何でもいいって」
受験生 「何でもいいと言われても何を書けばいいかわかりません」


しょうがないので、何を書けばよいか、当サイトの読者には特別に1つだけとっておきを教えよう。

必要条件(特殊な場合)だけでも書いとけ!

この考え方の適用範囲は極めて広く、高確率で部分点の対象になる。

例えば、n=1のときやx=y=0のときを求めたり示したりしておけばよい。三角形の問題ならば正三角形で考えてみるなどということもできる。『必要条件から攻める』というセンター用の裏技が記述でも役立つのである。大抵の問題では、このような特殊な場合や簡単な場合を求めたり示したりすることは容易に出来るはずである。そして、多くの受験生がこの程度のことすら記述せずに白紙にするから、相対的に優位に立てる。

それだけでなく、特殊な場合を考えているうちに何か規則性に気付き、正攻法に気付けるかもしれない。特殊な場合を考えること自体が正攻法となる問題もある。

そもそも、『まず具体例を考え、そこから規則性を見つけ、一般化していく』ということが『数学をする』ということではないだろうか。パターンや公式を丸暗記してあてはめるのが数学ではない。

数学の能力が高い人はこのことをよく理解しているから、抽象度が高い問題、難しい問題では簡単な数値を代入するなどして最初により具体的に考えようとする。一方、数学の能力が低い人ほど抽象的なまま難しく考えようとする。そして、わからないわからないといつまでもわめいている。

具体的に考えることは、本来は普段数学を学習する中で常にやってきていなければならないことであり、さすれば入試本番でも普段と同じようにして思考できるはずなのである。


わかってもらえただろうか。『特殊な場合だけでも書く』は、部分点を稼ぐとか記述テクニックとか裏技とかそいういう低次元のものではなく、数学の根幹にあるものである。


では、読者の諸君の健闘を祈る!