くじ引きの確率と公平性

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当たりくじ3本,\ はずれくじ7本が入った袋の中からA,\ B,\ C,\ D,\ Eの5人が順に1本 ずつ引くとき,\ 以下の確率を求めよ.\ ただし,\ 一度引いたくじは戻さないものとする.  (1)\ \ A,\ Bがともに当たる確率  (2)\ \ Bが当たる確率  (3)\ \ Dが2人目に当たる確率  (4)\ \ 2人当たった場合その時点で試行を終了するとき,\ Eが引く前に終了する確率  (5)\ \ 5人のうち少なくとも2人が当たったとき,\ CとEが当たる確率 \\ くじ引きの確率と公平性 \\  本項の本質的な内容については,\ 確率カテゴリ序盤の『確率の極意』でかなり説明した.  根元事象が同様に確からしいならば,\ 全事象の取り方は自由なのであった.  本項では,\ くじ引きの確率として改めて取り上げる.  (1)\ \ Aが当たる確率は Aが当たったという条件のもとでBが当たる条件付き確率は$29$}である. {A,\ Bが引くくじ(全てのくじを区別)は$P{10}{2}$通りあり,\ これらは同様に確からしい.} A\,~\,Eが引くくじ(全てのくじを区別)は$P{10}{5}$通りあり,\ これらは同様に確からしい.} 10人が引くくじ(全てのくじを区別)は$10!$通りあり,\ これらは同様に確からしい.} 0人が引くくじ(当たりかはずれで区別)は$C{10}{3}$通りあり,\ これらは同様に確からしい. A,\ Bが引くくじの組合せ(全てのくじを区別)は$C{10}{2}$通りあり,\ これらは同様に確からしい. \ 本解は,\ 1人ずつの確率の積として求める}ものである. 非復元抽出}であるから,\ 「\,1人目が引く」「\,2人目が引く」は独立ではない. この場合,\ P(A∩ B)=P(A)P_A(B)}を計算するのであった(確率の乗法定理). C,\ D,\ E}の3人は当たりでもはずれでもよいからその確率は1であり,\ 実質的に無視できる. 仮に5人とも考慮したとすると  本解の方法は直感的にわかりやすいが,\ 汎用性が低く,\ 引く本数が多くなると厳しくなる. 例えば「CとE}がともに当たる確率」なら,\ A,\ B,\ D}が当たりかはずれかで多くの場合分けを要する. そこで重要になるのが,\ 場合の数の比として求める}方法である. 様々な全事象の取り方が考えられ,\ まとめると以下となる.   & 人数\ \ & 順序の考慮 & くじの区別  \ \ & 同様に確からしいか &&&& \\[-1.2zh]\hline 別解1 & 2人 & あり & すべてのくじを区別 & 同様に確からしい 別解2 & 5人 & あり & すべてのくじを区別 & 同様に確からしい 別解3 & 10人 & あり & すべてのくじを区別 & 同様に確からしい 別解4 & 10人 & あり & 当たりかはずれで区別 & 同様に確からしい 別解5 & 2人 & なし & すべてのくじを区別 & 同様に確からしい × & 2人 & あり & 当たりかはずれで区別 & 同様に確からしくない \\ 5人が順に引くわけだが,\ 全事象は問題の条件に関係する事柄のみに着目してとれば済む}のであった. よって,\ A,\ Bの2人がどのくじを引くか}のみを考えればよい(別解1). また,\ 確率では,\ 原則として同じモノでも区別して考えるのであった. 当たりくじ3本をa_1,\ a_2,\ a_3,\ はずれくじ7本をb_1,\ b_2,\ ・・・,\ b_7\,とする. A,\ B}の2人がどのくじを引くかは,\ 以下のP{10}{2}\,通りがあり,\ これらは同様に確からしい. \ このうちA,\ B}がともに当たるのは,\ a_1,\ a_2,\ a_3\,から2本選ぶ場合で\,P32\,通りある. もちろん,\ 5人がどのくじを引くか}を考慮しても求められる(別解2). A,\ B}はa_1,\ a_2,\ a_3\,から2本選び,\ C,\ D,\ E}は残り8本のくじから3本選ぶことになる. 別解3は,\ 別解1とは逆に,\ 人数を増やして10人が順に10本引く}と考えるものである. 1人目だけ考えても2人目まで考えても1人目が当たる確率が\,3}{10}\,であることは変わらないだろう. A,\ B}の後の8人の引き方は8!\,通りである. 場合によっては,\ 全部のくじを引くと考えた方が扱いやすくなる. 別解4は,\ くじを当たりかはずれかで区別し,\ 10人が順に10本引く}と考えるものである. 当たりを○,\ はずれを×で表すとすると,\ 誰が当たるかは○3個と×7個の並びと対応する.} 例えば,\ ○○×○××××××ならば,\ A,\ B,\ D}が当たったことになる. 10ヶ所□□□□□□□□□□から○3個の位置を選ぶと考えると,\ その並べ方は\,C{10}{3}\,通りある. A,\ B}がともに当たるのは,\ 左端2つが○○で,\ 残り8ヶ所のうち1ヶ所に○1個が入る場合である. ○の場所を選ぶだけ}になるので,\ 極めて汎用性が高い考え方}である. (3)以降のように,\ 誰が当たるかの指定がない問題において,\ この考え方の有用性が特に際立つ. ただし,\ 別解4の考え方をする場合,\ 必ずすべてのくじを引くと考える}必要がある. 仮に2人だけが引くとすると○○,\ ○×,\ ×○,\ ××の4通りになるが,\ この4通りは対等ではない. ○よりも×が多いのであるから,\ どう考えても××の方が起こりやすい. すべてのくじを引くと考えると,\ 常に○3個と×7個の並びとなり,\ 完全に対等になるわけである. 別解5は,\ 別解1において順序の考慮をなくしたものである. つまり,\ (A,\ B})=(a_1,\ a_2)と(A,\ B})=(a_2,\ a_1)を1通りと考える. 同様に確からしい\,P{10}{2}\,通りを同数(2つ)ずつをまとめたものなので,\ C{10}{2}\,通りは同様に確からしい. 直感的にわかりづらく面倒になるので非推奨である. Aが当たりBも当たる場合}とAがはずれBが当たる場合}が互いに排反}である. Bが引くくじ(全てのくじを区別)は10通りあり,\ これらは同様に確からしい.} 本解は排反な場合分けをする一般的な解法である. 本問の結果から,\ Aが当たる確率とB}が当たる確率はどちらも\,3}{10}\,であるとわかる. これはたまたまではなく,\ くじ引きで当たる確率は引く順序によらず常に一定になる.} (1)の別解1のように,\ Bのみに着目して考える}と瞬殺である. 単純に考えると,\ Aがどのくじを引いたかがBの確率に影響しそうな気がする.} しかし,\ それは条件付き確率の話である.\ 確率は,\ 情報を得るたびに更新されるのであった. 確かに,\ A}が当たったかはずれたかという情報を得た後は,\ B}の確率は影響を受け変化する. 本問は,\ まだ1人もくじを引いていない時点でBが当たる確率が題意である. この時点では,\ B}にとって10本すべてのくじが対等}というわけである. こう考えると,\ 何番目に引いても同じ確率となるのは当然のように思えてくるだろう. 確率が引く順序によらないことにまだ納得できない人は,\ 以下のような状況を想像してみるとよい. 自分を含む10人が1人ずつ順番にくじを引いていく.\ 自分は何番目でもよい. ただし,\ 引いた後,\ 手を握ったままで当たったかはずれたかは確認しない}ものとする. 10人が全員引き終わった時点で,\ 自分が当たっている確率を考えてみてほしい. 情報はまだ何もない.\ 「自分は\,3}{10}\,の確率で当たっているはず」と思えるのではないだろうか. 10人全員が同じように思っているはずである. ここで,\ 自分以外の1人が手を開き,\ 当たっていることがわかった. この時点で,\ 自分が当たっている確率を再び考えてみてほしい. 「自分はまだ\,29\,の確率で当たる可能性がある」と思えるはずである. 手を開いていない9人全員が同じように思っているだろう. このように,\ くじ引きの確率は,\ 引く順序ではなく,\ 情報を得たか否かで決まる.} そして,\ 持っている情報が同じなのであれば,\ どの人にとっても当たる確率は同じ}である. 以下,\ 別の考え方での解答も示しておく. (1)別解2の考え方 3・P94}{P{10}{5=3}{10\ \ \,( Bはa_1,\ a_2,\ a_3\,から1本,\ 他4人は残り9本から4本選ぶ) (1)別解3の考え方 3・9!}{10!}=3}{10 ( Bはa_1,\ a_2,\ a_3\,から1本,\ 他9人は残り9本から9本選ぶ) (1)別解4の考え方 C92}{C{10}{3=3}{10 \ \,(□\maru{ B}□□□□□□□□の9ヶ所の□に○2個を入れる) (1)別解3の考え方で一般化してみると,\ iによらず一定となることが容易に示される. n本のくじの中にk本の当たりくじがあるとき,\ i番目に引く人が当たる確率 10人が引くくじ(当たりかはずれで区別)は$C{10}{3}$通りあり,\ これらは同様に確からしい. \ 1人目に当たるのがAの場合}とBの場合}とCの場合}があり,\ 互いに排反}である.  A\,~\,Dが引くくじ(全てのくじを区別)は$P{10}{4}$通りあり,\ これらは同様に確からしい. (1)別解4のくじを当たりかはずれかで区別し,\ 10人が順に10本引く}という考え方が簡潔である. Dが2人目に当たるということは,\ \underbrace{□□□}_{○1個}\maru{ D}\underbrace{□□□□□□}_{○1個}\ となればよいということである. 別解2の分子は1人目に当たるのが誰かで場合分けしてもよいが,\ それでは別解1と変わらない. 選ぶことと並べることを別々に考える}と,\ 場合分けせずとも求められる. 当たり2人,\ はずれ2人であるから,\ 4人が引くくじの組合せは\,C32・C72\,通りある. 仮に,\ (a_1,\ a_2,\ b_1,\ b_2)を引くとして,\ 誰がどのくじを引くかが何通りあるかを考える. 条件の強い Dから考える.\ \ Dが引くくじは,\ a_1\,またはa_2\,の2通りである. 後は,\ 残りの3本のくじとA,\ B,\ C}の3人を対応させればよく,\ 3!\,通りある. (a_1,\ a_3,\ b_6,\ b_7)など,\ どのくじの組合せに対しても2・3!\,通りの並べ方があるから掛ければよい. {10人が引くくじ(当たりかはずれで区別)は$C{10}{3}$通りあり,\ これらは同様に確からしい. また,\ 4人目までに2人当たる場合}と3人当たる場合}があり,\ 互いに排反}である.  引く人数が2人の場合}と3人の場合}と4人の場合}があり,\ 互いに排反}である. 途中で終了する場合でもすべてのくじを引くまで続けると考えると,\ 試行回数が対等になる.} これはまさに(1)別解4の考え方に他ならない. 要は,\ 4人目までに○が少なくとも2個が入ればよい.} 余事象を考えずとも,\ 4人目までに○2個の場合と○3個の場合に分けて直接的に求めれば済む. 4人目までに○2個 \underbrace{□□□□}_{○2個}\underbrace{□□□□□□}_{○1個}  \rei\ \ ○×○×○××××× 実際には3人目で終了 [-.5zh] 4人目までに○3個 \underbrace{□□□□}_{○3個}\underbrace{□□□□□□}_{○0個}  \rei\ \ ○○×○×××××× 実際には2人目で終了 普通に考えると,\ 別解のように何人がくじを引くかで場合分け}することになるだろう. (1)と(3)の結果を利用したため簡潔に見えるが,\ 一から求めようとするとかなり面倒である. 引く人数が2人の場合とは,\ A,\ B}が当たる場合である. →\,(1) 引く人数が4人の場合とは,\ Dが2人目に当たる場合である. →\,(3) 引く人数が3人の場合とは,\ Cが2人目に当たる場合で,\ 以下の2つの場合が互いに排反である.  ○\,→\,×\,→\,○ 3・7・2\,通り    ×\,→\,○\,→\,○ 7・3・2\,通り $S:$「\,5人のうち少なくとも2人が当たる」  $T:$「\,CとEが当たる」 \ A\,~\,Eのうち1人だけが当たる確率 \ A\,~\,Eのうち少なくとも2人が当たる確率は  事象Aが起こったときに事象Bが起こる条件付き確率は P_A(B)=P(A∩ B)}{P(A) 5人のうち少なくとも2人が当たる確率は,\ 余事象を利用}して求める. やはり,\ (1)別解4の考え方が有効である.  A\,~\,E}が5人ともはずれる   ×××××\underbrace{□□□□□}_{○3個} [-.5zh]  A\,~\,E}のうち1人だけが当たる \underbrace{□□□□□}_{○1個}\underbrace{□□□□□}_{○2個} 事象Tが起こると自動的に事象Sも起こることになるから,\ S∩ T=T}である.  CとE}が当たる  □□\maru{ C}□\maru{ E}□□□□□\,の8ヶ所の□に○1個を入れる 当然,\ (1)と同じ結果になる(くじびきの公平性). A\,~\,E}が引くくじ(すべてのくじを区別)を全事象にとると  A\,~\,E}が5人ともはずれる   A\,~\,E}のうち1人だけが当たる (5人が引くくじの組合せが\,C31・C74\,通り,\ その並べ方が5!\,通りある) C,\ E}が引くくじ(すべてのくじを区別)を全事象にとると 
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