デンプンとセルロースの比較、天然繊維と化学繊維

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デンプンとセルロースの比較 & デンプン & セルロース && [-1.5zh] 主な所在 & 米や芋 & 植物の細胞壁(cell wall) 構成単糖 & ${α}$-グルコース} & ${β}$-グルコース} 立体構造 & らせん構造 & 直鎖構造} 還元性 \& 甘味 & なし & なし ヨウ素デンプン反応 & する} & しない} 2}*{溶解性} & アミロースは熱水に溶ける 水にも有機溶媒にも溶けない} & アミロペクチンは熱水にも溶けない & シュバイツァー試薬に溶ける} 工業 & 食品工業 & 繊維工業・製紙工業 セルロースの加水分解}{セルロース}{セルラーゼ}]セロビオース}{セロビアーゼ}グルコース} 多糖類であるセルロースの一般式は\ ({C₆H₁₀O₅})_n\ である. ただし,\ セルロースは\ β-グルコース1単位につき必ず3つの{OH}基をもつ. よって,\ [{C6H7O₂(OH)3}]_nとも表せる.\ セルロースの誘導体を考えるときに必須の表現である. デンプンは,\ 表の\ α-グルコースが連続して結合するため,\ らせん構造を形成した. 一方セルロースは,\ 表と裏の\ β-グルコースが交互に結合するため,\ 直鎖状の立体構造となる. 分子が平行に並んで分子間に水素結合を作るため,\ 水や有機溶媒に不溶な強い繊維となる. {分子間水素結合 ヨウ素デンプン反応は,\ らせん構造内にヨウ素分子が取り込まれることで呈色する. セルロースはらせん構造をもたないので,\ ヨウ素デンプン反応で呈色しない. ヒトはセルロースの分解酵素(セルラーゼ)をもたない. よって,\ セルロースをエネルギー源(栄養源)にすることはできない. シュバイツァー試薬は,\ テトラアンミン銅(II})イオン{[Cu(NH₃)4]²+}を含む深青色の溶液である. 濃アンモニア水にCu(OH)₂を加えて作られる. {ニトロセルロース(硝酸セルロース){濃硫酸と濃硝酸の混合溶液(混酸)を作用させる. グルコース1単位あたりに3個ある{OH}基の全部または一部が硝酸とのエステルを作る. $[C6H7O₂(OH)3]}_n + 3n{HNO₃ ->} {[C6H7O₂(ONO₂)3]}_n} + 3nH₂O}$ \ セルロース         トリニトロセルロース $[C6H7O₂(OH)3]}_n + 2n{HNO₃ ->} {[C6H7O₂(OH)(ONO₂)2]}_n} + 2nH₂O}$ \ セルロース          ジニトロセルロース $ トリニトロセルロース 強綿薬(無煙火薬の原料) ジニトロセルロース 弱綿薬(セルロイドの原料) 硝酸エステルは,\ 硝酸{HNO₃}を{HO-NO₂}と考えて作る. R-O}{H + {HO{- NO₂ -> R-ONO₂} + H₂O} ニトロセルロースはニトロ化合物({R-NO₂})ではなく,\ 硝酸エステル({R-ONO₂})であることに注意. アセチルセルロース(酢酸セルロース) セルロースに無水酢酸を作用させる. グルコース1単位あたりにに3個ある{OH}基の全部が酢酸とのエステルを作る. このトリアセチルセルロースを部分的に加水分解すると,\ ジアセチルセルロースとなる. $[C6H7O₂(OH)3]}_n +3n{(CH₃CO)₂O} {->} {[C6H7O₂(OCOCH₃)3]}_n} + 3nCH₃COOH}$ セルロース            トリアセチルセルロース $[C6H7O₂(OCOCH₃)₃]}_n + nH₂O {->} {[C6H7O₂(OH)(OCOCH₃)2]}_n} + nCH₃COOH}$ トリアセチルセルロース        ジアセチルセルロース 完全にアセチル化されたトリアセチルセルロースは溶媒に溶けにくい. ジアセチルセルロースとしてアセトンに溶かし,\ この溶液を細孔から空気中に押し出す. アセトンを蒸発させると,\ 繊維状のジアセチルセルロース(アセテート繊維)が得られる. 天然繊維(セルロース)の一部を化学変化させた繊維なので,\ 半合成繊維に分類される. $[l} 無水酢酸は,\ 酢酸2分子が脱水縮合したものである. {CH₃-CO}{OH + {H{OOC-CH₃ -> CH₃-CO-O-CO-CH₃}(無水酢酸) + H₂O {OH}基は無水酢酸でアセチル化(酢酸エステル化)されてアセチル基に変化し,\ 酢酸が生じる. R-O}{H + {CH₃-CO-O{- CO-CH₃ -> R-O-CO-CH₃} + CH₃COOH} 再生繊維 セルロースを溶媒に一度溶かした後,\ 繊維状にして再生したもの. セルロースの再生繊維は美しい光沢をもつので,\レーヨンと呼ばれる. 銅アンモニアレーヨンやビスコースレーヨンなどがある. 銅アンモニアレーヨン(キュプラ) セルロースを}{シュバイツァー試薬に溶かした後,\ 繊維状に再生した繊維. ビスコースレーヨン}セルロースを\tce{NaOH}水溶液と{CS2}で処理してビスコースにした後,\ 繊維状に再生した繊維.} 膜状に再生したものがセロハンである. {繊維の分類天然繊維} &a}{植物繊維 & 綿,\ 麻 (主成分:セルロース) \{動物繊維 &絹,\ 羊毛(主成分:タンパク質)化学繊維} & {再生繊維銅アンモニアレーヨン,\ ビスコースレーヨン半合成繊維アセテートn}{合成繊維d}{ナイロン,\ ポリエステル,\ アクリル繊維 レーヨンは光線(ray})と綿(cotton})からなる造語である. 先にも述べたが,\ シュバイツァー試薬は,\ テトラアンミン銅(II})イオンを含む溶液である. キュプラは銅を意味するフランス語である. ビスコースはviscous}(ヴィスカス;粘性のある)と糖を表す語尾-ose}からなる造語である. }原子量を${C}=12.0,\ {H}=1.00,\ {O}=16.0,\ {N}=14.0$とする. 486gのセルロースを完全にアセチル化するのに必要な無水酢酸は何gか. また,\ トリアセチルセルロースは何g得られるか. 100gのセルロースから150gのニトロセルロースが得られた.\ セルロースに存在 する{OH}基の何\%がエステル化されたか.完全に硝酸エステル化したときに生じるトリニトロセルロースの質量は エステル化された割合は [{C6H7O₂(OH)3}]_n=162n,{(CH₃CO)2O}=102,[{C6H7O₂(OCOCH₃)3}]_n=288n 化学反応式より,\ セルロース1mol}と無水酢酸3nmol}でトリニトロセルロース1mol}が よって,\ 必要な無水酢酸の物質量は,\ ({486}{162n}3n)mol}\ である. ゆえに,\ ({486}{162n}3n)mol}102g/mol}\ によって無水酢酸の質量が求められる. 生成するトリアセチルセルロースの物質量は,\ セルロースと同じく\ {486}{162n}mol}\ である. トリアセチルセルロースの分子量\ 288ng/mol}\ をかけると質量が求まる. [{C6H7O₂(ONO₂)3}]_n=297n 化学反応式より,\ セルロース1mol}からトリニトロセルロース1mol}ができる. トリニトロセルロースの物質量は,\ セルロースと同じく\ {100}{162n}mol}\ である. トリニトロセルロースの分子量297ng/mol}\ をかけると質量が求まる. 後は,\ {完全にエステル化したときの質量の増加量に対する実際の増加量50 gの割合を考える.}